「そして父になる」、「海よりもまだ深く」、「万引き家族」、「三度目の殺人」、「海街diary」、「真実」などでお馴染みの是枝裕和監督によるダッチワイフを題材にしていた物語。孤独な男と彼が恋心を寄せる人形とのオモシロ恋愛劇です。69点(100点満点)
空気人形のあらすじ
古びたアパートに住む中年男の秀雄が所持していた空気人形が、ある朝以来心を持つようになってしまった。やがて空気人形は街へ繰り出し、純一が働くレンタルビデオ屋でアルバイトをするようになる。
(wikipediaより)
空気人形の感想
「ラースとその恋人」とかぶりそうな気配十分ですが、「ラースとその恋人」はダッチワイフに恋をしている男の視点で話が進むのに対し、こっちはダッチワイフの視点で話が進みます。その違いこそがこの映画を見られるまともな映画にした要因ですね。
これで板尾創路扮する秀雄が主人公だったらかなり痛い映画になっていたと思いますね。人形に独りで話しかける男を見て笑えるのは最初の3分だけです。それを2時間続けたらどうなるか考えるだけでも頭が痛くなります。
孤独な男が人形に話かける、恋をするなどという映画はたくさんあるけど、ダッチワイフや人形に話しかけてるようではまだまだ孤独レベルが低いです。
本当に孤独の人は人形なんて買わなくても、想像力だけでそこにいる誰かと会話ができるようになります。恋愛も性行為も全部頭の中で処理できます。
道を歩いていると浮浪者の人で想像上の誰かと話している人をよく見かけるのですが、どうせ映画にするならああいうレベルの孤独を描いて欲しいです。
さてこの映画ですが、韓国人のペ・ドゥナを起用して大正解だったんじゃないでしょうか。空気人形だけに言葉がカタコトでも自然だし、裸のシーンも厭わない堂々とした演技も立派でした。
その一方でダッチワイフ職人をオダギリジョーにしたのはかなり失敗でしたね。ダッチワイフを作ってる男は、禿げのいかにも変体そうなオヤジにしてくれないと気分が出ません。
終盤、空気人形と純一によるベッドシーンがあります。そこに行くまでに、空気人形は純一に「あなたの望むことならなんでもするから」と言い、純一は「じゃあ、空気を抜かせてくれないか」と懇願します。
これらのシーンには一体どういう意味があるのか。これはまさに経験の浅い少女に過激なことを強いる年上のおっさんの構図です。空気人形の空気を抜くというのは苦痛を与えるということです。
すなわちSMごっこをやろうじゃないかと言っているのです。ただ、純一が馬鹿なのは相手が空気人形だったということです。
SM“ごっこ”をやっていれば当然「次は私の番」ということになる。しかし空気人形はどこまでが限度か分からないのです。だから最後はお腹に穴まで開けちゃう。
あそこでなにも殺すことはないだろうと思った人も多かったんじゃないでしょうか。でもそれは甘い考えです。知識のない人とSMごっこなんて絶対にしちゃダメなんです。
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