カンヌ国際映画祭グランプリを受賞したイタリアの家族ドラマ。イタリアの田舎風景、フイルムで撮影したかのような情緒溢れる映像、自然すぎる出演者たちの演技がとても良く、家族のあり方を上手に表現した大人向けの芸術映画です。77点(100点満点)
夏をゆく人々のあらすじ
イタリア・トスカーナ地方の人里離れた地に暮らす一家。気難しい父ヴォルフガング(サム・ルーウィック)を中心に養蜂を営み、頼りになる長女のジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)が技術を継承していた。
村ではテレビ番組の撮影が行われることになり、ジェルソミーナはひそかに気になっていた。そんなある日、ドイツ人の少年が「少年更生プラン」の一環で一家に預けられることになり……。
シネマトゥディより
夏をゆく人々の感想
アリーチェ・ロルヴァケル監督による、イタリアの田舎町に住む家族の物語。
イタリア語は耳にうるさいので、出演者たちがお喋りだとイライラすることが多いのですが、この映画はスローで、静かで、ストレスなくすっと物語に入っていくことができました。
頑固でぶっきら棒なオヤジと彼を支える妻と4人の娘たち。そこに同居するおばちゃんを含めると、6人の女に対して1人の男という女家族の物語で、そんな環境でどうやって大黒柱のお父さんが気まぐれで感情的なイタリア女たちを統率していくのかが興味をそそりました。
お父さんは古い気質の男で、伝統的な手法で蜂蜜を生産して売ることを生きがいとしています。むしろそれ以外の生きる術を知らず、娘たちにも同じような考えを強要し、外の世界の物事は全て愚かだと決め付けるような閉鎖的な考えの持ち主です。
家族の女たちはそんな彼に嫌悪感を抱き、反抗しますが、不平不満を言いながらも仕方なく彼のやり方についていきます。ある日、そんな家族の下に、素行不良で更生プログラムを受けさせられている怪しいドイツ人の少年がやってきます。
同じ頃、村ではテレビ番組の撮影が始まり、長女が番組に出演することを考えます。また、農業生産の規定の厳格化が始まり、近代的な設備を持たない家族の下に役所の手入れが入り、家族は危機に立たされる、というのがあらすじです。
貧しいけど、素朴で、屈託のない子供たち、そして苦しみながらも彼女たちを育てていく両親。それは日本のTV番組「ビッグダディ」を見ている感覚に近いかもしれません。
子供たちの演技が自然すぎて、本当の家族のようにも見えるし、単調な生活風景を映しているのに、見ていて全然退屈しないという恐ろしい演出力がありました。問題は山積みだけど、 やっぱり家族っていいなと思わせるところは「いとしきエブリデイ」に匹敵しますね。
ひとつ気になったのが家族が野外にマットレスを敷いて寝ているシーンです。お父さんが一人で外でマットレスの上でパンツ一丁で寝ているシーンもありました。ラストシーンはおそらく家族の絆を表現した比喩的なシーンだったんでしょうが、ほかのシーンはどうなんでしょうか。実際あんなことをする人がいたら、ワイルドすぎて笑えますね。
でもこういうところがこの家族の魅力であり、この映画の魅力なのかもしれません。
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