1969年と現代の二つのストーリーを平行して見せていく人間ドラマで、映像も綺麗で、雰囲気も良さ気なストーリーなのに見所は最後の一部分だけに限られるもったいない作品です。38点(100点満点)
カフェ・ド・フロールのあらすじ
1969年のパリ、美容師をしながらダウン症の息子ローラン(マラン・ゲリエ)を育てるシングルマザーのジャクリーヌ(ヴァネッサ・パラディ)にとって、息子がただ一つの心のよりどころだった。
一方、現代のモントリオールでDJをしているアントワーヌ(ケヴィン・パラン)は、2人の娘と恋人ローズ(エヴリーヌ・ブロシュ)、両親に囲まれ何不自由なく暮らしていたが、彼の別れた妻キャロル(エレーヌ・フロラン)は離婚による心の傷が癒えていなかった。
シネマトゥディより
カフェ・ド・フロールの感想
「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」、「わたしに会うまでの1600キロ」、「ダラス・バイヤーズクラブ」、「ビッグ・リトル・ライズ」、「C.R.A.Z.Y.」でお馴染みのジャン=マルク・ヴァレ監督による、パリとモントリオールを舞台にしたカナダ産家族恋愛ドラマ。
ダウン症の息子を溺愛する母、離婚した妻とその娘たちとの思い出に浸るDJ。ストーリーはずっとこの二人の美しい記憶と闇を追っていきます。
まず一番の問題は1969年のパリ、現代のモントリオールと二つの時間軸を使いながらも、その両方で過去を回想している、という点です。
過去の過去を回想し、現在でもやっぱり過去を振り返っているから、過去尽くしになってしまって「一体今は西暦何年なんだよ」となるのです。2100年を描いたSF映画の中で、延々と2400年の話をしているみたいな感じですかね。
二つのストーリーはぶつ切りで容赦なくお互いのストーリーに割り込んでくるために、その構成が巧妙か邪魔なだけかは見ている人の印象にもよるでしょう。
僕にとっては「お前ここで入ってくるなよ」と言いたくなるシーンが結構あってうっとうしかったですね。そもそも二つの物語にする必要があったのかどうかも疑問です。
僕的には1969年の物語ひとつで十分お腹一杯になれる内容でした。ダウン症の息子が同じくダウン症の女の子と運命的な出会いをして、二人が愛を超えて病的につながっては離れられなくなり、両親たちが逆に心配して、二人を引き離そうとする、それだけの筋書きでもリアリティーもあり、また障害児を育てる親たちの苦悩も見えて面白かったです。
しかしそこにどういうわけか薄っぺらな現代の話が割り込んできて、元妻、娘、新しい恋人、家族といった薄っぺら人間たちの間で葛藤に苦しむDJの男の話をされても、次元が違いすぎます。
結局二つのストーリーがどうつながっていくのかというのが物語の焦点で、そのつなぎ方も無理矢理で誰も納得しないでしょう。
要するに輪廻転生でつながっている、というオチなのですが、もともと文化的にそんな観念を持っていない欧米人が「輪廻」とか口走ると、たちまちインテリぶった胡散臭さが出るのが不思議ですね。肉屋の息子なのにベジタリアンを気取ってる男ぐらい胡散臭いです。
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