いい歳したおっさんと女がプラトニックな恋愛をしようとする気持ち悪いラブストーリー。44点(100点満点)
はじまりのうたのあらすじ
ミュージシャンの恋人デイヴ(アダム・レヴィーン)と共作した曲が映画の主題歌に採用されたのを機に、彼とニューヨークで暮らすことにしたグレタ(キーラ・ナイトレイ)。瞬く間にデイヴはスターとなり、二人の関係の歯車に狂いが生じ始め、さらにデイヴの浮気が発覚。
部屋を飛び出したグレタは旧友の売れないミュージシャンの家に居候し、彼の勧めでこぢんまりとしたバーで歌うことに。歌い終わると、音楽プロデューサーを名乗るダン(マーク・ラファロ)にアルバムを作ろうと持ち掛けられるが……。
シネマトゥディより
はじまりのうたの感想
「シング・ストリート 未来へのうた」、「ONCE ダブリンの街角で」のジョン・カーニー監督による恋愛音楽ドラマ。ニューヨークを舞台にアルバム製作を通じてプロデューサーの中年男と歌手の女の子が心を通わせ、生きる活力を見出していくミュージカル風サクセスストーリーです。
「ONCE ダブリンの街角で」と同様上手い具合に音楽をストーリーの中に組み込んでくる手法は健在でした。
ただ、マーク・ラファロやキーラ・ナイトレイといった有名俳優たちを使ったばかりにアンダーグラウンド感に欠け、無名の新人ミュージシャンが成長していく過程がどうもしっくりこなかったです。
有名人が無名の人を演じるということが難しいのか、あるいはキーラ・ナイトレイの演技が相変わらず微妙なのかのどちらかです。おそらく後者でしょうが。
これは全員無名の俳優で勝負するべきでしたね。音楽的にも僕は「ONCE ダブリンの街角で」の音楽のほうが自然で好きですね。
なんか今回のは特にキーラ・ナイトレイ扮するグレタの曲がいかにもこの映画のために作りました的な妥当な音楽で心に訴えるものがありませんでした。「お前、自分で作曲してないだろ」というのが聞いたら分かるからです。
普通に見られて、普通に楽しめる部分もちらほらありますが、それ以上に寒々しいシーンが目立ちます。男女が自分の好きな曲をお互いにイヤホンで聴かせながら、ノリノリでニューヨークの街を散歩していくあのシーンは恥ずかしかったです。
二人はやがて踊りたくなったとかいって途中イヤホンをしたままクラブに入って行き、自分たちのスマホから流れる曲を聴きながら踊るという暴挙に出ていました。
あれはいわばイタリアンレストランに入って、自分たちが持参した梅干を食べるみたいな行為で絶対にやってはいけません。あんなことを平気でするのは沖縄のおばちゃんだけかと思ってましたが違ったんですね。
「ONCE ダブリンの街角で」と見比べると分かりますが、舞台やバッググランドこそ違えど、ストーリーの流れは両方の映画ともほとんど一緒です。
男女の恋愛をじらしていく演出なんかも同じでした。どういうわけかこの監督は音楽を通じて惹かれあった男女がキスもしなければ、手も出さないのが「美学」だと思っているふしがあって、それが別々の作品の中で連続すると信念のようなものが見えてきて気持ち悪いです。
高校生の女の子がそんなこと言ってるならまだしも、ヒゲもじゃのおっさんが何を言うかと。
まるで日テレのように意味のない「清廉性」を求めているような、逆に腹黒さがあって抵抗を覚えました。ベッドシーンがあったほうがよっぽど健全な映画になっていたのは間違いありません。
こういうふうに書くと、必ず「そもそもこれは恋愛映画じゃないですから」とか言う人がいます。いいですか。恋愛だろうとなかろうと、あの瞬間に二人が惹かれあったというのは事実なんだからやればいいんだよ、やれば。この添い寝マニアめが。
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