「君と歩く世界」のジャック・オーディアール監督によるカンヌ映画祭グランプリ受賞作。一人の少年が知恵を使って厳しい刑務所生活を凌いでいくサバイバル映画です。88点(100点満点)
預言者/アンプロフェットのあらすじ
六年の刑に処された19歳のアラブ青年マリクは、年も若く、読み書きもできず、刑務所ではまったく無力の存在だった。 たちまち所内を取り仕切るコルシカ人グループのいいなりになってしまうが、与えられた「仕事」をこなすうちに、刑務所での生き方を覚え、 仲間たちの信頼を勝ち取ることに成功する。そして今度は持てる限りの知恵を使い、自分のためのネットワークを張り巡らせてゆく。
(オフィシャルサイトより)
預言者/アンプロフェットの感想
臨場感たっぷりなうえ、アクション、ユーモア、シューリアズムとあらゆるエッセンスが含まれた大作。
娯楽映画とも芸術映画とも言える映画で、何度見てもその出来に唸ってしまう作品です。
なんといっても主人公が華奢であどけなさの残る若者という設定がドンぴしゃではまっていました。
ケンカが特別強いわけでもなく、金があるわけでもなく、背後に強いコネがあるわけでもない。そんな少年が組織の言いなりになりつつ、その場その場を上手く切り抜けていくところがなんとも痛快です。
そして若さ故の当たって砕けろ的な彼の行動に魅了されっぱなしで、先が全く読めないものいいです。ところどころで幻想、もしくは幻覚シーンのようなものが挿入されますが、あれも余裕のある監督の“遊び”の部分ではないかと解釈しました。
僕がサバイバル映画が好きなのは、主人公の持つ悪運に惹かれてのことです。そして無茶をしながらもなんとか状況を切り抜けて生き延びる人間と、そうでない人間とには一体どんな違いがあるのかということをよく考えたりもします。
飛行機事故で一人だけ生き延びたというような人と亡くなった人たちの間にあるのは果たして運の差だけなのかなんてことを日々考えたりします。
この映画の主人公も相当な修羅場をくぐっているのに死なない。それどころか大怪我を負ってもいいような場面でもかすり傷で済むなどといった神がかった力を感じさせます。
かといってよくあるハリウッド映画のように無敵のヒーローという存在でもない。普通の人間なのにとにかく悪運が強い。こういう人間の構造をもっと知りたい、できれば自分もたくましくしぶとく生き延びたい、と切実に思うのです。
しかし考えようによっては彼らのようなサバイバーは運が良いのではなく、むしろその逆でなかなか死なせてもらえないという可哀想な運命にあるのかもなぁ、と思えなくもないです。
まだまだお勤めが済んでいないんだからもっともっと危ない目に遭いなさい、この馬鹿たれが、といった啓示なのかもしれません。
それに関連して「悪党はなかなか死なない」といったことを言う人もいます。腹黒い奴はこの生き地獄で長々と苦しむ運命にあるということになるのでしょうか。まあ、早かれ遅かれみんな死ぬんですが。
さて、こんなすばらしい作品にあえて文句を放つとすれば、それは途中途中で流れる挿入歌でしょう。
この映画はフランス映画で、カンヌ映画祭でグランプリまで獲っている作品です。内容もフランスの人種問題に絡んでいます。なのに音楽でアメリカのヒップホップを使ったりしているのがちょっと残念でした。
この映画に限ったことじゃないんですが、その国らしさを出すにはやはりその国の曲で勝負しろよと思いますね。厳密に言うと、もし日本映画ならたとえクラシック音楽だとしてもモーツアルトやベートーベンなんて使うのはもってのほかで瀧廉太郎じゃないとダメです。
コメント
フランス映画のオススメから、この預言者をさっき観終わりました。
なんて素晴らしい! サイコーですね。
それにしても、こんな映画、信ずる人の推薦でないとまず観ませんよ。
タイトルも地味ですしネ。
これがフランス映画? すごい。
挿入歌について触れらてますが、確かにこれはかなりアメリカを意識している選曲って気がします。
特に、エンディングのマックザナイフはアメリカ人だったら鳥肌じゃないでしょうか!?
とにかく、ちょいワルで粋でお茶目なアメリカ人はマックザナイフが好きですから。
KARAOKEの定番。
僕はこのラストシーンでやられました。
まさに、マックザナイフなんですよ!
ある日、いつもの街角に、あのマックが帰ってきたぜ・・!という噂が広まる
「え!マックが?」
「やつが帰ってきたのか?」って歌なんですが、もうドンピシャでしたね。
いやぁ・・やられました。
寝る前に見たのに、眠れなくなりましたので、思わず一筆したためておきます。
これは格好いいですよね。
良い映画を教えてくれてありがとうございます!
映画男さんとは感性が似ている気がするので、これからもどんどん映画選びの参考にさせていただきます!
気に入ってもらえてうれしいです。この映画、格好いいですよね。これからもいい映画を紹介できたら幸いです。