「理解できないけど、なんか怖くて面白い」のギリギリの線を行っている上手い作品で、謎を明らかにしたくてついつい何度も見てしまう映画。69点(100点満点)
マルホランド・ドライブのあらすじ
ある真夜中、マルホランド・ドライブで車の衝突事故が発生。ただ独り助かった黒髪の女は、ハリウッドの街までなんとか辿り着き、留守宅へ忍び込む。すると、そこは有名女優ルースの家だった。
そして、直後にやってきたルースの姪ベティに見つかってしまう。ベティは、とっさにリタと名乗ったこの女を叔母の友人と思い込むが、すぐに見知らぬ他人であることを知った。何も思い出せないと打ち明けるリタ。手掛かりは大金と謎の青い鍵が入った彼女のバッグ。ベティは同情と好奇心から、リタの記憶を取り戻す手助けを買って出るのだが…。
シネマトゥディより
読者のインコさんのリクエストです。ありがとうございます。
マルホランド・ドライブの感想
「ストレイト・ストーリー」、「ツイン・ピークス The Return」、「インランド・エンパイア」などでお馴染みのデヴィッド・リンチ監督によるマニア向け、難解サスペンススリラー。
理解できないけど、面白い。このギリギリのラインを超えてしまうと、ただの意味不明な退屈な映画になってしまいますが、この映画はセーフです。
デヴィッド・リンチの「インランド・エンパイア」がその逆で、あそこまで行くと見ているこっちはストーリーなんてどうでもよくなってしまいます。
でもこの映画の場合は作り手のこだわりと視聴者の好奇心がちょうどいい感じで合致したようなところがあって、それがマニアや評論家だけでなく、一般の視聴者にも支持される理由じゃないでしょうか。
この映画を最初に見たときの衝撃といったらなかったです。パズルのようなバラバラなシーンの連続がやがて一つにつながっていく。かといって理解できたようでいまいち分からない、といったあの感覚が病みつきなります。
僕は映画は感覚的に見るものだと思っているので、あまり深読みしたりするのが好きじゃないんですが、この映画は想像力を駆り立てる要素が満載なために、ついつい刑事のような、探偵のような目で鑑賞してしまいました。
初めて鑑賞したときはDVDで見たのですが、それにはボーナストラックとしてデヴィッド・リンチのインタビューまで付いていました。
インタビューでリンチは、「答えはすべて映画の中にあるから説明する必要はない」といったことを話していました。まったくもってごもっともな答えですね。
あれでリンチがワンシーン、ワンシーンを黒板を使って説明していたらそれはそれで笑えるんですけどね。さすがにそういうのはありませんでした。
ストーリーに関しては人それぞれの解釈があると思います。中でも主人公ベティことダイアンの「夢、現実、回想」などが並行して進んでいくパラレルワールド説を訴えている人が多いようです。
鍵となるのは登場人物や意味深なセリフが多いのにどれだけ釣られるかどうかでしょう。もう面倒くさいなあ、となる人は抵抗を覚えるはずで、それもまた理解できます。
僕の場合、この映画が見事だなあと思うのはところどころで美人女優たちをしっかり脱がせている点です。
特に当時まだ無名だったナオミ・ワッツにレズをさせたりといった容赦ない起用法に度肝を抜かれました。あれがなければ途中で見るのを止めてたかもしれません。
また、この映画の各国のプレミア試写会では仲良く手をつなぎならデヴィッド・リンチがナオミ・ワッツと登場したりして、「ああ監督、さてはナオミとやったなあ」と思わせるような怪しい仲になっているのがまた色っぽかったです。
劇中では美しい夢を抱いた田舎娘ダイアンが、まったく正反対の現実にぶつかり悲劇に終わっていく話に仕上がっているのに対し、リアルではそのダイアンを演じたナオミ・ワッツがこの映画の後に次々とヒット作に出演し、一気にスターダムにのぼっていったところを見ると、その全てがデヴィッド・リンチの作品のように思えたりもしました。
コメント
映画男様、リクエストにお応えいただきましてありがとうございます!
デビット・リンチの作品は大して観てませんがこの映画はかなり好きです。
感覚だけで観てても異世界に連れて行ってくれるこういう手のものが大好きです。
(「メメント」なんかも大好きです♪)
ほかに何かおススメがあれば教えてくださいませ。
本当にこの映画でナオミ・ワッツはブレイクしましたよね。
ローラ・ハリングも知らなかった女優さんでしたがすごくきれいでしたね。
映画男様はナオミ・ワッツとローラ・ハリングならどちらがタイプですか??(笑)
インコさん
リクエストとコメントありがとうございます。デビット・リンチの作品は「ブルーベルベット」や「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」なんかが見やすいと思います。ナオミとローラではどちらかといえばナオミですかね。ローラは見るからにエロ過ぎて困ります。
デヴィッド・リンチの自伝的な著書に『大きな魚をつかまえよう』という本があったんですが、その著書の中で、今作の中でも特に印象的な謎の一つのあの青い箱について、本人が
「これがいったいなんなのか私には全くわからない」というようなことを述べていて吹き出してしまった覚えがあります。
視聴者に全てを委ねてもたれかかってくるような自由さが好きですね。
あいつ、そんなこと言ってたんですか、笑えますね。監督が分からないんじゃあ、視聴者はもっと分からないじゃないですか。でもそれをなんか解釈できそうに撮ったのはすごいけど。