「七夜待」、「光」、「あん」、「vision」などで知られる日本を代表する寒い女監督、奈良のソフィア・コッポラこと、河瀨直美が世に送り出す残念な映画。
奄美大島の美しい景色、伝統音楽、素朴な人々の素朴な話を素材に傑作になる可能性を持ちながらも、ちゃんと最後に寒いシーンを持ってきて台無しにしてくれているお約束の一本。47点(100点満点)
2つ目の窓のあらすじ
奄美大島で生活している16歳の界人(村上虹郎)と同級生の杏子(吉永淳)。ある日、島の人々の相談を受けるユタ神様として生きてきた杏子の母イサ(松田美由紀)が、難病で余命わずかなことがわかる。
杏子を励ましながらも、神と呼ばれる者の命にも限りがあることに動揺する界人。そんな中、恋人のいる母・岬(渡辺真起子)が醸し出す女の性に嫌悪感を抱いた彼は、衝動的に幼少期に別れた父のいる東京へと向かう。久々に父子一緒の時間を過ごして島に戻った界人だが、岬の行方がわからなくなったという知らせが飛び込んでくる。
シネマトゥディより
2つ目の窓の感想
河瀨直美がカンヌ映画祭にこの映画を出品するときに「今までの最高傑作」と自画自賛したことで知られている作品です。自分の作品に対して、作り手が「最高傑作」なんてことを口走ってしまえるのは、日本人女性の中では河瀨直美か浜崎あゆみかのどっちかしかいないでしょう。
大抵、こんなことを言うアーティストは自分に酔っているというよりも、「最高傑作」という言葉自体に酔っているような雰囲気があって嫌です。
でも最高傑作というんだったら、見てみようじゃないのと思って見る人も少なくないはずです。
物語の幕が開け、高校生の男女が初々しい恋愛ドラマを披露し、奄美大島の映像も綺麗で、登場人物の演技も案外自然だったので、これはもしかすると本当に傑作かもしれない、と期待に胸を膨らませてしまった自分がいました。
しかし寒い女というのは必ずどこかでボロをやらかします。遅かれ早かれ寒い行動に出るわけです。
河瀨直美が2時間の物語の中で大人しく、寒くないまま終わることなんでできないわけです。それができていたら、そもそも奈良のソフィア・コッポラなんて呼ばれないでしょう。あ、誰も呼んでないか。
まず、ヒロイン杏子を演じた吉永淳はよかったと思います。恋人役の界人を演じたUAの息子、村上虹郎も悪くないです。ただ、なんでお父さんの村上淳まで一緒に出演させるのかが分かりませんでした。お父さんのシーンはバッサリカットすれば完成度が数倍上がったでしょう。
なんで奄美大島を舞台に、いい感じに進んできた物語が急に東京に舞台を移す必要があるんでしょか。
河瀨直美の作品には必ず河瀨直美自身が登場人物に出てきますが、この映画の場合、村上淳扮する篤に河瀨直美は自分を投影していました。息子の界人は父親になぜお母さんと離婚したのか聞きます。それに対する父篤の答えがこれ。
「きれいごと言う訳じゃないけど、一緒にいないほうが一緒にいる感じがするんだよ」
まだまだあります。父の篤は息子になぜ東京に住み続けるかを語るんですが、そのセリフがこれ。
「東京にしかないパワーってのがあってさ、東京にしかない温もりがあるんだ。そんな世界中旅をしたわけじゃないんだけども、この東京に物質的な意味じゃなくて、なにか豊かさを俺はまだ感じる。忙しいし、疲れるし、時間の流れは速いし、だけど自分の表現したいことを増幅させてくれる街でもあるんだ」
これこそが河瀨直美語録なのです。おそらく普段から河瀨直美はお酒を飲んだりしたらこんなことを隣の男性に口走ったりするのでしょう。そして頭を肩に乗っけてくるに違いないです。
物語も終盤に入ると、今までほのぼの進んできたストーリーが急激にドラマチックになります。16歳のヒロイン杏子が界人に向って「ねえ、しよう」と東京ラブストーリーの名セリフを引用し、界人は界人でお母さんと怒鳴り合いの喧嘩をおっぱじめます。するとお母さんが家を出て行ってしまい、行方不明になる。心配になって、泣き叫びながら、やっとお母さんを見つけ出した16歳の少年がそこで一言。
「お母さんは俺が守るんだぁ」。
ドラゴンボールでしか聞けないセリフですよ。実写映画でこんなセリフを誰が言えますか。突っ込みどころが多すぎて僕としては大好物な映画ですね。
ラストは16歳の杏子と界人のベッドシーンで締めくくります。ベッドシーン自体はちゃんとキスもやっていてリアルでかつ美しさもあってよかったです。ただ、界人を演じた村上虹郎は実際は2014年現在17歳らしいんですが、あれは世間的にOKなんでしょうか。
散々年齢がアウトだなんだって騒ぐ人たちは少女が脱いだら大騒ぎするくせに、少年がベッドシーンをやろうと、お尻を出して、全裸で海で泳いでいてもスルーするのかな。
海外向けのポスターがそもそも少年少女が全裸で泳いでいるもので、河瀨直美は訴えられたりするのを承知で勝負に出たんでしょうか。そうだとしたら度胸ありますね。その度胸にだけは暖かい拍手を贈りたいと思います。
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