「/HK/変態仮面」シリーズの福田雄一監督によるハートフル家族ドラマ。68点(100点満点)
俺はまだ本気出してないだけのあらすじ
子持ちで離婚歴がある42歳、大黒シズオ(堤真一)。ある日、彼は「本当の自分を探す」と何も考えずに会社を辞めてしまう。だが、ゲームばかりの毎日を送り、同居する父親の志郎(石橋蓮司)から怒鳴られてばかり。
そんな中、本屋で立ち読みをしていたシズオは漫画家になろうと決意し、志郎と娘の鈴子(橋本愛)に熱く夢を語る。しかし、出版社に原稿も持ち込むも不採用。さらに、生計を立てようとファストフード店でバイトするが、ミスを繰り返し、さらにはバイト仲間から店長というあだ名を付けられてしまう。
シネマトゥディより
俺はまだ本気出してないだけの感想
優しい人たちに囲まれたマイペースなおっさんの物語。ちょっと笑えて、ほろっとする場面もある心温まるコメディー映画。真面目一徹に人生を生きている人にぜひ見てもらいたい一本。
42歳になって突然漫画家になる、と言い出し、ファーストフードでバイトをしながらやりたいことをやる男の物語が映画や漫画になりうるのは、そもそも日本社会にそういう呑気で自由な生き方をしている心に余裕のある人間が少ないからです。
そしてこの映画を面白く見れる人はおそらく主人公のシズオにある種のうらやましさを感じるんじゃないでしょうか。反対に嫌いだという人は「子供もいるのに、なにやってんだよこのおっさんは」とイレギュラーな人生を嫌う人でしょう。
自分のやりたいことをやって生きる。当たり前のことのようですが、若い時ならともかく、ある年齢を過ぎると、社会の波に飲まれて、いつ間にかそれができなくなることがほとんどです。
そんな中で 世間の目も気にせずに、大きなリスクを背負いながらも、なんのあてもない、自分のやりたいことだけをひたすら地道にやり続ける人は格好いいです。
シズオがすごいのはどれだけ周囲に馬鹿にされようとも、それを自虐的な笑いに変えるだけの器の大きさを持ち合わせているところで、自分が自由に生きている分、他人に対しても寛大でほとんど怒らないし、偉そうなことも言わないところです。ただどん臭いので一緒に仕事はしたくないタイプですけど。
シズオの娘、鈴子を始め、彼を応援する友人や編集者のキャラも優しいですね。特に娘は父に食事を作ってあげたり、お金を貸してあげたり、と普通ならグレてもいいのに常に父親に対する愛情で溢れています。
シズオが「おれがもし漫画家デビューしたら、お前どうする?」と聞いたのに対して、「分からない。分からないからデビューしてみてよ」という返しは絶妙でしたね。
残念なことに日本映画では自然なセリフの脚本はあまり見かけません。しかしこの二人のセリフは久々に聞いた日本的な名セリフでした。
シズオはコテコテの馬鹿キャラなのに対し、鈴子は無表情で、ボソボソ喋る、というコントラストも上手く、玲子だけじゃなく、ほかの登場人物たちも無表情でトーンが低いのはシズオの浮いた存在を際立てるためなのかもしれませんね。
ひとつ気になったのは、シズオの友人宮田修を演じた生瀬勝久がいつも不幸な役をやらされることです。あれは顔のせいなんでしょうか。
今回も妻に逃げられ、息子にも愛想を付かれた可哀想なバツイチ男の役でした。最後に宮田修は会社を辞めて、パン屋を開くといって独立します。そこに元妻が息子を連れて現れ、復縁する、という形で無理矢理ハッピーエンドにしていましたが、あの下りはいりませんね。妻の心変わりの理由も分からないし、やっぱり負のオーラー全開の生瀬勝久には不幸が似合います。
コメント
おっさんのほのぼの生活のために、娘がデリヘル であらゆる男のシモの世話をする。
相手選べないからね、あらゆる男のだからね。
それで稼いだ金で、お父さんはほのぼのできる。
これはないだろうねえ。
親父が病に伏している、とかなら、まだ話になるとは思うがねえ。
この場合、絶対にありえんね。
母親じゃあ、あるめえしねえ。
その娘の人生の崩壊を招くね。
もしこれがために、鈴子が身をひさぐとすれば、コイツもアタマがイッてんなってんで、これはこれでもう台無しで、観るに値せず。
しかも鈴子、女子高生だよなあ、これはもういよいよめちゃくちゃだろう。
初体験デリヘル …
指名なしでオヤジと遭遇しちまうくらいだから、そんなのは、もう地域では大変に有名です。間違いない。
なんでこんな話にしちゃったのこの監督。
ないことを話に持ち込んで、奇をてらうことでインパクトを求めたね。
ここでこの話はぶち壊しになった気がしてなりません。
あとはなかなか面白かったのに。
鈴子ならさあ、場末じゃなくて、あっという間にどっかに連れて行かれちゃうよ。
と思いました。