ポン・ジュノ監督が完全に商業映画に振り切ったSFもの。プロモーションにそれほど力を入れてるとは思えないけど、個性的だし、エンタメ度が高いし、全世界でそこそこヒットしそうです。55点
ミッキー17のあらすじ
2054年、失敗に終わったビジネスのために経済的に破綻していたミッキー・バーンズと友人のティモは、マフィアの高利貸しに借金を返済できなくなり、逃亡することを余儀なくされる。二人は地球を離れ、惑星ニフルハイムを植民地化するための宇宙船の乗組員として応募する。
ティモはシャトルのパイロットとして、ミッキーは宇宙船唯一の「エクスペンダブル(使い捨て)」として採用される。地球で禁止されている技術を用い、ミッキーのクローンを作成して記憶を復元することで、彼は使い捨ての存在として扱われ、致命的な任務が与えられ、死ぬたびに再生される。航海の途中、ミッキーと警備員ナーシャとの間にロマンスが芽生える。
4年後、宇宙船は雪に覆われたニフルハイムに到着する。宇宙船の科学者たちは、連続して使われる複数のミッキーを利用して、ニフルハイムの病原体に対するワクチンを開発する。17番目のミッキーであるミッキー17は、解析のためにニフルハイム固有のクマムシのような生命体クリーパーを捕獲する任務を負う。しかし、彼は氷の亀裂に落ち、ティモの手の届かない場所へと消えてしまう。ティモはその場を離れ、ミッキー17の死亡を報告する。すると、クリーパーたちが現れ、一斉にミッキー17を亀裂から押し出す。
ミッキー17は宇宙船に戻り、より攻撃的な性格の新たに生成されたミッキー18と出会う。探検隊のリーダーで政治家のケネス・マーシャルは、同時に生きるクローンをすべて殺すと誓っていたため、ミッキー18はミッキー17を殺そうと試みる。しかし、ミッキー17は抵抗し、ミッキーたちは密かに任務、食事、そして死を交代で行って生き延びているのではないかと示唆する。その後、ミッキー18はティモを殺そうとするが、途中で中断され、ナーシャとともに去ってしまう。ミッキー17はマーシャル、その妻イルファ、そして警備員カイと共に夕食に連れて行かれるが、実験用の肉を出され、実験的な鎮痛剤で治療された結果、激しい苦痛に襲われる。カイはマーシャルがミッキー17を処刑するのを阻止するために介入し、その後、カイはミッキー17に好意を抱くが、ミッキー17は逃亡する。
ナーシャは二人のミッキーの存在を知り、二人を受け入れる。一方、カイもミッキーたちを発見し報告しようとするが、ナーシャに阻まれる。ミッキー17が夕食での出来事をミッキー18に伝えると、激怒したミッキー18は、ニフルハイムの岩の一部を記念する公開式典でマーシャルを殺すことを決意する。しかし、式典の最中に岩から二匹のクリーパーが現れ、混乱が生じる。ミッキー17は現れてクリーパーのゾコを捕獲するが、クリーパーのルコがマーシャルに飛びかかり、カイや他の警備員によって殺される。ナーシャはミッキー18がマーシャルを殺害するのを阻止し、マーシャルはマルチプルズの存在に気付く。結果、ミッキー17、ミッキー18、そしてナーシャは逮捕される。船外には多数のクリーパーが現れ、ゾコを呼びかける声が響く。
拘留室内で、ミッキー17がクリーパーたちが自分を助けたと説明すると、ナーシャは彼らが知性を持つ存在であると確信する。ティモは高利貸しの要求を満たすためにミッキー17を殺そうとするが、ナーシャとミッキー18が力を合わせて彼を制圧する。ミッキーたちとナーシャは、クリーパーを全滅させようとするマーシャルの元に連行される。
マーシャルはミッキーの保存された記憶を破壊し、同時にナーシャはイルファによるゾコの処刑を阻止する。マーシャルの助手プレストンは、イルファが食用ソースを作るために必要とするクリーパーの尾を集める競争にミッキーたちを参加させ、勝者だけが生き残るという企画をマーシャルに提案する。ミッキーたちは従順さを保証するため、遠隔操作で起爆する爆弾ベストを装着させられることとなる。
ミッキーたちが外に出されると、彼らは平和的にクリーパーのリーダーを探し出す。その行動を見たマーシャルは、警備チームと共に自ら外に出て、クリーパーたちを自ら殺すつもりであった。翻訳装置を用いたミッキー17はクリーパーのリーダーと通信し、マーシャルの計画を伝える。すると、クリーパーのリーダーは、ゾコが生きて返され、ルコの死に対する償いとして1人の人間が殺されない限り、全人類を殺すと脅迫する。
ミッキー17はカメラを通じてナーシャに連絡し、ゾコの解放を求める。ナーシャはゾコの解放を確実にするために、イルファを人質に取る。やがてナーシャはイルファを解放するが、イルファはゾコを殺そうとする。しかし、ナーシャは再びゾコを救い出す。警備員たちはイルファを逮捕する。ナーシャはゾコをクリーパーのリーダーに返し、同時にミッキー18はマーシャルと激しく対決する。最終的に、ミッキー18は自らのベストに仕掛けられた爆弾を起爆させ、クリーパーのリーダーの要求を果たすため、自身とマーシャルを同時に殺害する。
その後、イルファは精神病院で自殺し、プレストンやその他のマーシャルの共犯者たちは投獄される。高利貸しの側近がティモを殺そうとするが、ティモは逆にその側近を殺すことに成功する。やがてナーシャは植民地の政治指導者に選出され、ニフルハイムでの画期的な着工式を執り行う。その式典の中で、ミッキー17は、象徴的に「エクスペンダブル」プログラムの終焉を宣言するため、クローン装置を爆発させる。
ミッキー17のキャスト
- ロバート・パティンソン
- ナオミ・アッキー
- スティーヴン・ユァン
- トニ・コレット
- マーク・ラファロ
- ホリデイ・グレインジャー
ミッキー17の評価と感想
同ブログ読者のシャインマスカットさんのリクエストです。ありがとうございます。
「ほえる犬は噛まない」、「殺人の追憶」、「グエムル」、「オクジャ」、「パラサイト半地下の家族」、「スノーピアサー」などで知られるポン・ジュノ監督による、SF小説を基にしたSFブラックコメディ。特に意味も芸術性もないけど、エンタメ映画としてはそこそこ楽しめる作品です。
物語は、借金で首が回らなくなり、命を狙われるようになった主人公が地球を捨て、宇宙で人生をやり直そうとしたものの、契約内容をよく読まずに応募したのは、何度死んでも再生されては永遠にこき使われる使い捨ての任務だったことに気づく、ところからスタートします。
最初からギャグっぽく話が進むのでシリアスな映画ではないことは明らかで、そのノリについていけるかどうかでこの映画の評価が変わってきそうです。特に悪役のマーク・ラファロのキャラが大げさでわざとらしく、いかにも不快感を与える話し方にしてあるのが笑えました。妻役のトニ・コレットもいいですね。彼女はホラーもできるし、コメディもできてすごいな。
主人公を演じたロバート・パティンソンもキャリア最高のパフォーマンスだなんて言われたりもしてるけど、どうなんでしょうか。ナレーションの声は印象的だったけど、演技は普通だったような気がします。
主人公の命が再生可能なだけに、あえて危険な仕事につかされ、そのたびにあっさり死んでいく様子がなぜか痛快で、死ぬ度にプリントするといって肉体を作り、そこに記憶をアップロードしていく過程をあまりにも軽く描いているところがポイントでしたね。人間すら3Dプリンターで再現できるっていう発想なんだけど、地球でやると倫理に反するからアウトでも、宇宙ならいいでしょみたいな設定になっていました。
物語のターニングポイントは、主人公が二人存在し始めるくだりでしょう。正直、あそこからテンポやストーリーが若干つまんなくなった印象を受けました。それまで主人公は必ず死んでから再生されていたのが、死んだと思われて一足先にクローンを作ってしまい、二人コピーができてしまった、そのせいで主人公の中にあった秩序が崩れると同時に、恋人との関係性も変わり、また、倫理観の欠けるボスですらコピーはご法度うだと言い出す始末で、安っぽいドタバタ劇へと化していきます。
主人公のミッキー、二人もいらなかったんじゃないかなあ? 労働搾取される側が支配する側に逆襲していくのもきっかけは、クリーパーというクリチャーだし、別に二人のミッキーの必要性を感じませんでしたね。なぜか今までのミッキーはみんな性格を引き継いでたのにミッキー18だけ性格が違うしね。あれは二人のキャラを区別するための苦肉の策だったのでしょう。
それにしても終盤、なんであんなに自己中だったミッキー18が自己犠牲を払ったんでしょうか。ミッキー17を殺しててでも自分は生き残るって言ってた奴が土壇場であんな英雄的な行動を取るのかという疑問が残りました。それに別に自滅しなくてもボスだけ殺したらよくないか? 完全に制圧してたんだし。ドラマチックにするために、あるいはやっぱり主人公が二人いたら話がまとまらないからああしたとしか思えませんでした。
本作も見ようと思えば、ポン・ジュノが得意とする「社会格差を描いた」と捉えることもできなくもないです。搾取され続ける労働者たちが支配者階級に抗い、革命を起こすみたいなプロットは彼のほかの作品とも通じるものがあるでしょう。
ただし、それほど社会風刺が効いてるとか、深い意味があるとは思えませんでした。あくまでも純粋なエンタメ映画だったし、それ以上でもそれ以下でもないです。強いて言えばクリーパーが可愛かった。クリーパーのはったりも笑えたし。
コメント
リクエストにお応えいただいてありがとうございます。そこそこ面白い内容なんですね。
本作、パラサイトとはかなり違うテイストの作品なんですね。SFであるのは予想できましたが。
カンヌなどでも話題になる可能性もありそうだと思いました。