なにをどうしたらこんな最高の題材をこんなふうに料理できるんだよっていうほど、ひどい出来の作品。元ネタの家族に謝罪するべきです。5点
メイ・ディセンバーゆれる真実のあらすじ
2015年、女優のエリザベス・ベリーは、独立系映画の役作りのためにジョージア州サバンナにやって来る。エリザベスはグレイシー・アサートン=ユーを演じる予定だった。
グレイシーは、13歳の少年ジョーと関係を持って服役した女性で、獄中出産し、出所後少年と結婚までしていた。二人の間には3人の子供がいて、彼らは幸せな家庭を築いていた。
エリザベスはグレイシーとジョーに彼らの関係についてインタビューする。2人が出会い働いていたペットショップを訪れたり、グレイシーの最初の夫であるトム、ジョーのクラスメイトだったジョージー、そして彼女の弁護人と話をした。彼らはそれぞれ、グレイシーを無邪気で受動的な人物として描く一方で、彼女の行動がいかに破滅的だったかについて説明した。
エリザベスはグレイシー家族と共に子供たちの卒業を祝った。レストランで、彼らはトムやジョージー、グレイシーの昔の家族と遭遇した。ジョージーは、グレイシーの人生についての詳細と引き換えに映画の音楽監督の仕事を依頼するようエリザベスに提案し、もし仕事をもらえなければ映画が公開された際にメディアに悪評を広めると脅迫した。もちろんエリザベスはそれを受け入れなかった。
エリザベスはジョーを宿泊先に招き、グレイシーがかつてジョー宛に書いた手紙を渡す。二人はそのまま男女の関係になってしまう。エリザベスはジョーにまだ新しい人生を始めるだけの時間があると伝えた。エリザベスがジョーの経験を「ストーリー」と呼ぶと、ジョーはそれが「彼の人生」だと言って逆上した。
ジョーは涙ながらにグレイシーとの関係ついて問いただし、二人が付き合い始めたとき自分が「若すぎたのか」と悩んだ。それでもグレイシーは彼が自分を誘惑したと主張し、恋愛の主導権を握っていたのはジョー本人だと言い聞かせた。
メイ・ディセンバーゆれる真実のキャスト
- ナタリー・ポートマン
- ジュリアン・ムーア
- チャールズ・メルトン
- コーリー・マイケル・スミス
- パイパー・カーダ
メイ・ディセンバーゆれる真実の感想と評価
「ダーク・ウォーターズ巨大企業が恐れた男」のトッド・ヘインズ監督によるメアリー・ケイ・ルトーノーとヴィリ・フアラアウの禁断の関係を基にしたゴミフィクション。脚本、演技、ストーリーテリングが最低レべルで、実話ベースの映画でこんなにとっ散らかった作品は初めて見ました。ちなみにこれ、アカデミー賞脚本賞にノミネートされています。なんでだよ。
メアリー・ケイ・ルトーノーとヴィリ・フアラアウの話自体はすごくショッキングで好きな話だったので、この映画にも結構期待していました。海外での評価もそこそこ高いし、前述のとおり、アカデミー賞脚本ノミネート作品だし、これは絶対面白いんじゃないかって思うじゃないですか。それが違うんですよ。失敗の最大の要因は元ネタを変ないじり方ことに尽きます。
元ネタを知らない人のために簡単に説明すると、4人の子持ちで既婚者だった小学校の教員のメアリーが6年生の生徒のヴィリと関係を持ち、逮捕され、服役中にヴィリの子供を出産し、仮釈放中に接近禁止命令が出ていたにも関わらず、再びヴィリと密会して関係を持ち、また服役。7年の刑期を終えて塀の外に出た後にヴィリと結婚し、幸せな家庭を築いていったという出来事です。そう、純愛なのか、偏愛なのか分からなくなるようなぶっ飛んだ話なのです。
この話が興味深いのは、法律とか社会的モラルとかを取っ払って厳しい制裁を受けながらも二人が獣ののように惹かれ合い、肉欲におぼれながら「愛」を貫いたことでしょう。いくら周囲が虐待だなんだって騒いでも何十年も連れ添ったらそれって愛じゃね? 同世代の恋人、パートナーとごくごく普通の恋愛してきた大半の奴らよりむしろ長く続いてるじゃんっていう妙な説得力が出てくるのが面白いですよね。二人の関係そのものが白熱した議論を生み出す効果があるんですよ。
そんな最高のネタなのに、本作はなぜかストレートにこのネタを扱うのではなく、このネタを映画化するために、とある女優が夫婦のところにやってきて取材をし、女優目線で二人の関係性を紐解いていくみたいな作りにしちゃってるんですよ。まじでなんで?
この話こそ時系列で、シンプルに起こったことをありのまま描けばいいだけなのに、なんでこんなことするのかなあ? 取材みたいな形をとってるせいで、夫婦の過去になにがあったのかを小出しにしていくせいで、全体像が全然つかめないんですよ。このケースについてよく知っている自分が見てもわかりずらかったので、知らない人が見たら何の話なのかよく分からないんじゃないかなあ。
それも過去の回想シーンとかも一切ないから、二人が恋人同士だったときにどんな関係性だったのかも頭に浮かんでこないし、過去の出来事がテーマになっているのにすべて現在にフォーカスしてるという有様でした。
また、女優役がよりによって自分大好きナタリー・ポートマンで、最初から最後までナタリー・ポートマン扮する女優がしゃしゃり出て、でしゃばるだけの映画になっていましたね。いつのまにか夫婦の話じゃなくあの女優の話になってるからね。ほんと意味不明。
基本的に女優の目線で、妻グレイシーは頭のおかしい女で、夫のジョーはその被害者という描き方をしていて、それももちろん一つの視点なんだけど、ジョーを被害者のように扱っている女優本人が途中で成り行きまかせにジョーとやっちゃってるからね。それも自分からキスしてたじゃん。お前のモラルはどうなんだよ? 体当たり取材にもほどがあるだろ。
一番笑ったのは、講演会の席で学生たちからベッドシーンはやったことありますか?って質問されて、女優がめちゃくちゃ自信満々に、ベッドシーンとはいかなるものか、裸になるとはなんたるかを語っていたくだりですね。絶対脱がない女、ナタリー・ポートマンがそれを言うっていうのが最高でした。監督、すごいセンスしてんな。
コメント
元ネタの事件の一番面白そうな部分が「人妻が未成年と関係持って獄中出産して、家庭を捨ててその少年と再婚して子供を育て~」って部分なのに、そこをスっ飛ばして無駄に関係者の多い後日談みたいな設定が根本的に失敗している。
とにかく物語に吸引力が無く最後まで見るのが苦痛でしかない、これで「脚本賞候補」とか理解に苦しむ。
完全に失敗ですね