2時間黒人あるあるエピソードをこれでもかと連発するだけの映画で、主人公のキャラをはじめ、登場人物、俳優たちもいまいちでした。43点
アメリカン・フィクションのあらすじ
セロニアス “モンク” エリソンは、上流階級のインテリなアフリカ系アメリカ人の作家でLAの大学教授。彼の小説は学術的に高く評価されているが、売り上げは悪く、最新作は「黒ぽくない」として出版社に拒絶される。
大学で彼は人種問題をオープンに議論しようとしたところ学生たちが不快感を表し、クレームが経営部に届く。そのことから大学側から一時的に休暇を取るようにせがまれ、教壇を離れることになる。
その間、モンクは文学セミナーを開いてみることにした。しかしセミナーでは、ほとんど出席者も来ず、改めて自分の人気の低さを痛感する。
一方で同じく黒人の小説家シンタラ・ゴールデンのセミナー会場に足を運んでみると、そこは大盛況だった。彼女は『We’s Lives in Da Ghetto』でベストセラーになり、話題になっていた。しかしその本は黒人のステレオタイプに迎合する、なんとも安っぽい内容でモンクは吐き気がした。
実家のボストンに帰ると、母親のアグネスがアルツハイマーの兆候を示していた。医師である姉のリサと今後母親をどうするか相談していると、リサが突然心臓発作を起こし、後に病院で亡くなってしまう。葬式では弟のクリフも姿を見せた。クリフは男と浮気していたことが発覚して妻と離婚し、現在は薬物と同性愛に溺れていた。
シンタラ・ゴールデンの成功を目の当たりにし、母親のケアの費用が高額になることを失望したモンクは、世間が黒人作家に期待する、ベタな風刺小説『My Pafology』を書く。それを出版社に提出すると、絶賛され75万ドルの前金を提示され、すぐに映画化の話にまで行きつくが、服役歴のある悪い黒人作家というキャラで売り出そうとしたら、次第に話がこじれていくのだった。
アメリカン・フィクションのキャスト
- ジェフリー・ライト
- トレーシー・エリス・ロス
- エリカ・アレクサンダー
- レスリー・ウーガムス
- スターリング・K・ブラウン
- マイラ・ルクレティア・テイラー
アメリカン・フィクションの感想と評価
フィクション小説「Erasure 」を基にしたコード・ジェファーソン監督による、アメリカの風刺コメディー。2024年アカデミー賞作品賞のノミネート作品です。
卑屈でひねくれた中年のインテリ黒人作家が繰り広げる人種問題を皮肉った会話劇で、アメリカではかなり高く評価されている映画です。
一方でハリウッド映画によくある黒人か、もしくは白人か、みたいな二択の中の世界のお話で、まるでそれ以外の人種は存在しないかのようなノリで、永延と黒人のステレオタイプをネタに笑わそうとしてくるのがあまり面白くなかったです。くすくすっと笑える箇所はあるにはあるんだけど、爆笑するほどのシーンはないです。
インテリの黒人作家でさえ、社会からはゴリゴリのギャングスタータイプのキャラを求められ、そのイメージに合わないと面白くないとされる風潮を自虐気味に描いていくのはまだいいでしょう。しかし全体のストーリーラインが散らかっていて、作家としてのドラマを綴りたいのか、家族ドラマにしたいのか、どっちつかずでしたね。
家族のストーリーになっても黒人のステレオタイプで苦しむ様子が取り上げられ、例えば主人公の弟はゲイだけど、それを言えずにずっと生きてきて、マッチョな父親は息子がゲイであることも知らずに死んだ、といった設定をはめ込んでいました。ただ、それ以上話が膨らむことがないんですよ。母親がアルツハイマーになって施設に入る、というストーリーラインもそれによって主人公がどうにかなるようでならいんです。
家族のパートいるかなあっていうぐらい、作家ストーリーと家族ストーリーを二つの柱として話が進んでいくことで、余計に「なにが言いたいの?」っていう感想を抱きましたね。とりあえず黒人に対する偏見エピソードを増やすためだけの手段だったのかなあ。
それを言ったら恋愛のくだりなんてもっといらなかったかもしれませんね。主人公のようなこじらせキャラは独身だからいいみたいなところありますよね。幸せになっちゃったら終わりっていうか。気難しくて、迎合するのが嫌で、自分の意見を貫く売れない芸術家なんだったら絶望的に異性受けが悪いほうがマッチしてるんですけどね。
結局のところ本作の個性が光るのはラストぐらいで、ラストの授賞式のくだりでようやく「アメリカンフィクション」が発揮されたなあという感じがしました。特に警察が出てくるラストは、黒人あるある悲劇エピソード的でちょっと笑えました。
でも意外だったのはあの部分だけで、風刺映画にもやはりしっかりとしたストーリーが必要だなあと改めて思いました。
いずれにしてもコメディーなので笑えてなんぼみたいなところありますよね。そんなに笑えなかったから残念。アメリカの黒人や白人にはこれでいいんだろうけど、ほかの人種が見ても蚊帳の外って感じじゃないかなあ。一般の日本人が見ても「へえ」で終わりそうなタイプの作品でした。いちおうアカデミー賞にノミネートされてるけど、ほかにいいのがなかったから消去法で選考に残ったんでしょう。これが受賞することはまずないと思いますよ。
コメント
気取った感じの作品でしたねー。
私も、家族の話と恋愛いらないよなーと思いました。
なら、小説を作り上げるまでや内容をもう少し見たかったです。
人種的な問題であまり笑えないのは仕方ないのかな。
比べるのはちょっと違うかもしれませんが、風刺的な作品ならゲットアウトの方がよっぽど笑えて面白かったです。
気取ってましたね