「母という名の女」、「或る終焉」、「ニューオーダー」で知られるミシェル・フランコ監督によるハイクオリティーな芸術路線人間ドラマ。リアリティーがありすぎて怖くなりました。86点(100点満点)
父の秘密のあらすじ
妻を亡くして失意の底にいるロベルト(エルマン・メンドーサ)と娘のアレハンドラ(テッサ・イア)は、メキシコシティへと移り住む。二人は見知らぬ土地で 再スタートを切ろうとするものの、なかなか喪失感から逃れられずにいた。
アレハンドラは転校先の学校で友達もでき、少しずつ明るさを取り戻していくが、あ る日、盗撮された性行為をインターネットで流され……。
シネマトゥディより
父の秘密の感想
第65回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にてグランプリを受賞した、ゾッとするメキシカンティーンエイジャードラマ。
母の死>引っ越し>転校>いじめ、とスローながら釘付けにされるスリリングな筋書きに言葉を失うこと間違いなし。ホラー映画よりホラーっぽい恐ろしすぎる作品。
血が出たり、ナイフで刺したりしない理由で、ホラー映画にはカテゴライズされないでしょう。しかし僕は本当のホラーとは日常に起こりうるこの映画のような出来事こそがそうだと思っています。
あまりにもリアリティーのある恐怖に観賞中、疲労を感じました。日本映画でもイジメを題材にしたものは多いけれど、いつもインパクト先行でやりすぎ感が出てしまい、どれもリアリティーを感じることができませんでした。
しかしこの映画は、演技と演出の上手さも加わって、ほとんどの登場人物に、「こういう奴いそうで怖いなあ」という印象を持てました。主人公を演じたテッサ・イアは「あの日、欲望の大地で」の子役だった女優だそうですが、特に演技が自然でしたね。
各シーンに結構な時間を割いていて、親子の会話シーンやパーティーのシーンの作りこみ方が半端じゃないです。何回も撮り直してああなったのか、それとも一発勝負であそこまでの完成度に到達したのかが気になるところです。
この映画にもまた他の上質な映画にも共通して言えるのが、全く先が読めないところです。お喋りな人なら「どうなるの、どうなるの?」とついつい声に出してしまいそうです。
始まってすぐに、その雰囲気やテンポから「国際映画祭狙いの映画」だということが分かります。ストーリーの説明は極力抑えてあり、セリフも少なめで、視聴者は登場人物の行動と各シーンの流れを追って話を理解していきます。
ハリウッドの商業映画しか見ない人には退屈な映画かもしれません。そういう人たちは「パラノーマル・アクティビティ」でも見て、キャーキャー言っていればいいのです。
カンヌ国際映画祭がなければ、メキシコ国内を始め、世界でも話題になることはなかったでしょうし、日本にももちろん届かなかったでしょう。ハズレもありますが、やっぱり国際映画祭には意味があるんだなあ、と改めて思わせられた作品でした。
コメント
凄く怖そうな映画ですね。
私はこないだ娘に頼まれて怖い映画をチョイスしたのですが今の映画は血が出たりスプラッタが多いので結局昔の映画を選んだ。それがミザリーでした。娘の感想は「これは血が出ないけれど相当怖い」でしたね。
そういう作品は最近少ないと思います。怖さはドキドキ感と頭の中に迫ってくる描写でしょうか。
mamarinさん
コメントありがとうございます。怖い映画でした。若者の持つ残虐性が恐ろしいです。やはり血とかより心理的に迫る恐怖がいいですね。
映画男さんのレビューを読み鑑賞しました。とても面白かったです(面白いという表現はおかしいですが)。
映画男さんの仰るように、脚本や演出はいかにも「ある視点部門」ぽいなあと感じました笑
ハネケやダルデンヌ兄弟を初め、この手の作品は鑑賞に当たり踏ん切りがつかないので、レビューサイトの存在が本当にありがたいです。
役に立てて嬉しいです。これからも参考にしてください。
観ました。
男女混合のイジメが……陰湿と本能的な危機のミックスで…エグい。
ていうか、臨海学校であんな乱痴気騒ぎさせてるなら学校の機能まるで果たしてないですね。
これ、リアルでいいですよね。