好き嫌いがはっきり分かれそうなやや難解な人間ドラマ。文学っぽいフィクションが好きな人にはいいだろうけど、そうじゃない人には退屈な話です。34点
イニシェリン島の精霊のあらすじ
アイルランドで内戦が行われていた1923年、イニシェリン島ではミュージシャンのコルムが突然長年の飲み友達であるパードリックに絶縁宣言する。コルムはパードリックとはもう同じテーブルには座らないといって飲み屋での同席を拒絶するのだった。
パードリックはあまりにも突然のことで意味が分からなかった。自分に非があるなら謝ろうと思ったが、どうやらそうでもないらしい。ただ、残り僅かな人生を有意義に過ごすにはパードリックはあまりにもつまらない相手だというのだ。
そんなことを言われてもパードリックは納得がいかなかった。そこで彼はなんとしてでもコルムの気を引こうと努力するが全て逆効果になってしまう。やがてコルムは、パードリックを遠ざけるために彼が話しかけてくる度に自分の指を切る、とまで宣言するのだった。
イニシェリン島の精霊のキャスト
- コリン・ファレル
- ブレンダン・グリーソン
- ケリー・コンドン
- バリー・コーガン
イニシェリン島の精霊の感想と評価
「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー監督によるブラック・コメディ。アカデミー賞のノミネート作品です。
架空の島で起こる奇妙な出来事をつづった会話劇で批評家からかなり高いを評価を得ているものの僕には合わなかったです。
会話は退屈だし、ユーモアは平凡だし、とんでもないオチやどんでん返しが待っているのかと思いきやなにもなくそのまま終わっていくしで全体的につまらなかったです。
突然、長年の親友に絶縁されたら、というのがプロットになっているんですが、それに対する主人公の行動が全く共感できず、相手がもう話したくないって言ってるなら放っておけばいいじゃん、としか思えませんでした。
それなのに主人公パードリックは、まるで女に振られたストーカー男のように親友コルムにつきまとい、再び気を引こうと奮闘するんですよ。それに対し、親友も付きまとってくるなら指を切る、という意味不明な行動を取り、いかにも作り物の物語という感じがして話に入っていけませんでした。
正直、このプロットならなぜ親友が絶縁したのか、という理由を明かすシーンをオチにするしかないように思えるんですよね。そしてそれ相応の理由を用意しないとダメでしょう。
しかし実際のところ大した理由もなければ、または万が一あったとしてもあえて言わない、という選択をしており、絶縁することに命をかける意味が最後まで分からない、あるいは説得力のないものになっていました。残された時間を意味のない会話ではなく、音楽活動に使いたかったんなら指を切っちゃうっていうのもおかしいしね。それともミュージシャンにとって指は生命線だからあえてそれを切ることが強い意思表示になるっていう論理? うーん苦しいなあ。
歳を取ったコルムなりの終活の第一歩がパードリックと離れることで、そうじゃないとなにも始まらない、という思いもあったのかもしれないけど、あんな小さな島で今後一切付き合わないとかできないでしょ。人生の大事な時間を酒を飲んでたわいもない会話して過ごしてきたことに対する後悔があったとしてもそれはお前が選んできた人生だろって。
いかにもフィクション、いかにも作り話を楽しめる人にはいいんでしょう。一方で現実主義の視聴者にはダメなやつですね。なんでロバが指を誤飲したぐらいで死ぬんだよとか、突っ込みどころが多すぎるんだもん。野生動物の歯と顎の力を過小評価してるよね。
ロバを殺されたら復讐に親友を殺そうとするっていうバランスの取り方もおかしいし、登場人物の物差しがいちいちずれていて、なんでそうなるんだよ?っていう展開ばかりでした。
これを深読みする方法はいくらでもあると思います。やれ昨日まで味方だった隣人が突然敵になったアイルランド内戦の比喩だとか、やれコルムが自分のような人生を歩んでもらいたくないから親友のパードリックをあえて突き放したとか、やれビーチのラストシーンでコルムはすでに死んでいてパードリックはゴーストと喋っていたとか、やれ二人の男はゲイで宗教上どうしても同性愛を認めたくなかった、などといくらでも解釈の方法はあると思います。
ただ、肝心のストーリーがつまらないもんだから解釈に時間をかけたくなくなるんですよ。残念。
コメント
「ストーリー自体がつまらんから、解釈に時間をかけたくない」
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正にこれ。
「スリー・ビルボード」の場合は終盤まで物語が加速していたのに。
スリー・ビルボードは面白かったんですけどね
こんにちは。先程本作を観てきました。アカデミー賞候補や、Twitterでのトレンド、知人の評判は良かったのですが、私には全く合いませんでした。正直、今年のワースト候補になりそうです…
良かったのは、アイルランドの風景と音楽です。風景は綺麗なんですが、心象的な使い方が多すぎてやや退屈でした。音楽は元々好きなのですが、この2点は別に本作だから光っていたとは思えず、映画の評価を上げるほどではなかったです。
悪かったのは、全体的に意味不明で、各エピソードが点と点でしかなく、線で繋がってなかったことですね。映画男さんが仰るように、2人の拗らせ理由もよくわからないかったです。後は、指切りや指投げの嫌がらせ、動物虐待描写は不快になり、途中で腹痛を起こしました。
こういう映画は、アクションやミュージカルなどわかりやすい動きがない分、地味なんですが、人物をしっかり掘り下げて魅力的に描けていれば、名作になる要素はあると思います。しかし、本作からはそれを感じませんでした。
うーん、終活やゲイや内戦など、深読みされる方もいらっしゃるんですね。私も肝心のストーリーに惹かれなかったので、そこまで考察したいとは思えませんでした。そういえば、何か『NOPE』の時の盛り上がり方と似ているなぁと思いました。
※トイ・ストーリー4の記事のコメントの返信、ありがとうございました。
玄人受けするんですかね。いろんな解釈を考えるのが好きな人にはいいんでしょうか。
主人公は発達障害だと自分は感じました。
それだと行動に納得がいくんですが、だとしたらそんな辛い内容にする必要ないだろと、どっちにせよつまらない作品だと思いました。
どっちにせよつまらない作品ですね
こーれ面白そうだよなー、多分面白いな。
これは観よう!
見たらぜひ感想聞かせてください