グッド・ナースは上質大人向けスリラー！ネタバレ感想

病院内で繰り広げられるおぞましい出来事をつづった実話ベースの連続殺人事件もの。あなたの点滴、それ本当に大丈夫ですか？って聞きたくなる話です。66点

グッド・ナースのあらすじ

シングルマザーのエイミーは心臓疾患を患いながらもそれを隠して病院で看護師として勤務していた。彼女が医療保険に加入するには最低でも１年は働かなければならず、すぐに手術を受けることができない。病院は人手不足で仕事はハードだった。

そんな中、夜のシフトに新しい看護師チャーリー・カレンが雇われる。チャーリーは真面目で気が利く仕事のできる男だった。チャリーはすぐにエイミーと仲良くなり、家族ぐるみの付き合いを始める。

ところがしかし彼がやってきてから病院で患者が突然亡くなる件数が急増する。最初は疑うことを知らなかったエイミーだが、刑事の話を聞くうちにチャーリーに疑いを向け始める。

グッド・ナースのキャスト

• ジェシカ・チャステイン
• エディ・レッドメイン
• ナムディ・アソムガ
• ノア・エメリッヒ

グッド・ナースの感想と評価

「アナザーラウンド」や「ある戦争」で知られるトビアス・リンホルム監督による、勤務先で患者を殺しまくっていた看護師シリアルキラーを描いたサスペンススリラー。実話ベースの衝撃作です。

よくある怖がらせを目的としたハリウッドスリラーではなく、シリアスな社会派刑事ドラマといった雰囲気があるのが特徴で「ダーク・ウォーターズ巨大企業が恐れた男」のような企業告発映画に似ています。

犯人は、患者を殺すのを趣味としている看護師個人なんですが、それを病院が隠蔽しようとすることで被害が拡大し、事件の解決を妨げてしまうという意味では病院の不祥事を描いた映画ともいえそうです。

そんな病院に対し、二人組の刑事と看護師が様々な妨害行為に遭いながらも協力し合って犯人を追い詰める、というのがストーリーの流れです。

シリアルキラーを普段は真面目で心優しい男という設定にして、実は裏でとんでもないことをしでかしていたというギャップを作っているのが上手いですね。あんな風貌な男ならなおさらいい人だろうって思っちゃうしね。ちなみに本物のチャールズ・カレンはこちら。

こいつもまた「いい人」の仮面を被って周囲を騙していたんでしょうか。

また、同僚でありヒロインの看護師が心臓疾患を抱えながらも医療保険がなく、手術を受けられず、ひどい健康状態のまま医療機関で働いているというなんとも皮肉な状況にしてるのもポイントで、アメリカの医療システムに対する問題提起にもなっているように感じました。

全てが金儲け主義で成り立っているアメリカの医療機関は法律でがちがちに守られているようで警察すらも介入できないみたいな描写が続くんですが、ああやって医療ミスや事故も隠蔽し放題なんですかね。

中にはチャーリーのように頭のおかしい看護師、あるいは無能な看護師、医師に殺されている患者もいるだろうし、遺族は何も知らされないまま闇葬られてることも普通にありそうですね。

チャーリーは点滴にインシュリンやほかの薬を混ぜて患者に与えていたようで、それも患者に点滴する瞬間に混入させるのではなく、倉庫にある点滴に事前に薬を混入させることでアリバイ作りをしていたようです。患者が死んだとき自分は働いてなかったって言えるからね。

こういう話、結構世界各国で聞きますよね。日本でも点滴にミルク入れてたバカがいなかったっけ？　こんなの見ると点滴なんて絶対したくなくなりますね。

普通に怖い話なんだけど、不思議と怖さはあまり感じませんでした。怖いよりも病院側の対応にむかつく感情のほうが上回ってしまいましたね。病院側に責任を問うことができないのも理不尽だし。

間違いなく本作のMVPはヒロインを演じたジェシカ・チャステインでしょう。病気を抱えながら仕事をする看護師という役作りはなかなかしんどそうでした。体がつらいのに仕事もして子育てもして事件まで解決しなくちゃいけないとか死ぬって。

犯人役のエディ・レッドメインは安定の名演技で刑事役のナムディ・アソムガも格好良かったです。やっぱり演技が普通に上手いから安心して見れるし、過剰な演出がないのも大人向けのスリラーという感じがして高級感がありました。犯人はすぐに分かるし、真犯人がいるわけでもなく、サプライズ的な展開もないので大ヒットする映画ではないでしょうが質は高いですね。