人生の重大な選択を誤り、盛大に失敗した家族を描いた家族ドラマ。見れるけど、転落ぶりが甘く、大したことのない話に思えちゃいました。53点
不都合な理想の夫婦のあらすじ
1980年代、アメリカに家族と住むイギリス人のローリーは母国で一旗揚げたいと願い、イギリスに引っ越すことを提案する。妻のアリソンはアメリカの生活に十分に満足していたので断ったが、夫の熱意に押されてしぶしぶイギリスに移住することにする。
ローリーはイギリスでかつての上司のアーサーの会社に戻り、大きな屋敷を購入し、そこで馬の調教師であるアリソンが馬を飼えるようにした。子供たちには最高の教育を受けさせるために高い学校に通わせ、すべてが順調に進んでいるかのように見えた。
しかしアリソンは慣れない子供たちの学校の送り迎えに手こずり、ローリーは仕事でうまく回らなくなっていく。やがて牧場を建てようとしていた建設費をローリーが滞納していることを知り、アリソンはローリーを問いただす。
ローリーはもうすぐ大金が舞い込んでくるからといってアリソンを説得しようとしたが、夫を信じてイギリスまでやってきた彼女は彼のことを信用できなくなってしまう。
不都合な理想の夫婦のキャスト
- ジュード・ロウ
- キャリー・クーン
- チャーリー・ショットウェル
- ウーナ・ロシェ
- アディール・アクタル
- アン・リード
不都合な理想の夫婦の感想と評価
「マーサ、あるいはマーシー・メイ」のショーン・ダーキン監督による家族の転落ドラマ。アメリカで何不自由なく暮らしていた家族がイギリスに移り住んだ途端、物事が空回りし始め、やがて崩壊していく様子を描いた悲劇です。
お調子者の夫が家族に「ねえねえ、イギリスに行こうよ。向こうのほうが絶対いい生活ができるよ」と半ば強引に移住を勧め、ノリでハイソサエティーに入り込もうとし、ゴージャスな生活を心がけてみるもすぐにお金が底を尽きて、にっちもさっちもいかなくなるポンコツ夫を軸に、彼に振り回される家族たちの物語です。
「マーサ、あるいはマーシー・メイ」の監督なので、もっと気持ち悪く、かつドロドロとしたドラマを期待したんですが、結構普通のリアルな移住失敗ストーリーでした。その点でいうとつまらなくはないけど、期待外れかなあ。案外普通じゃんって思っちゃいましたね。
ジュード・ロウ扮する野心家のビジネスマン、ローリーのキャラはなかなかよかったです。口から出まかせで家族はもちろん、同僚や仕事相手も全部言いくるめてしまうような勢いのある男なんだけど、予定通りに行かなくなると取り返しがつかなくなるアホさが最高でした。
見栄っ張りで大口を叩くから、嘘に嘘をかぶせるような、借金に借金を重ねるような負の連鎖に陥りやすく、なかなか自分の負けを認めないローリーが最終的に素直に失敗を認めるまでを描いたストーリーともいえそうです。
ああいう男ってうまくいってるときは魅力的に映るのに対し、そうじゃないときはただの詐欺師みたいに見えてくるから面白いですね。大きな夢を語る野心家と詐欺師は紙一重なんですかね。
対する妻のアリソンもそんな夫の魅力と口のうまさに乗せられちゃうタイプで、いいときは「あなた最高よ。もう愛してる」って感じなのに、いざ下り坂に入ると、「全部あなたのせいよ、この嘘つきが」って手のひら返すのもどうなんでしょうね。最後は吹っ切れて一人でクラブで踊り狂ってたじゃないですか。もう踊らないとやってられないって感じだったのかな。
やっぱり夫に完全に頼っちゃうと夫が失敗したら家族全員コケるみたいな事態になるので、妻は妻で自分の仕事を持たないとダメですね。まあそもそもその仕事のベースを作るのに失敗したわけなんだけど。
日本国内でも移住がプチブームみたいですね。僕の姉家族も東京から田舎に引っ越しました。今のところうまくいってるようです。でも失敗してまた田舎を出ていく人も多いみたいですね。そうならないためにも移住を考えている人はこういう失敗エピソードを見ておくのもいいかもしれません。
ただ、やっぱりローリーみたいにいきなり豪邸を買っちゃったり、高額な学校に子供を入れたりするときついですよね。フットワークが重くなるし、維持費だけでも大変だし、なんでも最初は小さく始めるのが基本だと改めて思いました。
経済的にうまくいかなくなると家族仲が悪くなり、夫婦が喧嘩を始めると子供たちに伝染し、子供たちがグレはじめ、次々と問題が起こる、というストーリー展開はスムーズでした。問題はひとつひとつのエピソードが平凡なことですね。もっと不運があってもいいし、とことん付いてないぐらいの転落ぶりが見たかったかなあ。不運な出来事といえば飼っていた馬の死ぐらいでしたね。あれを機にもっと不幸が続くでもよかったですね。
夫婦が殺意を見せてもいいし、食うものにも困って子供たちに泥棒させるぐらいまで落ちてくれたらもっと応援してたかもしれません。あれならまだまだ全然やり直せるでしょ。
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