一体何回ペネロペ・クルスを出せば気が済むんだよっていうペドロ・アルモドバルワールド全開の映画。カラフルな色使いや同性愛エピソードは相変わらずですが、ストーリーはなかなかいいです。60点
パラレル・マザーズのあらすじ
写真家のハニスは考古学者アルトゥーロのフォトセッションを担当したことがきっかけで、彼の基金を通じて故郷の村の土に埋まっている、スペイン内戦時代に亡くなった遺族の遺体を掘り起こすのを手伝ってもらうことになる。
二人はそのことがきっかけで急接近し、男女の仲になり、ハニスはアルトゥーロの子供を妊娠してしまう。しかしアルトゥーロは結婚していたため、ハニスは独りで産んで育てるつもりだった。
病院でハニスはアナと同室だった。アナもまた父親不在で赤ん坊を出産するとあって二人は意気投合した。同日にハニスにセシリア、アナにアニータが生まれ、それぞれ集中治療室で経過を観察することになったが無事退院でき、母親としての新しい人生が始まったのだった。
出産後、しばらくするとハニスのもとに子供の父親であるアルトゥーロが訪れる。彼は自分の娘のことが気がかりだったのだ。ところがアルトゥーロは娘の顔を見て、肌が浅黒いことから自分の娘ではないと言い出し、確かめるためにもDNAテストをしたほうがいいと提案する。これにハニスは腹を立て、アルトゥーロを追い出した。
しかしハニスも半ば娘のセシリアがどちらにも似ていないことを気になっていた。そしてDNAテストをすると、驚きの結果が待っていたのだった。
パラレル・マザーズのキャスト
- ペネロペ・クルス
- ミレナ・スミット
- イスラエル・エレハルデ
- アイタナ・サンチェス=ギヨン
- フリエタ・セラーノ
- ロッシ・デ・パルマ
パラレル・マザーズの感想と評価
「ジュリエッタ」、「私が、生きる肌」、「抱擁のかけら」などでお馴染みのペドロ・アルモドバル監督による人間ドラマ。最近の彼の作品の中ではストーリーがしっかりしているほうで、そこそこ楽しめました。
新生児取り違え事件と現代にまで深い傷を残すスペイン内戦で失った家族のことをつづったパラレルストーリーになっています。
ヒロインは40歳を目前にした女性写真家のハニスで、彼女は既婚男性と関係を持ったことで子供を出産することになります。ところがハニスは同室だったティーネイジャーのアナと病院のミスによって赤ん坊を取り違えてしまい、それぞれが気づかずに育ててしまいます。
それにハニスが気づいたのは赤ん坊を、赤ん坊の父親である不倫相手に見せたことがきっかけでした。不倫相手は「いやあ、この子は俺の子じゃないんじゃない?」などと言い出したからです。ハニスからすると、そもそも相手に認知も求めていないし、子育ての責任を押し付ける気もないのにそんなことを言われるなんて心外でした。
しかし確かにそうかもなあと思ってDNA検査をしてみると、赤ん坊の自分の子供ではなかった、というのがストーリーの流れです。
赤ん坊取り違え映画といえば「そして父になる」や「もうひとりの息子」などが浮かびますが、さすがにこの映画にそれらの作品ほどのリアリティーはなく、視聴者に問題意識を芽生えさせ、キャラクターに感情移入させるほどの威力はなかったです。
そもそも二人の赤ん坊はそれぞれ肌の色が違く、また顔も全然似ていないことから間違えようがないんですよ。生まれてきたときにそれぞれのお母さんは自分の赤ん坊の顔を見ているはずなんだからいくら集中治療室で観察されていた期間があったとしても自分の元に帰ってきた時点で、「すいません、この子、うちの子じゃないですよ」って気づくはずなんです。
だからあそこはあえて肌の色を変える必要はなかったかなあ。肌の色は同じで髪の毛の質が違うとかでもよかったですよね。
また、赤ん坊にまつわるエピソードがてんこ盛りで、ハニスのお祖母ちゃんはベネズエラ人だからとか、アナが妊娠したのは3人の男に無理矢理やられたからだとか、ちょっちょっと待って、と言わんばかりのエピソードをさらっと進めていくのがびっくりしました。そこを掘り下げる気がないなら、無理に強い背景いらなくない?
一方で面白いなあと思ったのは、取り違えた赤ん坊をどうするか、というのをテーマにせず、片方の赤ん坊がすぐに死んでしまう、という設定にしたことです。そう、ハニスはアナの赤ん坊を育て、アナはハニスの赤ん坊を早くに失ってしまうのです。
これによって取り違えた事実を黙っておくか、あるいは正直に言うべきか、カミングアウトしたら子供はどうなるのか、といった様々なオプションが生まれて、先の展開が予想できなくなりました。
これまでの「そして父になる」や「もうひとりの息子」だったら、血のつながりが大事なのか、それとも一緒に過ごしてきた時間が大事なのか、というのが一つのテーマだったんだけど、片方が亡くなっているからそういう問題じゃないんですよね。
さらに赤ん坊を取り違えた同士のハニスとアナと同性愛に走ったりして、ザ・アルモドバル的ストーリーへと進んでいくのもやりすぎとはいえ、なかなかなアイデアでしたね。同性はよくても40過ぎた大人の女性がティーネイジャーの女の子に行くかね?
ハニスはとりあえず押しに弱く、アプローチされたらすぐ許しちゃうんだから。一方で不倫相手には責任を一切押し付けず、私が一人で産んで育てるから気にしないでねって終始軽いノリなのも笑えます。どんだけ都合のいい女なんだよって。
さてもう一つのストーリーである、スペイン内戦についてはちょっと中途半端でしたね。それが赤ん坊の話とつながっていくならまだしも別に特別な関連性もなく、二つのストーリーがリンクせずに終わって行ったのはもったいないです。ちゃんとラストにもオチやサプライズや伏線回収があればもっと仕上がっていたんですけどね。
なぜか最後は全員集合して、ハッピーエンドみたいなことになってたけど、ハニスも新たに子供を妊娠したからセシリアにはもう感心なさげだったし、親族の遺体もあんなに浅いところにあんなに分かりやすく、完全体で骨が綺麗に残ってるかよって突っ込みたくなりましたね。スペイン内戦って何十年前だよって話ですよ。
コメント
自分のルーツを知り、それらを守り抜くことの大事さ、祖先を大切にする、要は血のつながりを大切にすることは自分の生き方にも関わってくるのかなと。
だから、アナにあっさり子供を渡してしまうのも血の繋がりを尊重してのことなのでしょうか。
彼女たちにとっては乳児取り違えやレイプなんて些細なことなんですねw
今回は同性愛なしだよね、って思っていたらありましたねw
いる?とも思いましたがw
監督のルーツだからってことでしょうかw
今回は同性愛いりませんでしたよね