小説が好きな人にしかおすすめできないスローなおとぎ話。ファンタジー要素はないけど、現実感もあまりない、どっちつかず映画です。47点
ナイトメア・アリーのあらすじ
1939年、スタンは死体を床下に置き、家ごと燃やして故郷を去って行った。スタンが行き着いた先は移動サーカスの見世物小屋だった。そこで雑用の仕事についたスタンは、鶏を食いちぎるパフォーマンスをするギークを知った。なんでもアル中の男を探し、酒にアヘンを混ぜて薬中にし、ギークにさせるんだそうだった。
スタンは透視能力者のジーナと読心術者の夫でアル中のピートの下で働いた。遠視能力といっても客が紙に書いた名前や情報をほかのメンバーに読ませて、さも的中させたかのように振るまうだけのマジックだった。
スタンはサーカスにいたモリーに惚れていた。モリーは電気ショックのマジックを見せて客を驚かせていた。スタンはモリーにどうせなら電気椅子のセットでやったほうが客受けするはずだと提案し、モリーもそれに賛成した。
スタンは中でも読心術者のピートのスキルに興味を持った。ピートの術を習得しようと彼のノートを盗み読みしたりもした。ところがある日、ピートに酒と間違えてメタノールのボトルをあげてしまったことでピートが死んでしまう。
同時期、警察のガサ入れが行われ、モリーのパフォーマンスの前にも警察官が現れ、ショーは中止となった。しかしスタンが読心術を使って警察官をふっかけると、警察官は動揺して去って行ったのだった。
スタンが警官を追っ払った姿を見たモリーはスタンにメロメロになり、二人はキスを交わした。しかしそこに用心棒のブルーノがやってきてはスタンを殴り始めた。ブルーノはモリーには手を出すなと前から忠告していたのだが、スタンはそれを破ったのだった。
読心術を覚えたスタンはいまさら見世物小屋に未練はなかった。彼はモリーを連れて車に乗って出ていった。そして彼は富裕層を相手に読心術を心霊術に変えて成功を手にするのだった。
ナイトメア・アリーのキャスト
- ブラッドリー・クーパー
- ケイト・ブランシェット
- ルーニー・マーラ
- トニ・コレット
- ウィレム・デフォー
- リチャード・ジェンキンス
- ロン・パールマン
ナイトメア・アリーの感想と評価
「クリムゾン・ピーク」、「パシフィック・リム」、「パンズ・ラビリンス」、「シェイプ・オブ・ウォーター」など、いまだかつてそんなに面白い映画を撮ったことのないギレルモ・デル・トロ監督によるクラシック・サイコスリラー。
1946年発行の同名小説の映画化であり、2022年アカデミー賞ノミネート作品。すでに1947年版の同名映画もありますが、こちらはリメイクではなく、あくまでもギレルモ・デル・トロ監督独自の解釈による映画だそうです。
物語は主人公スタンが見世物小屋に流れ着き、そこであらゆるトリックを学び、そのスキルをもとにいつの間にか怪しい心霊術や交霊術で人々を騙していき、成功を手にするもやがてボロが出て転落していく、という波乱万丈の人生を描いていきます。
小説を基にしていることもあってかじっくり時間をかけて一つ一つの話を見せていくため、上映時間も2時間30分超えになっているので、気合を入れて見ないとダメなタイプの作品です。
しかしそれだけの時間を費やす見返りがあるかというと、ちょっと微妙でしたね。やっぱりテンポの悪さ、無駄の多さ、そして長い割には人物描写に物足りなさがあって、最後まであまりしっくりきませんでした。
特に主人公スタンの人物像があまり見えてこなったなあ、という感じがします。冒頭でいきなりお父さんの遺体を焼いて家を出ていくんですが、父親をはじめ母親との関係性についてはざっくり触れるだけでスタンのトラウマや性格を上手く表現できていたとはとても思えません。ただ、両親のことが嫌いなんだあぐらいしか伝わりません。気づいたら嫌いな親の道をたどってるというのもありがちだし。
スタンが終始何を考えているのかよく分からないので、物語にいまいち入っていけないんですよね。戦略家や野心家のようで詰めが甘いし、女性にモテるようで実は振り回されているし、ある程度成功を手にしたのにそこからあえて危ない橋を渡っていく理由があまり理解できませんでした。
そもそも見世物小屋を出てからわずか2年で、ハイソサエティの中にあんなに入って行って成功できるっていうのができすぎですよね。どんだけ短期間で生活レベル上がってんだよって。
うさんくさいスピリチュアル系のパフォーマンスでお金を稼ぎだしてからは人を騙して、その結果自分も騙されて、女にも見放されて、地に落ちるといった展開になっていましたが、そういったシチュエーションでもスタンが一体何を一番大事にしているのか価値観が見えてこないのが残念です。
モリーを大事にしていたようでそうでもなく、お金に目がくらんだかのようでいまいち貪欲になれきれていなかったし、結局なにがしたかったんですかね。引き際が大事なのに引けなくなり、どんどん危険な自分に近づいていったのが運の尽きでしたね。
結局のところラストシーンを見せたいがための映画だったのかなあ、という見方もできちゃいます。ラストシーンは伏線を回収する形になってはいるものの、別に主人公のスタンがそうならなくても、というオチになっていて因果応報のようでなんか違うんですよね。あそこでもっとゾッとさせてくれたらよかったんだけど。
この映画、今のところ赤字らしく、また売れないのがすごく納得できちゃいます。なんていうか古いんですよね。話が古いとか、原作が古いとかじゃなくて、全体の作り方が。演出の問題なんですかねえ。見れない映画じゃないし、ものすごい駄作とかでもないんだけど、なんかいまいちなんだよなあ。ブラッドリー・クーパーのせいかなあ。その可能性もあるなあ。
それでもアカデミー賞にノミネートされたからなんとかV回復できるんでしょうか。それにしても映画産業も大変ですね。ギレルモ・デル・トロ監督って「シェイプ・オブ・ウォーター」で作品賞も監督賞も取ってるんだよね。そんなに名前があるのに赤字ってもう賞味期限が終わっちゃったんですかね。
コメント
こんにちは。私も先週本作を観ました。
見世物小屋カーニバルの「奇妙さ」や人間の「気持ち悪さ」・「エグさ」はよく表現されていましたが、如何せん長すぎて疲れました。確かに、決してつまらない作品ではないですが、時間に対する見返りがあるかといえば、あまり無かったように思います。
俳優の配役については、ケイト・ブランシェットの美魔女っぷりが良かったです。ディズニー実写版「シンデレラ」のトレメイン夫人を思い出しました。
それにしても、この監督の作品は、いつも賛否両論になりますよね。ここまでサイコでダークで魑魅魍魎な世界観を創り出せることは凄いですが。
これ長いですよねえ。もっと気持ち悪くしてもよかったかなあと思いました。
お返事ありがとうございます。やはり、2時間以上の作品は、余程のテンポの良さや、緩急がないと、疲れてしまいますね。