テニス界の天才姉妹ウィリアムズ姉妹の半生を描いたスポ根映画。子持ちのお父さんが見たら泣く映画です。79点
ドリームプランのあらすじ
リチャード・ウィリアムズはカリフォルニア州コンプトンで妻と共に5人の娘を育てていた。そのうちの二人ビーナスとセリーナはテニスの才能があった。
リチャードは未経験ながら二人に毎日テニスの特訓をし、将来ウィンブルドンで勝てるような選手にしたいと願っていた。それにはプロのコーチについてもらうのが近道だった。
しかしリチャードには高額なレッスン料を払うお金などなかった。仕方なく彼は様々なプロコーチに娘たちを売り込み、無料でレッスンをしてくれるように頼んで回った。ところがリチャードの話を聞いてもほとんどのコーチたちは鼻で笑うだけだった。
そんなある日、リチャードはポール・コーエンに猛烈な売り込みをし、ビーナスの才能を認められる。ビーナスは彼の下で見る見るうちに成長し、有名なエージェントとの契約にこぎつけるもリチャードはそのオファーを蹴るのだった。
ドリームプランのキャスト
- ウィル・スミス
- アーンジャニュー・エリス
- サナイヤ・シドニー
- デミ・シングルトン
- ジョン・バーンサル
- ディラン・マクダーモット
ドリームプランの感想と評価
レイナルド・マーカス・グリーン監督による、テニス界のウィリアムズ姉妹を育てた父親にスポットライトを当てたスポーツドラマ。
ウィリアムズ姉妹が貧しい出身ながらどのようにしてチャンスをものにし、テニス界でのしあがってきたのかを分かりやすく描いた物語で、頑固親父には多少イライラさせられるものの、愛情溢れる感動的な内容になっています。
CGなのか実際にやっているのか、テニスシーンも見ごたえがあるし、ボクシング映画のようなしょぼさがありません。ウィリアムズ姉妹の育ちについて全く知らなかったこともあり驚きも多く、タフな環境で育てられ、決して夢を諦めなかった家族の姿にはインスピレーションを受けました。
5人娘の父親ってちょっと想像がつかないんですが、女の大家族の中で男一人ってもうそれだけですごいですよね。父親のリチャードは娘たちにかなり厳しい躾をしていたようで、厳しい一方でちゃんと愛し、愛されていたのが伝わってきました。
どこまで事実かは分かりませんが、公園でテニスをしていてもギャングたちが集まってきたり、ギャングに娘が絡まれたらその度に体を張って守らないといけないなど、治安の悪い地域で住んでいただけになかなかしんどそうな生活を送っていました。
ちなみにこれが当時の映像です。この映像からそのまま映画に使われているパートもありました。
拾ってきたり、もらったテニスボールで練習していたみたいですね。このハングリー精神が真似できないですよね。貧しいなりに持前のトーク力と行動力を持ってしてプロのコーチをつけるために動きまわっていた姿には尊敬の念しかわきませんでした。不利な状況を言い訳にせず、絶対のしあがるんだ、という執念を感じます。
普段から暴力や犯罪や差別と隣り合わせの生活をしていただけに今の暮らしからなんとしても抜け出してやるという思いが強かったんでしょう。
一方でリチャード自身が多くのコンプレックスやトラウマを抱えて育ってきたためかなり偏見に満ちた考えになっていてプライドが高く、慎重で、なにより頑固というのが厄介でした。
そのため娘たちにはジュニア大会には出場させず、学業を優先させ、普通の子供と同じ生活を優先させたそうです。大事な時期に変な注目を浴び、プレッシャーに押し潰されて彼女たちの人生を台無しにしたくない、という思いだったようです。
物語は、そんなリチャードの方針と一刻も早くジュニアの大会やプロ大会に出るべきだ、というコーチ、ヴィーナス本人、そして母親との衝突をメインストーリーにしていて、いかに頑固親父を説得するかが見どころになっていました。
ウィリアムズ姉妹といってもヴィーナスのエピソードをメインにしていてセリーナはあくまでも脇役に回っています。二人ともすごいのは変わりないんだけど、最初に頭角を表し、世に才能を認められたのは姉のヴィーナスだったんですね。
プロデビューが14歳なんで、ほとんどの技術が未経験の両親の教えが基盤になっていると考えるととんでもないことですよね。
そもそもお父さんはなんでテニスを教えようと思ったんですかね。テニスが一番稼げると思ったのかなぁ。そこについては残念ながら触れてませんでした。姉妹全員がテニスが好きだったというのならまだしも、5人いて二人だけがテニスにのめり込んだ、というのも面白いですね
タイガー・ウッズのお父さんもゴルフの経験もほとんどなくタイガー・ウッズにゴルフを教え始めたって「タイガー・ウッズ・光と影」で言ってたけど、結構そういうパターンは多いですよね。
日本で言ったらプロ未経験で亀田三兄弟を育てた亀田史郎とか、那須川天心を育てた那須川弘幸とか、逆に未経験の強みがあるんですかね。いずれにしてもみんなお父さんがキャラが強烈で頑固者という点で共通しているのが興味深いですね。
ウィリアムズ姉妹がプロに上がり、長年白人が牛耳って来たスポーツでタイトルを総なめにしていったのはさぞかし多くの黒人の少年少女たちに夢を与えたに違いないです。その時点で自分だけの戦いじゃなく、人種やコミュニティーを背負った戦いをしているんですよね。それも14歳でだよ。恐ろしい精神力ですよね。
そんなウィリアムズ姉妹が強靭なメンタルを手にしたのは間違いなく両親の教育と躾の賜物だったはずです。本作ではリチャードばかりにフォーカスしていますが、お母さんもかなりの肝っ玉お母さんですよね。二人の意見が食い違い、激論するシーンがあるんですが、あれには思わず涙が出ました。
意見はまるで正反対なんだけど、なんとしても成功したい、この白人社会で貧しい黒人のままで終わりたくない、っていう強い思いは一緒なんですよね。そしてそれは自分たちの世代ではどうこうできる問題じゃなく、娘たちに夢を託さないといけない、という歯がゆさもあって、余計にせつなかったです。
ラストは、ヴィーナスのプロデビューした大会ではグランドスラムでの優勝経験もあるランキング1位のアランチャ・サンチェス・ビカリオとの試合がクライマックスになっていました。
アランチャ・サンチェス・ビカリオは試合開始早々ヴィーナスに圧倒され、流れを変えるためにトイレに行って、ヴィーナスの集中力を切らした、という描写があったんだけど、あれ本当だとしたら汚いやり口ですねえ。14歳の子供に対して、ベテランがあんなことするんですね。どこが紳士のスポーツだよって。試合中にトイレに行くのがありなんだったら、それこそトイレ行きまくったらいいじゃないですか。「ああ、お腹痛い」とか言いながらね。
コメント
今晩は、私も本作を観ました。リチャードの性格や行動には、イラッとする点はあれど、姉妹を世界レベルまで引き上げた実績は凄いです。
ストーリーは、とてもシンプルでわかりやすかったです。上映時間は約150分と長いものの、余計な回り道や無駄な引き延ばしがなかったので、最後まで飽きなかったです。
史実より、「姉妹がプロテニスプレーヤーになる」という「ゴール」は予めわかっていますが、その過程がどうだったのかは知らなかったので、中々興味深い作品でした。
ちなみに日本語版だと、プロテニスプレーヤーの伊達公子氏が字幕監修を務めていました。現役アスリートや元アスリートのの方が、本作を観たらどんな感想を抱くのか、気になりました。
ストーリーがシンプルであることって大事ですよね。
お返事ありがとうございます。そうですね、最近の映画はテーマを詰め込みすぎなものが多い中、これはシンプルだったので、観やすかったです。
こんばんは。このブログでの高得点を見て本日観てきました。
> そもそもお父さんはなんでテニスを教えようと思ったんですかね。
これについては、ちらっとリチャードが「白人のスポーツだったのも娘にテニスをやらせた理由の1つだ」というようなことを口にしていたと思います。
ところでまだまだ映画鑑賞歴が浅い私から質問なのですが、映画男さんはノンフィクションの映画を観るとき何かしらの予備知識は入れておきますか?(主人公の経歴、映画の予告映像など)
お答えいただけると嬉しいです。
たまたま知ってる話なら別ですが、基本的に映画を見るために予備知識を入れることはないです。それやっちゃうと偏見と先入観を持っちゃうんで、なるべきゼロの状態で見るようにしています。