昭和や平成を哀愁を込めて描いた、悲し懐かし青春劇。儚くも美しい若さ溢れる時代をおっさんが振り返る話です。55点
ボクたちはみんな大人になれなかったのあらすじ
佐藤誠は小説家になりたいという漠然とした夢を抱きながらも、テレビ番組のテロップをつける製作の仕事に追われ、気が付くと46歳になっていた。ふと彼はかつての恋人だったかおりとよく来た渋谷のラブホテルの近くを通り、昔のことを思い出していた。かおりは「今度CDを持って来るからね」と言ったまま、彼の前から去ってしまった。
その後も佐藤誠はいろいろな女性と付き合ったが、長く続くことはなかった。石田恵とは結婚も考えていたが、仕事に追われてちっとも自分と向き合おうとしない佐藤誠に彼女のほうから愛想をつかした。
クラブでウェイトレスをしていたスーちゃんとはうまくいきそうだった。しかし彼女はクラブのオーナーにアパートを借りてもらい、生活の面倒を見てもらう代わりにそこで夜の男性客を取っていた。ある日、雇い主が逮捕されると、彼女とも連絡が取れなくなってしまった。
やはり一番佐藤誠が思い出すのはかおりのことだった。かおりとは文通で知り合い、音楽の趣味もよく合った。彼女は自分の小説家の夢を後押ししてくれた。君は面白いから大丈夫だよ、と言ってくれた。その言葉佐藤誠には忘れられなかった。
しかし佐藤誠は小説を書くこともなく、それからも刹那的に生きてはなんとなく時間を過ごし、あっという間に46歳になっていたのだった。
ボクたちはみんな大人になれなかったのキャスト
- 森山未來
- 伊藤沙莉
- 東出昌大
- SUMIRE
- 篠原篤
- 片山萌美
- 篠原悠伸
- 岡山天音
ボクたちはみんな大人になれなかったの感想と評価
森義仁監督の長編デビュー作にして同名小説の実写化です。
中年の男の恋愛遍歴を回想シーンで悲しげに振り返る青春ドラマで、途中だるさと甘ったるさはあるものの最後まで見れるクオリティーに仕上がっています。
物語は、46歳の独身男がかつての恋人たちとの思い出をエモく振り返る、というもので、文学的な雰囲気がプンプンします。系統でいうと「火花」や「劇場」といった作品と似たものがありますね。
東京の生活、そこで何者かになろうとする若者、普通の生き方はしたくないと抗いつつそれが何か分からないでもがく様子など、日本の若者を上手く描いていて、邦画には珍しくリアリティーがあって、キャストの自然な演技がそれを後押しています。
映像が綺麗で、東京の映し方はセンスを感じますね。過去の見せ方もポケベル、ビデオテープ、カセットテープ、ワープロ、MDプレーヤー、電話ボックスなど当時を思い起こすアイテムを上手くつかっていて、昭和や平成の再現の仕方がさらっとしているのがいいです。ネットフリックスだけに製作費もしっかりかけているのが分かるし、邦画にしては全体的なクオリティーが高かったです。
一方、現在から過去を振り返って見せていく中で過去の順番まで時系列をバラバラにして入れ替えた意図はあまり見えませんでした。最近、こういうストーリー構成の作品増えましたよね。いっそのこと時系列とは真逆に進んで、出会いのところで終わるのでもよかったんじゃないかなぁ。
あの構成にしたせいで尺が長くなった感じがするし、上映時間は2時間ほどだけどそれ以上長尺なような感覚を覚えました。かおりのパートはもうちょっとカットできましたね。
男性目線の物語ですが、かなり女性的な感じがして要所要所に村上春樹的なものを感じます。ほんと日本人って女々しい男の話が好きですよね。青春ドラマにはダメ男じゃないといけないのかなぁ。
主人公が煮え切らない性格なのはもちろんのこと、ちょくちょくセンチメンタルかつ詩的なこと、あるいは奇をてらったことを言う女性キャラが登場してくるのが若干うざいです。
「私、絶望している人を見抜くのが得意なの」
これは日本語のセリフとしては許容範囲ギリギリのセリフじゃないかな。ただ、そういうリスキーなセリフを「辻仁成あたりが言いそう」などと別の人物が突っ込むことで、上手くフォローしているのが救いでしたね。
そのセリフを言った当の本人スーちゃんのパートが恋愛劇の中でも一番いい出来に仕上がっていたかと思います。二人のアプローチの仕方も自然だし、男がだらしないせいで逆にスーちゃんのほうが自分からハグ、キスしていましたね。
ただ、夜遅くに自分の家に男を連れてきておいて、「今から仕事が入ったから帰って」はないよなぁ。それも仕事が男性客相手の夜の仕事だったら尚更でしょ。その可能性があるなら家じゃなくて別の場所にしようよって。
あの男もよくスーちゃんが客を相手にしている最中、アパートの前の公園で待ちましたね。惨めじゃなかったのかなぁ。スーちゃんは待っててくれたことに嬉しそうにしてたけど、あんなにいい感じになっても音信不通になっちゃうってひどいですねぇ。逮捕されて連絡が取れなかったのか、それとも姿をくらましたんでしょうか。
僕だったらかおりじゃなくて、むしろスーちゃんの思い出のほうに執着するかなぁ。ああいう突然消えるみたいな人って何があったのか単純に気になりますよね。拉致されたんじゃないかと心配になるし、無事を確認する意味でも行方が心配になります。女性はああいう消え方しちゃだめですよ、絶対。
クライマックスは森山未來演じる主人公と伊藤沙莉扮するかおりのラブシーンでしょう。付き合い始めた若者の男女が初めてやっと結ばれたのを初々しく表現したロマンチックなシーンになっていました。伊藤沙莉はこのシーンのために脱いでるし、頑張りましたね。「フツー」を否定するインド好きでスピリチュアルな自称ブスな女の子というなかなか面倒くさいキャラを見事に演じ切ったんではないでしょうか。
あと、東京タワーを目の前にイチャイチャしていた女の子はなんで途中でトーンダウンしてイチャイチャするのをやめたんですか? 期待させておいてフェードアウトするのやめてもらえないでしょうか。
コメント
主人公と全く同じ年齢なので、遡るごとに出てくる小物や音楽、カルチャーが懐かしすぎて、当時の事を思い出し切なくもなりました。
あの頃、かおりの様なフツーを嫌う女に憧れましたw今となってはフツーが一番手に入れるのが難しくフツーが一番素晴らしいとすら思いますがw
そうなんです!私も邦画の気取ったセリフを言わせるの大嫌いですw
ああいうのを聞くと鳥肌が立ちますw
あんな事言う奴出会ったことがないw
この作品はさほどそれがなかったのでウゲーとならずに見れました。
気取ったセリフをユーモアでカバーして上手く体裁を保っていた感がありましたね。