いい話だし、感動するちゃあするけど、特別なものが何もない大変地味な家族ドラマ。早い話が売れない映画です。50点
アワー・フレンドのあらすじ
マシューは妻のニコルと二人の娘と幸せな生活を送っていた。マシューは地元の小さな新聞社のしがないジャーナリストだったが、彼の記事を読んだ大手新聞社が声がかかり出世し、世界各地の戦場を飛び回るようになった。
ところがある日、ニコルが末期がんを患い、生活が一転する。マシューは長い間留守がちだった家に戻り、ニコルの看病をすることに。
しかしマシューだけではどうにもならず、親友のディンにも助けを求めた。ディンはマシューのみならず、ニコルとも仲が良かったため、仕事を休んで家族のサポートするようになった。
その一方でディンはマシューやニコルと付きっきりになったせいで恋人と別れるはめになり、自分自身の生活が犠牲になっていくのだった。
アワー・フレンドのキャスト
- ジェイソン・シーゲル
- ケイシー・アフレック
- ダコタ・ジョンソン
- ジェイク・オーウェン
- グウェンドリン・クリスティー
- チェリー・ジョーンズ
アワー・フレンドの感想と評価
ガブリエラ・カウパースウェイト監督による、実話ベースの闘病ドラマ。雑誌『エスクァイア』の記事『The Friend: Love Is Not a Big Enough Word』を基にした高い評価を得ている割には興行的に失敗した作品です。
自分の妻が癌にかかってから死ぬまで親友が住み込みで看病を手伝ってくれた、という嘘のような本当の話で題材的には良さげだし、演技もストーリーも悪くないです。
じゃあなんでコケたのかというと、おそらくどこかで聞いたことのある平凡な話になってしまったからじゃないでしょうか。
本来ならメインのフォーカスは自分の生活を犠牲にしてまで友人を最期まで看取った心優しいディンになるべき話なんですが、ディンを脇役扱いにし、夫と妻の物語にしたのが失敗の要因の一つでしょうね。だから見たこと聞いたことあるような話に感じるんですよ。
一方でディンのボランティア精神は称賛に値するし、いい人すぎてなんであそこまでするんだろうという疑問すら湧いてきます。
ちなみにこちらが実際のディンとマシュー、そしてニコルの三人です。
三人の友情は美しい友情には違いないです。でも夫の手に負えないなら本来は夫やニコルの両親、そうがダメならプロにお願いするべき問題ですよね。それなのになぜか友達に看病を頼んじゃう、あるいはそれをしてもらうことを良しとするあの夫婦の感覚は僕には理解できなかったです。
家族よりも友達のほうが分かり合えることもあるんだろうけど、それにしても友達に重病患者のケアをさせるって重荷すぎませんかね。そのために仕事も辞めて、恋人と別れてまでってよっぽどのことですね。
ディンはM気があるのか、マシューやニコルにひどいことを言われても決して「ふざけんな!」って言って出て行かないんですよ。とにかく打たれ強い。もしかすると友情うんぬんよりもニコルに心底惚れていたのかなという気もしました。少しでも彼女の近くにいたいっていうのが本音だったらまた話は変わってきますよね。
もしそういう複雑な三角関係があの三人の間に存在するのだったら、もっと面白かったかもしれません。マシューが留守にしている間にディンとニコルがいけないことをしたりっていうダークストーリーを期待してしまう自分もいました。
マシューも出張中、綺麗な女性から誘われてたのにエレベーターで悩みに悩んであと一歩のところで踏みとどまりましたね。あのとき浮気しておけば妻とイーブンになってたのにね。
いずれにしろ自分の愛情を誰に向けていいのか分からなくなった三人が三角関係になりつつ、お互いの気持ちを尊重し、一緒に暮らし、最後まで添い遂げるというプロットでもよかったかもしれませんね。
ディン、マシュー、ニコルの三人がそれぞれ気分屋で、なにがしたいのか分からないときも多々ありました。そういうときはいずれも不機嫌になったり、殻に閉じ込んたりして、子供っぽい部分も見え隠れします。あれだけ衝突しても、苦しんでも、それでも離れないんだから、やっぱりすごいですけどね。
若くしてパートナーが重い病にかかり、小さな子供を抱えたまま死んでいく、という悲しい話なので、当然涙を誘うシーンはいくつかありました。その辺は子持ちの視聴者、既婚者の視聴者には刺さるでしょうね。
ただし、それを含めても平凡な映画の域を越えないんですよ。つまらない映画じゃないんですよ。ジェイソン・シーゲル、ケイシー・アフレック、ダコタ・ジョンソンの演技もいいし、子役たちも上手いです。それなのにヒットしなかったし、ヒットしなかったことに妙に納得してしまうんですよね。
もう一つの問題は時系列をごちゃごちゃにしたストーリー構成でしょう。回想するにしても行ったり来たり、進んだり戻ったりみたいなのを繰り返すからいつの頃の話がごちゃごちゃになっていましたね。それも時系列の説明の仕方が「診断を受けて2年後」とか、「診断を受ける1年前」とか、そもそもいつ診断を受けたんだよって突っ込みたくなる表記のし方をしてるんですよね。構成はかなり下手でした。
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