リチャード・プレス監督によるおじいちゃんカメラマンに失礼なインタビューをするド記録映画。退屈です。33点(100点満点)
ビル・カニンガム&ニューヨークのあらすじ
1929年生まれのビル・カニンガムは、ハーバード大学を中退してニューヨークに移り住み、広告業界に足を踏み入れる。
その後、帽子のブランドを立ち上げ るものの一時兵役に就き、除隊後は再びニューヨークでファッション関連の記事を執筆するようになる。やがてカメラ片手に自転車で街に出て、精力的にスト リート・ファッションの撮影を始める。
シネマトゥデイより
ビル・カニンガム&ニューヨークの感想
ニューヨークで活動するおじいちゃん写真家についてのドキュメンタリー。ビル・カニンガムという人物を知らない人からしたら、ただ見知らぬおじいちゃんの後を追っているプライベートフィルムでしかない代物です。
ビル本人は確かに陽気で、フレンドリーで、愉快で、見ていて気持ちのいい人物ですが、それだけでドキュメンタリーにされてもなあ、という内容ですね。
これを日本で上映するのは、いわば東京の浅草で毎日写真を撮り歩いては、朝日新聞に掲載しているお婆ちゃん写真家のドキュメンタリー映画をロシアで上映するようなものです。
ある人物、またはグループについてのドキュメンタリー映画は、その人物、グループを知っているかどうかによって明暗が分かれてしまう場合があります。もし知らない人が見ても楽しめる映画ならいい映画、その逆なら駄作ということが言えるでしょう。
「シュガーマン 奇跡に愛された男」が前者だとすればこの映画は完全に後者です。そしておじいちゃんに焦点を当てた、というのとその焦点の当て方がいけません。
この映画の演出はキュートな子供や小動物を扱う映画とタイプ的に似ています。この手の監督は子供=かわいい、というステレオタイプの式を出してきます。
この映画の場合は、おじいちゃん=コミカル、という式で支配されています。もっとおじいちゃんのわがままで、理不尽で、短気なところを写さないと。
終盤にインタビューアーが仕事一筋で過ごしてきた一人身のビルにこんな質問をしていました。
「答えたくなかったら答えなくていいんですけど、今まであなたは恋愛をしたことがあるんですか?」
すると、ビルは「それってゲイ(同性愛)かどうかが知りたいのかい?」と照れ笑いをしながら「ノー、恋愛はしたことがない。ずっと服にしか興味がなかったんだ」と答えました。
すると、インタビューアーは続いてこう聞きました。
「もう一度言いますが答えたくなかったら答えなくていいですからね。あなたは毎週日曜日に教会に通っているそうですが、宗教はあなたの人生にとってそれだけ重要な要素なんでしょうか」
すると、今まで終始陽気で、冗談ばかりいっていたビルの顔が曇り、カメラから顔をそむけるようにして俯いてしまいます。
ビルは目をウルウルさせ、声のトーンを変えます。この映画が本当にビル・カニンガムの素顔を捉えたのはあの瞬間だけでした。時間にしてわずか30秒。その30秒のためにあなたはこの映画を見ますか?
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