特に笑えもしなければ、悲惨な最後にもならない、中途半端なアル中ドラマ。なにより現実味がないです。33点
アナザーラウンドのあらすじ
高校教師のマーティンは同僚のトミー、ピーター、ニコラたちと食事をしていると、突然虚無感に襲われて泣き出してしまう。最近、妻とはほとんど会話がなく、授業にも身が入らなかった。昔は希望やエネルギーに満ち溢れていたのに今ではすっかりそれがなくなってしまった。
他の三人も同様に人生に物足りなさを感じていた。そんなとき、4人のうちの一人が「血中アルコール濃度を一定の度合い保つと仕事の効率が良くなり創造力がみなぎる」という哲学者の論理を持ち出し、実験してみようと提案する。
試しにマーティンはトイレでお酒を飲んで授業を教えてみた。するといつもより上機嫌で自信を持って教えることができた。生徒たちの反響も良かった。
トミー、ピーター、ニコラも同じように手ごたえを感じていた。最初は血中アルコール濃度を一定の度合いに保とうと約束していたが、徐々に量を増やしていくことにした。やがて気が付くと、すっかり中毒になった4人はもはや酒なしでは過ごせなくなってしまうのだった。
アナザーラウンドのキャスト
- マッツ・ミケルセン
- トマス・ボー・ラーセン
- マグナス・ミラン
- ラース・ランゼ
- マリア・ボネヴィー
アナザーラウンドの感想と評価
「偽りなき者」のトマス・ヴィンターベア監督、マッツ・ミケルセン主演による、アル中の教師たちの愚行を描いた人間ドラマ。2021年アカデミー賞国際長編映画受賞作品です。
高校の先生たちがアルコールを飲んでハイな状態で授業をしたらどうなるのか、というのを実験的にやってみたら、最初は上手くいったかのように見えて、案の定後々トラブルが起こる、という自業自得物語です。
典型的な欧州映画のスローなテンポで話が進み、当然の成り行きっぽいエンディングで締めくくる捻りのない作品です。
いい歳をしたおっさん教師たちが悪ノリで酒を飲み始め、アルコールに溺れていく姿を中心に描いていてアルコールの効用と副作用の両面をストーリーと共に見せていきます。
一応コメディドラマという括りなんだそうですが、いわゆるふざけたコメディとは違います。登場人物たちは至ってシリアスで、ユーモアに溢れているわけではありません。
また、雰囲気が芸術路線の欧州映画そのものなので、余計に「さあ笑おう」という態度で見ることができず、コメディとしても、人間ドラマとしてもいまいち楽しめませんでした。
「酒を飲む」ことをテーマにするならせめてお酒が飲みたくなるような演出があればよかったんですけどね。いわば「スモーク」のようにタバコを吸わない人まで、吸いたくなるような見せ方ができたらもっと見ごたえがあったでしょう。
ストーリー的には予想通りすぎます。酒を飲む>自信が湧いて調子が良くなったと錯覚する>もっと飲む>破滅する、という先が読める起承転結になっています。
勤務中に酒を飲んだらどうなるのか、なんていい歳した大人なら誰でも分かるし、なにより子供たちの教育に携わっている教員たちが軽いノリでやるようなことじゃないんですよ。
なにより酒を飲み始めたら、物事が全て上手く行く、というストーリーの掴みの部分が嘘っぽいです。退屈だった授業が楽しくなり、生徒たちからは慕われ、家族とは旅行に行って関係を深め、ぎくしゃくしていた奥さんとは久しぶりに愛し合う、みたいな酒の効果をおおげさに語りすぎていて、そんなアホな、でしたね。魔法の薬かよって。
そういう意味では演技は悪くないんだけど、リアリティーはあまりなかったです。登場人物の精神年齢を下げすぎましたね。ノルウェーの大人たち、あんなに幼稚で、間抜けじゃないでしょ。
おそらく酔っぱらった男たちの無様な姿を最大のオチにしようと思ったんじゃないでしょうか。確かにちょっとコントっぽく映っていて滑稽だったんだけど、笑いとしては低レベルですね。
家族との関係性の描きかたも甘っちょろいなあ、という気がしました。いい歳してお酒でやらかした男たちにもっと制裁を加えてもらいたかったです。家族とは絶縁し、職は失い、家を追い出され路頭に迷ってちょうどいいでしょ。
酒でトラブルを起こす人間に寛容な人はまだ優しい目で見れるのかもしれないけど、僕は無理でしたね。基本、酒に飲まれて人に迷惑かける奴が嫌いなんで、登場人物になんの共感も感情移入もできませんでした。
酩酊し、息子にかつがれる親ってなんだよって話じゃないですか。僕もトイレでゲーゲー吐いてる自分の母親をかついだりしてたので、嫌な記憶がよみがえりました。
教師の中には自分はおろか生徒にまでテスト前に酒を飲ませてる奴いたからね。「緊張ほぐれるから飲みな」とか言って。あんな奴いる?
本作にアル中の代表格としてエリツィン大統領の映像が出てくるんだけど、歴代のアル中大統領を挙げてアル中でも大統領になれるとか、ヘミングウェイを例に出して飲んだくれでもノーベル文学賞が獲れるとか言って酒飲みを正当化するくだりは特にありえなかったです。男たち全員クズ教師じゃないですか。
コメント
表面的な評価で参考にもならなかった
この方は映画を「観ている」のではなく「見ている」のだと思う
いつも楽しくブログ拝見させて頂いてます。
この作品は公開初日に観に行ったのですが、個人的にはかなり面白い変化球の人生賛美映画だと感じました。
映画男さんの仰る通り、頭の悪い登場人物だらけで酒に飲まれてて不快な部分も多くありましたがだからこそラストが印象的でした。
バカで最低な事をした後に全力で人生そのものを肯定するラストは、捉えようによってはただの逃げなのに何故か底抜けに明るい希望を持ったシーンになっていて不思議な美しさがありました。
もちろん現実世界にこんな人たちがいたらもっと社会的制裁を喰らうべきだとは僕も思いますし、冒頭の学生が飲みまくってふざけているのも現実ならもっと厳しくするべきです。
なのである中年男性が人生を楽しむまでのファンタジーだと思って観たら見応えがあって記憶に残る作品だと感じました。
人生賛美っていう解釈もできるんですね。
アイデアは面白いなと思って見たのですが、お酒が道具として使われた中年モヤモヤ解消映画で、ただただおじさん達が酔ってるシーンを延々見せられただけのように思いました。
すごく長く感じましたね、90分くらいならまだ良かったのに。
いくら法律的にOKとはいえ、学校で生徒に飲ませるのはまずいですよねw
しかも試験合格してるしw
ほんとただの酔っ払い映画でしたね。
この方は映画を「観ている」のではなく「見ている」のだと思う≪
こんな中味の薄い映画をどうすれば鑑賞出来るのかのか教えて欲しい。
アカデミー賞受賞と言うので最後まで観たが時間を返して欲しい迄の駄作であった。
この作品は日常的な飲酒を薦めるものではなく、「飲酒」によって得られたように感じられた日々の高揚感や充実感の本質は何であったか?ということを視聴者に問いかけているものだと感じました。むしろ飲酒に対する危険性は随所で強調されていたと思います。
恐れながら、この記事の投稿者は飲酒に対して嫌悪感を持っているのではないでしょうか。笑
酒豪です