子供を失くした母親目線でつづられる、苦しくて悲しいストーリー。リアルすぎて流産、死産を経験している方が見たら耐えられないかもしれません。68点
私というパズルのあらすじ
マーサとショーンは初めての赤ん坊の誕生に期待と不安で一杯だった。ある日、ついにその日がやってきた。マーサがついに破水し、陣痛が始まったのだ。
マーサは助産師の協力のもと、自宅出産を強く望んだ。ところが出産日になると、いつも担当してくれているバーバラが来られなくなり、代わりにエヴァがやって来た。信頼できるバーバラが良かったが、そんなことも言っていられなかった。
出産中、エヴァは何度か赤ん坊の心臓の音を確認した。しかしその音が次第に小さくなっていることを気にかけた。もしかすると、病院に行かなければならなくなるかもしれない。念のため救急車を呼ぶようにエヴァはショーンに言う。
マーサはこのまま家で産みたいと言って、結局そのままベッドの上で赤ん坊を産むことに成功した。ところがその直後、赤ん坊の顔色が見る見る変わっていって、やがて呼吸が止まってしまう。あろうことかそのまま赤ん坊は息を引き取ってしまった。
絶望に打ちひしがれたマーサとショーンは一体なぜ自分の娘が死ななければならなかったのか答えを探していた。助産師のエヴァはこの一件で起訴されることになった。世論も夫婦に同情していた。
しかしマーサは自分の中でなにか腑に落ちなかった。どうすればこのトラウマを乗り越えられるのか分からず、ショーンとも母親とも激しく衝突していく。
私というパズルのキャスト
- ヴァネッサ・カービー
- シャイア・ラブーフ
- エレン・バースティン
- モリー・パーカー
- サラ・スヌーク
私というパズルの感想と評価
コルネル・ムンドルッツォ監督による、赤ん坊を出産直後に失くした女性の再起の物語。重くて、ヘビーである一方で、リアルかつ見ごたえのある大人の人間ドラマです。
30分にも及ぶ出産シーンから物語が本題に入っていき、死産>絶望>自暴自棄>再生、といったストーリー構成になっており、最後は前向きに締めくくっているトラウマ克服物語です。
ストーリー展開だけ見ると、ワンパターンですらありますが、出演者の迫真の演技や細かいエピソードの積み重ねもあって良質な作品に仕上がっています。
出産のくだりはワンカットで撮ったかのような30分にも及ぶ長回しのシーンになっており、重要な場面ではあるものの、いくらなんでも長いなあ、と正直思ってしまいました。
ところが赤ん坊が亡くなったことでその長いシーンが前振りだったことに気づかされ、また登場人物の一つ一つのセリフや行動が後々裁判で取り上げられていくのを見て、ああ、あの一連のシーンには意味があったんだ、と納得します。この辺がただ無駄なシーンをダラダラと見せる邦画とは違うところなんですよね。
最後まで見ると、むしろあの30分の出産シーンに登場人物の明暗を分ける全てが詰まっていたとも言え、そう考えると、とんでもない計算のもとに撮られているなあ、と感心してしまいました。
子供を失くしてからマーサとショーンの関係性が変わっていく様子もリアルでした。周りが変に気を使ってくることに対してもストレスを感じるマーサ。
会社で盛大にベビーシャワーをしてお祝いしたというのもあって、マーサが仕事に復帰したときの同僚たちの狼狽ぶりもひどいものでした。マーサからしたら気を使われるのもストレスなら、自分を見ると、まるで恐ろしい人を見るかのようにうろたえる人々のリアクションもうざいんだろうなぁ。
だけど、周囲の人たちからしても実際なんて声をかけていいのか分からないですよね。僕も実際、ブラジルの会社で働いていたときに同僚の女の子が出産前にカンパを集めてお祝いし、その後流産してしまう悲劇に遭遇したことがあります。
それもなぜか秘書がカンパで集めたお金を返しに来たんですよ。残念ながら生まれなかったのでお金を返しますって。さすがに、ええええ、って思いましたね。使ってくれたらいいのにって。
同僚の子とはそんなに仲良くもなかったので、僕もあのとき特別声をかけることはできませんでしたが、彼女が復帰してきたときどんな態度をしていたのか思い出せません。もしかしたらどうしていいか分からず、目をそらしたりしていたかもしれません。
普通にしてればいいんだろうけど、あの状況での普通ってなんだよって話だし、むしろ答えが知りたいです。本人からしたら同情されるのも面倒だろうしね。
マーサはそういった煩わしい出来事をできるだけ、冷静に心の中で処理しようとしていましたね。感情的になっていたのはむしろ夫のショーンや母親のほうだったのが印象的でした。
母親がまた全然人の気持ちが分からないキャラで、生きて来た時代も違うし、年齢もかけ離れているためか、娘に自分の考えを押し付ける傾向があってうざかったです。
さらにはショーンにまで、私はあなたが嫌いだから、このお金を持ってとっととマーサの前から消えてくれとか、とんでもないこと言ってましたね。
ああなったとき、やはり夫婦の関係は修復不可能なんでしょうか。ショーンは案の定浮気に走り、マーサも同僚とキスしたりして、互いに心が離れていくのが分かりました。一緒に乗り越えられなのが悲しいですねぇ。
悲しいけど、「僕たちは夫婦なんだから一緒に乗り越えようよ」みたいな嘘くさい話で終わらないのがこの映画の良さです。
そういう意味ではショーンが浮気した相手が親戚のスザンヌというのも最高でした。スザンヌがまた色っぽいんだわ。画面に登場した瞬間フェロモンがプンプンしてきて、これはなにかやらかすぞって感じましたもん。え、何が色っぽいか分からない? それが分からない人とはもう会話できないなぁ。
それにしてもアメリカでは誰にもどうすることもできない、あんな不運や悲劇でも誰かに責任を取らせようと訴訟になるんですね。あんな環境で助産師なんか誰がなりたがるんだろう。
マーサも可哀想だったけど、エヴァからしても災難すぎますよね。だって臨時で良かれと思って出産を助けに来たら、刑務所に行けって言われるんでしょ。あんまりだよ。
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