核施設の情報を掴むために北朝鮮に潜り込んでいった韓国人スパイを描くハラハラドキドキのストーリー。大人向けの作品です。68点
工作・黒金星と呼ばれた男のあらすじ
1992年、北朝鮮の核兵器開発の噂が流れ、朝鮮半島はただならぬ空気に包まれていた。韓国にとっては北朝鮮が核を保有することはそれは国家存続の危機でもあり、なんとしても回避したかった。
そこで韓国の諜報機関は元情報部隊の将校だったパク・ソギョンを工作員にして、北朝鮮に送り込むことにする。そのためにパク・ソギョンは事業家に扮して綿密なカバーストーリーを準備する。
やがてパク・ソギョンは北京に拠点を移し、北朝鮮の対外交渉の責任者であるリ・ミョンウンと知り合う。あくまでもビジネスマンとして交渉の席に着いたパク・ソギョンはリ・ミョンウンの信頼を勝ち取ったことで南北の架け橋となる巨大観光事業を手掛けていくことになる。しかし同時にそれはスパイとして多大なリスクを負うことでもあった。
工作・黒金星と呼ばれた男のキャスト
- ファン・ジョンミン
- イ・ソンミン
- チョ・ジヌン
- チュ・ジフン
- チョン・ソリ
- キム・ウンス
工作・黒金星と呼ばれた男の感想と評価
ユン・ジョンビン監督による、朝鮮半島をめぐるスパイドラマ。実在したスパイ、ブラック・ヴィーナスの話からインスパイアされた、北朝鮮に潜入した男の物語です。
政治色の強い、本格派のスパイ映画で、ド派手なドンパチアクションとは無縁なのが特徴で、「ミッション・インポッシブル」みたいなハリウッドスパイ映画を期待している人には向いていないです。一方で「ミュンヘン」のような実話ベースのスパイものが好きな人にはおすすめできますね。
一方で「実話」と呼ぶにはフィクションが強めで、大分美化された人間ドラマになっている印象を受けました。
北朝鮮と韓国を舞台にしたスパイ映画って多くの場合、最終的には南北友情ドラマに成り下がりがちですよね。国家としては敵同士だけど、個人間では心はつながっているよ、みたいなオチが多くないですか?
それがもっとひどくなると、「シュリ」のように恋愛し出したりするんだけど、さすがに本作はそこまで安っぽい演出にはなっていなかったです。
おそらく友情ものになりがちなのは、韓国人の国民の願望も織り込んでいるのでしょう。北と南の人々がこうであったらいいな、みたいな理想がかなり反映されている気がします。
とはいえ史実も交えながらストーリーを展開させているのでリアリティーは十分だし、北朝鮮の街並みから金正日役の俳優の役作りまで再現度は高いです。
金正日の最初の登場シーンなんて迫力満点だったし、韓国のスパイがついに行きつくところまで行ってしまった感があって、後に引けなくなる様子が伝わってきます。
なんで金正日はこんなところに犬を連れてくるんだよって突っこみたくなったけど、ペット好きで有名だったから、ありっちゃありそうな場面でしたね。
主役のファン・ジョンミンと北朝鮮人の相棒イ・ソンミンの演技は見事だったし、全体のパフォーマンスのレベルが高いので、物語にも入っていきやすかったです。
韓国の大統領選挙の裏で、北と南が裏取引をして意図的に軍事衝突を起こしたり、というのはさもありがちな話だけど、なかなか衝撃ですね。ああやって国民感情を動かして、大統領選とかを誘導していくんですね。
やや物足りなかったのは、北朝鮮の残虐性や社会問題にはあまり触れていなかったところです。途中、田舎町で死体の山があって、子供たちがそこで食べ物を探しているくだりは北朝鮮の飢餓に触れていたものの、それも一瞬だったし、裏切り行為がバレた北朝鮮の高官たちがあの後どうなっていったのかも描かれていません。
どこか北朝鮮を「悪」として描こうとしてるのをためらっているかのような、遠慮してるかのような気配すらあり、それはおそらくラストの友情ドラマを盛り上げるための戦略だったのでしょう。完全に極悪人として北朝鮮人を描いてしまったら、友情もなにも美しく映らないからね。
ただ、僕的には最後はスパイの素顔がバレた時点で、友情うんぬんは捨てて、潔く相手を抹殺してもらいたかったですね。その後で涙を流せばいいじゃないですか。任務だからやむを得なく殺したんだよっていうほうが、ぐっとくると思うんだけどなぁ。
それに北朝鮮であんなヘマしたら間違いなくリ・ミョンウンも処刑されるよね。最後の部分だけ、あれ?って思っちゃいました。
コメント
Amazon Primeで100円レンタルだったので見ましたが、とても良くできてると思いました。
あんまりスパイもの見ないんですが、脱北物の本が好きでよく読んでたので、両国の体制がよく登場人物の行動原理に反映できてるなぁと感心しました。
グッバイレーニンがドイツ人に刺さったように、韓国人に刺さる映画なんですかね。
これ面白いですよね。韓国人にはぶっ刺さる映画じゃないでしょうか。