ジャズなんてほとんど関係ないじゃんって突っこみたくなるアニメ映画。これを見ればピクサーの迷走ぶりが分かります。30点
ソウルフル・ワールドのあらすじ
中学つっ校の音楽教師ジョー・ガードナーは教鞭を執る傍らジャズミュージシャンとしてのキャリアを諦めきれないでいた。そんなある日、憧れのジャズミュージシャン、ドロシー・ウィリアムズと共演する千載一遇のチャンスを得る。
ところが大チャンスを得たことに浮かれて道を歩いていると、不注意のあまりマンホールに落ちてしまう。ジョー・ガードナーが目を覚ますと、そこは死後の魂とこれから生まれようとしている魂が行き交う世界だった。
ジョー・ガードナーは命を落としたにも関わらず、死を受け入れられず、「あっちの世界」には行かず、「生まれる前の世界」へと迷い込んでいく。
そこでジョー・ガードナーは人間の世界に無関心な魂の22番と出会う。皮肉屋の22番は生まれることに興味を持っていなかった。そのため長い間「生まれる前の世界」をさまよっていた。
22番が地上に行くには人生の目的となるスパークを見つける必要があった。しかしそもそも地上で生きていきたくない22番は逆にジョー・ガードナーが地上に戻れるようにと手助けをしてあげることに。
こうしてジョー・ガードナーと22番は地上に戻る方法を探す旅に出る。
ソウルフル・ワールドのキャスト
- ジェイミー・フォックス
- ティナ・フェイ
- グラハム・ノートン
- レイチェル・ハウス
- アリシー・ブラガ
ソウルフル・ワールドの感想と評価
「モンスターズ・インク」、「インサイド・ヘッド」、「カールじいさんの空飛ぶ家」などで知られるピート・ドクター監督による魂の世界を描いたシュールで哲学的なファンタジーアニメーション。「2分の1の魔法」に続くピクサー作品です。
やたらと海外では評価が高かったので、期待しちゃったんですが、結論からいうと面白いのは最初の15分ぐらいで、その後はどんどんつまらなくなっていきます。
映像は綺麗だけど様々な要素やメッセージを詰め込みすぎたせいでストーリーがごちゃごちゃで、大人も子供も楽しめる内容ではないです。
登場人物が地上とソウルの世界を行き来するのはまだいいでしょう。ただ、なぜそれにさらにジョー・ガードナーと22番をスイッチさせる必要があったのか理解に苦しみます。そのせいで「君の名は。」と「インサイド・ヘッド」と「ゴースト・ニューヨークの幻」をごちゃ混ぜにしたような世界観に成り下がっていました。
ソウルの世界ではほとんどのキャラクターが同じ蛍光色のデザインになっているため、それぞれの個性が死んでいますね。絵は綺麗なんだけど、キャラクターの個性が死んじゃうと、感情移入もできないし、可愛さも半減します。
ソウルの世界で有名人が出たきたり、ちょこちょこ笑える箇所もあるにはあるんだけど、延々と主人公が生きる目的とは何かみたいなことを自問自答してるのが若干寒いです。
夢を追いかけるべきか。自分の本当に好きなことを探すべきか。安定した仕事をするべきか。そもそも生きる喜びとはなんなのか、みたいなことをいい歳した大の大人がうじうじ悩んでいるのが進路相談に来た高校生みたいだし、哲学的になりすぎたせいで、子供の視聴者を排除しちゃってるふしがありますね。
最後はやっと地上で生きていく決心がついた魂の22番がもう地上には戻ることの許されないジョー・ガードナーとお別れして感動を演出しようとしていました。自分の生と死を受け入れた二人のキャラクターがコントラストになっていてなかなかうまい終わり方だと思っていたら、あろうことかソウルの世界のお偉いさんがジョー・ガードナーに特別に地上に戻っていいよとか言い出すんですよ。
あいつが生き返ったら全部ぶち壊しじゃん。22番との別れも意味がなかったことになるし、そもそも生と死というテーマを真っ向から否定しちゃってるよね。
人生に目的なんていらないからとにかく毎秒を大事に生きるんだみたいな結論もベタですね。お前の情熱だったジャズはどうなったんだよ。なにを有名ミュージシャンと共演したら人生が変わると思ってたけど、実際は変わらなかっただよ。素直に喜べばいいじゃん。
そうじゃなしに人生の本当の意味はなにかとかメソメソ考えるとから憂鬱になるんでしょ。もっとアホになれよ。
なんだかんだいって本当はそんなにジャズが好きじゃなかっただけでしょ。ミューシャンのくせに常に理論的だし、全然感覚的に生きてないんだよな。そもそもアーティスト気質じゃないっていうね。ソウルが足りねえんだよ、ソウルがよ。
コメント
「ピクサー」も「ジブリ」もそうなんだけれど、良かった頃の作品は「エンタメ性」を大前提に「メッセージ性」はトッピングみたいな作りだった気がします。
その順番が逆になると、小学校の道徳の教科書みたいな「クソ説教臭い」駄作になるんじゃないかと。
説教でしたね。
自分も今日初めて観たのですが、インサイドヘッドの監督だというのがすぐに分かるような設定の作りでした。ただ、インサイドヘッドのような単純化した分かりやすい物語ではなく、ゼロの状態で観てると言ってることがすぐ理解できず置いていかれました。それにせっかく主人公がジャズ好きなのに、その良さとか感動とかがあまり伝わってこず勿体無い。ピクサー作品とはいえディズニーと音楽の関係を知ってるならもっと主人公の音楽への熱量を感じたかったです。22番の転生先自分は知りたかったし、ひとまずのやりたかったことを終えた主人公がまた生き返る必要あるかな?って。もっとやりようはあったんじゃないかと、勿体無いところが多い作品でした。せっかく設定は作りこんでて良いのに、活かしきれてない。もっと魅力的なキャラもほしいし。好きになれる、応援したくなるキャラがいないのはアニメでは結構致命的なのでは。
おっしゃる通りで、ジャズに対する主人公の思いの描き方が甘かったですよね。言われても見れば22番が誰として生まれるのかにも触れていませんでしたね。穴だらけでした。
芥川龍之介の「河童」を児童向けにした様な映画。