スパイ映画ながら派手な演出もアクションもなく、それでいてしっかりとワンシーンをワンシーンを作り込んでいるイギリス映画。質が高いです。67点(100点満点)
シャドー・ダンサーのあらすじ
1993年、IRA(アイルランド共和国軍)を支持するシングルマザーのコレット(アンドレア・ライズブロー)は、ある爆破未遂事件の容疑で逮捕されてしまう。
そしてMI5(イギリス情報局保安部)の捜査官マック(クライヴ・オーウェン)から、幼い息子と離れて25年も服役するか、IRAの内部情報を渡すかという究極の選択を迫られる。息子との生活を選んだ彼女は、仲間の厳しい追及にさらされていき……。
シネマトゥディより
シャドー・ダンサーの感想
「博士と彼女のセオリー」、「マン・オン・ワイヤー」などで知られるジェームズ・マーシュ監督によるスパイもの。
諜報機関MI5とIRAによる激しい情報合戦はないけれど、少ない登場人物の中で見やすく、スリリングなストーリーに仕上がっています。
主人公のコレットが美人で魅力的でまたそこが物語の重要なポイントになってきます。序盤にコレットとマックが出会ったときから、ああこの二人はできちゃうなぁ、という臭いがプンプンしますが、それもまた物語の重要なポイントになっていました。
コレットはおそらく今年の映画登場人物悪い女ナンバー1でしょう。よく考えると、コレットはテロリストなわけで、劇中ついついそれを忘れてしまい、視聴者が彼女を味方するように、彼女目線でストーリーが展開していきます。悪女なんで彼女に変に感情移入しないことをオススメします。
何が悪いって、コレットがMI5の諜報員マットに不意にキスするところです。あれは反則です。最初はよくもまあそんな状況で恋愛できるなあ、と思いました。
マットも敵であるIRAの女から急に情熱的なキスをされて理性を失っていました。敵のスパイに恋をしてしまうなんて、あまりにも安っぽい話じゃないか、と一度はがっかりしたものです。
しかし最後まで観ると、なるほどあれはあの女の罠だったのか、いやそれともあれはあれで本気だったのか、うーんどっちだろう、と謎が深まるようなエンディングになっていました。
男としてはあのキスは本気であって欲しいという願いがありますね。じゃないと傷つきます。男なら誰しも「あの真剣な顔が本気じゃなかったら、一体俺たちは誰を信じたらいいんだよ」という気持ちになるでしょう。
男をそういう気持ちにする、という意味でもこの映画のコレットの罪の深さは計り知れないです。コレットがシングルマザーという設定はどんぴしゃりですね。きっと元旦那はハートをグシャグシャにされたに違いないです。
さてこの映画のマイナス点は見所がラストに集中しすぎている点ですね。ラスト重視のスパイ映画は、実は誰々がどこどこのスパイだった、というオチぐらいしかなく、それぐらいで驚いてくれるのはリアクションの大きいギャルぐらいです。
中盤からちょくちょくラストへの複線があるので、感のいい人はラストも予想がつきますね。二重スパイの正体とコレットが悪い女だというポイントのほかにも途中、途中でもっとゾクッとするエピソードがあったら最高だったんですが。
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