酒とバスケと家族と男の再起を描いた、ただのスポーツ映画にとどまらない感動作。安っぽいサクセスストーリーになっていないのがいいです。60点
ザ・ウェイバックのあらすじ
ジャック・カニンガムは息子のマイケルを病気で亡くしてから工事現場で仕事をしながら毎晩のように酒に溺れていた。妻とは別れ、1年が経っていた。
ジャックの家族は彼のアルコール依存を心配していたが、注意してもジャックは苛立ちを見せるだけだった。
そんなある日、ジャックのもとに母校のハイスクール、ビショップ・ヘイズからバスケットボールチームのコーチの仕事の依頼が届く。前任のコーチが病気で倒れ、緊急に後任を探す必要があったからだ。
ジャックはかつて母校のスター選手だった。しかし今はとてもバスケに関わる精神状態じゃなかった。断りの電話を入れようとしたジャックだったが、途中で気が変わり、練習に顔を出すことにする。
すると、そこにはとてもやる気のあるように見えない選手たちが10人ほど適当にボールを追いかけていた。かつて強豪校だったビショップ・ヘイズは弱小チームに成り下がっていた。
ジャックはそんなチームを再生すべき、選手たちに檄を飛ばし、基本を叩き込んだ。チームが見る見るうちに成長していく一方でジャックは別れた妻や亡くした息子のことを引きずり、酒を断ち切ることができなかった。
ザ・ウェイバックのキャスト
- ベン・アフレック
- アル・マドリガル
- ミカエラ・ワトキンス
- ジャニナ・ガヴァンカー
ザ・ウェイバックの感想と評価
「ザ・コンサルタント」のギャヴィン・オコナー監督、ベン・アフレック主演による、アル中のバスケットボールコーチを描いた、スポ根と家族を失った男の復活劇をミックスした人間ドラマ。ベタなストーリーですが、終わり方が良く、人間味のある話です。
本作のポイントは、アル中の男を、実際にアル中だったベン・アフレックが演じたことに尽きます。それもまだ治療中だった時にこの映画の撮影に臨んだそうなので、ベン・アフレックも主人公に自分自身をもろに投影できたに違いないです。
ある意味ドラッグで捕まった男が、麻薬中毒者の役を演じるみたいな話ですよね。そういう復帰の仕方があってもいいよね。
主人公のジャックは家族を失っているという設定で、それもまたベン・アフレックの私生活とも被るところがあって、これほど役に適任な俳優はなかなかいないんじゃないでしょうか。
多少選手たちのバックストーリーや家族環境などに触れるものの、やはりコーチであるジャックの転落人生がメインになっていて終始ベン・アフレックの独壇場でしたね。ベン・アフレックのための映画だと言ってもいいんじゃないでしょうか。
最近、俳優としてはぱっとしない作品ばかりに出演していたイメージだったけど、やっと報われましたね。ちなみに僕の好きなベン・アフレック出演の映画は「グッド・ウィル・ハンティング」と「チェイシング・エイミー」です。
かつて花形のバスケットボール選手だった男が、母校のコーチをして、弱小チームを強豪に育てる、というプロットはスポーツドラマとしてはかなりワンパターンです。
それでもスポーツ好きの人なら選手たちが成長していく過程には興奮させられるだろうし、それなりに感動を覚えるでしょう。ベタはベタでもそれを感じさせないものがありました。
話の焦点はチームが勝つか負けるかというだけでなく、チームの再生と、コーチの再起を重ね合わせていて、それも話を面白くしている理由の一つでしょう。もしこれがバスケだけのストーリーで終わっていたら物足りなかっただろうし、終盤には意外な展開も用意してあったし、エンディングのまとめ方もきれいでした。
最愛の息子を亡くした父親の気持ちを思えば、主人公が自暴自棄になり、アルコールに依存していくのも容易に理解できるし、息子を持つお父さんが見たらまず涙せずにはいられないはずです。そしてまたそれをどうやって乗り越えていくのか気になるところでもあります。
もしかしたらアル中の描き方が甘いという意見もあるかもしれません。ジャックはアル中でも決して暴力的にはならないので、他人に迷惑をかける度合いも比較的低く、まだ温かく見ていられるというところもあったんじゃないでしょうか。
それに対してリアリティーがない、本当のアル中はあんなもんじゃない、という声があってもおかしくはないです。
いずれにしても主人公を通じて、様々な感情を呼び起こされる良作だったと思います。なぜか本作は日本では劇場公開されず、直接動画配信になったそうですね。劇場公開してもそこそこ売れたと思うけどなぁ。
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