重度のプロテウス症候群の患者をめぐって善人と悪人の行動が真っ二つに割れる伝記ドラマ。衝撃の実話をもとにした差別映画です。66点
エレファントマンのあらすじ
ロンドン病院の外科医フレデリック・トリーブスはある日、見世物小屋にエレファントマンと呼ばれる奇形の男が出ていることを知る。
見世物小屋は警察のがさ入れによって中止に追い込まれたものの、興味を持ったフレデリック・トリーブスはエレファントマンの世話をしているバイツのところへ直接行き、お金を払って見せてもらうことに。
そこでエレファントマンはバイツから奴隷のような扱いを受けていた。フレデリック・トリーブスはバイツにお金を払い、エレファントマンを検査するために病院に連れて行くように頼んだ。
エレファントマンにはジョン・メリックという名前があった。ジョン・メリックは重度の知的障害があると思われたが、フレデリック・トリーブスがゆっくり話をすると、言葉を理解できることが分かった。そして自分に優しくしてくれるフレデリック・トリーブスに対し、徐々に心を開いていった。
しかし多くの人はジョン・メリックを恐れたり、あるいは好奇心で近づき、彼を見世物にしようとした。そのことが彼を傷つけ、人間不信にさせるのだった。
エレファントマンのキャスト
- ジョン・ハート
- アンソニー・ホプキンス
- アン・バンクロフト
- ジョン・ギールグッド
- フレディ・ジョーンズ
- ウェンディ・ヒラー
エレファントマンの感想と評価
「ストレイト・ストーリー 」、「マルホランド・ドライブ」、「ツイン・ピークス Return」などでお馴染みのデヴィッド・リンチによる実在した人物の半生を描いた人間ドラマ。生まれつき重度の奇形の姿をした主人公の身に起こる悲しく、そして残酷な物語です。
ちなみにこちらがジョセフ・メリック本人で、ほぼほぼ劇中で描かれているジョンと同じですね。
ディスカバリーチャンネルも彼のことを番組にしています。
実在のモデルがいることを僕は知らなかったので、最初はなんであんなメイクにしたのかなぁ、と不思議だったんですが、実は忠実に描いていたんですね。
物語はこんな姿で生まれてきたエレファントマンこと、ジョン・メリックが見世物小屋で奴隷同然の扱いを受けていたところ、医師に救われ、病院の一室で暮らすようになるところから本題に入ります。
最初は看護師たちもジョン・メリックの姿を見るや叫び声を上げてしまうほどで、彼を病院に置いておくことに反対する者も少なくありませんでした。
そんな中、彼を救った医師のフレデリック・トリーブスだけが数少ない理解者で、それまで全く口を聞かなかったジョン・メリックも少しずつ心を開いていきます。
一方で見世物小屋の主人がジョン・メリックを奪い返しに来たり、病院の職員が見世物にしてお金を稼ごうとしたり、ジョン・メリックの周囲はなにかとトラブルが尽きず、一向に彼は落ちついて暮らせそうにありません。
そうして彼に優しくする数少ない人たちと、彼を奇異の目で見ては差別する人たちを対照的に映し出していく、というのがこの映画の見所になっていました。
ジョン・メリックという障害者を通じて人間社会の美しさと醜さの両方を浮き彫りにしていて、これを美しい話ととらえるか、悲しい話ととらえるかも人によって変わってきそうです。
アンソニー・ホプキンス扮する外科医のフレデリック・トリーブスは最初からとにかく優しかったです。今までそんなこと思ったことなかったけど、当時のアンソニー・ホプキンスはなかなかの男前だったんですね。
ジョン・メリックを見たときにフレデリック・トリーブスが涙を流していたのが印象的でした。あれは彼の苦しみや置かれた環境を見て胸が締め付けられたのでしょうか。ジョン・メリックに出会ってからというものフレデリック・トリーブスは常に良き理解者であり、良き友人でしたね。
絶望の中にもああいう人間が少なからず存在することがジョン・メリックにとっては希望の光だったに違いないです。また、ジョン・メリックの妻も、そして友人、知人たちもやはり素敵な人ばかりで、やはりいい人はいい人間に囲まれるんですね。
それに対し、見世物小屋の主人バイツをはじめ、ジョン・メリックを見せるために大勢の酔っぱらいたちを連れて行った病院の従業員の男や、ジョン・メリックを追いかけまわす子供たちなど、ナチュラルな残酷性を持った人たちの姿もまた現実的でした。
自分でももしジョン・メリックのような姿をした人がいたら、追いかけまわすことはしなくてもきっと怖がってしまうと思います。そういう人間の中、あるいは自分の中に潜む差別や偏見をまざまざと見せられたなぁ、という気がしました。究極の差別映画といってもいいかもしれません。
エレファントマンは例えばほかの人種やほかの病気にも置き換えることができますよね。日本の村社会における外国人として考えてもいいし、先天的な病気じゃなくてコロナウイルスでも話が成り立つでしょう。それだけ普遍的な話だし、現代社会にも通じるところはたくさんありました。
一方で僕にとってはとにかくポジティブなエピソードよりもネガティブなストーリーのほうが強烈だったので、何度も見たくなるタイプの作品ではないです。
この映画を名作に挙げる人も結構いるけど、名作映画というより、教育に良い映画という感じがします。家で親が子供たちに、または学校で教師が生徒たちに見せるべきですね。
コメント
いつも楽しく拝見させていただいてます。
差別に対するお考えが興味深い感想だったと思います。
俺がこの映画を観た時の印象は少し違っていて、メリックに優しく接する人々に
逆に違和感を感じました。(実際にそういう人もいたんでしょうけど)
特にアン・バンクロフトが演じた女優のメリックに対する接し方が凄い偽善的で、「こいつやってるなぁ」と…(苦笑)
逆に初対面でいきなりメリックを叱りつけたおばさんの看護師長が、この映画で唯一彼を特別視していないまともな人だなと思いました。
余談ですが見世物小屋の親方は映画では非道なキャラでしたが、実際はメリックとずっと友好的な関係だったそうです。
そういう意見もあるんですね。差別と偽善は紙一重みたいなところがありますよね。
まさに小学生の頃だったか学校で見た記憶があります。
ただ、ビジュアルが衝撃的なのでその印象しか残っていなくて。
今見直して見ると、ジョンと先生のそれぞれの想いが切ないですね。
中高生くらいの年齢の子が見るのがいいかもです。
幼心には少し刺激が強い作品かもしれませんね。
しかし、実話ベースということを考えると、この言葉も残酷というか。
重いテーマを据えている作品だと思います。死ぬまでに観るべき映画の筆頭ですね。