歴史を伝えるという意味では価値があるものの、グロさや本気度が足りない実話ベースの映画。おそらくソ連に興味ある人しか見ないやつです。42点
赤い闇スターリンの冷たい大地でのあらすじ
世界恐慌の真っただ中だった1933年、イギリス人ジャーナリストのガレス・ジョーンズはヒトラーにインタビューすることに成功し、次はソビエト連邦のスターリンから話を聞こうと考えていた。
当時、ソビエト連邦は世界中が不況の中、経済改革を実現し、五か年計画を順調に進めている、と言われていた。しかしガレス・ジョーンズにはどこからその金が出ているのか不思議でしょうがなかった。
真相を掴もうと、彼は前首相のデビッド・ロイド・ジョージのコネを使って、ソビエト連邦に足を運ぶことに。
そこにはすでに複数のイギリス人ジャーナリストやエンジニアたちが駐在していたが、彼らはパーティーに明け暮れ、仕事をしているような気配はなかった。
モスクワに着くと、彼はホテルを指定され、自由に行動することが許されなかった。そこで彼はデビッド・ロイド・ジョージの外交官だと偽ってソビエト連邦の要人とコンタクトを取り、ソビエト連邦の現状を見るために視察旅行をアレンジしてもらう。
ところがガレス・ジョーンズは列車がウクライナに到着したのを見計らって、列車から飛び降り、小さな村に潜入する。そこでは人々が強制労働をさせられ、飢餓に苦しみ、多くの死体が道に転がっているような悲惨な状態だった。
赤い闇スターリンの冷たい大地でのキャスト
- ジェームズ・ノートン
- ヴァネッサ・カービー
- ピーター・サースガード
- ケネス・クラナム
- ケリン・ジョーンズ
- ミハリーナ・オルシャンスカ
赤い闇スターリンの冷たい大地での感想と評価
「太陽と月に背いて」や「バンディット」などの作品で知られアグニェシュカ・ホランド監督による政治ドラマ。
実在したジャーナリスト、ガレス・ジョーンズが、ウクライナで起こっていた大飢饉を突き止め、世界中にソビエト連邦の現状を伝えるまでの過程を描いた告発ストーリーです。
当時のソビエト連邦の政治体制やウクライナの惨状、そしてそれを信じようとしなかったイギリス人の様子を主人公の目線でつづっています。
ウクライナで起きた20世紀の最大の悲劇の一つともいわれるホロドモールのことをぼんやりと知るにはいいですが、エンタメ性はほとんどありません。
サスペンスタッチで国家の陰謀を突き止めていく様子をエキサイティングに描こうとは試みているものの全体的に地味ですね。ウクライナ、イギリス、ポーランドの合作ですが、もしかしたらこれはハリウッドに作らせたほうがよかったかもしれませんね。
物語は、好奇心旺盛な20代後半の若手ジャーナリスト、ガレス・ジョーンズがソビエト連邦を訪れ、当時の最高指導者スターリンにインタビューを試みようとするところからスタートします。
ところがモスクアで友人のジャーナリストが強盗に襲われ、殺されたことを受け、事件には何か裏があると踏んだガレス・ジョーンズは真相を突き止めるために独自に捜査をすることにします。
すると、なにかおかしなことがウクライナで起こっていることを知り、行動規制がされている中、ガレス・ジョーンズは自らウクライナに潜入する、というのがストーリーの流れです。
この映画の描写によると、当時のソビエト連邦は今でいうところの北朝鮮のような体制にあったようで訪問することはできても行動範囲は制限され、ホテルも指定され、常に当局の監視下に置かれていたようです。
そんな中、イギリス人ジャーナリストやエンジニアたちはパーティーを開き、豪華な食事や性愛やヘロインなどに溺れていたんだそうです。
あれもイギリス人たちを手なづけるためのソビエト連邦の政府からの餌だったんですかね。特にピューリッツァー賞受賞者のウォルター・デュランティを利用して、都合のいい情報を西側諸国に伝えさせることで国際社会からの体裁を保っていたような印象でした。
もちろんまだインターネットなど存在しない時代のことなので、ジャーナリストの存在価値も今とは比べ物にならないですよね。
逆にいうと、悪意のあるジャーナリストが権力を持ってしまったら、数少ないメディアにフェイクニュースが流れ、国民は当然それを信じてしまう、という恐ろしさがあるということです。
ウォルター・デュランティはまさにそんな悪徳ジャーナリストの一人で、ソビエト連邦は繁栄してるだの、飢餓はないだの、まるで天国かのように伝えていたそうです。奴はその見返りをたっぷりもらっていたのでしょうね。
そんな中で自分の命をかけて真実を伝えようとしたのがジャーナリズム精神溢れるガレス・ジョーンズだったんだそうです。
正直、あそこまで危険を冒しながらガレス・ジョーンズをウクライナまでに行かせた行動の源はなんだったのかは僕には理解できませんでした。正義感だったのか、使命感だったのか。
ウクライナまで行ったはいいけど、飢餓が起こっているような場所で当然外国人が泊まるところなんてないし、雪が積もる極寒の大地だし、無謀すぎますよね。
真実を伝える前に自分が死んじゃうじゃんっていう話で、来たはいいけどこの人一体どうする気なんだろうって思っちゃいました。生きて帰らなきゃ全てが無意味になっちゃうしね。
本来ならウクライナのシーンが一番インパクトのある見せ場になるべきパートですが、飢餓や惨劇の見せ方が甘いのか、逆にウクライナのシーンが一番つまらなかったです。
モスクワとのコントラストをつけるために意図的にウクライナのシーンはほぼ白黒のような色のない映像にしてあって、映像的に状況が伝わりにくくなっていたのも原因でしょう。
子供たちがお兄ちゃんの死体の肉を食べていたのはさすがに衝撃だったけど、大虐殺を伝えるなら、あれぐらいのエピソードをもっと見せないと意味がないですよね。
コメント
この映画をまだ見ていませんが近いうちに見ます。ウクライナで種籾迄後で返すからとソ連が言って取り上げ返さなかった。餓死者がでたのは単なる失政でなく虐殺だ。
ソ連の本を沢山読みましたから興味が有ります。イギリスのインテリ達がこのころのソ連に好意を持ち、日本も、本人は頭が良いとおもっているインテリ達が、つい最近或いは今も左翼に正義があると考えている。その点からすれば今も続く映画と言えるでしょう。私の若い頃は特に共産主義が正当な考えとされていてたが、高校の中頃には共産主義は恐か凶が適切な字であると気づいた。戦車や飛行機に興味を持ちそれから戦記に興味を持ちソ連軍を知れば共産主義に疑問を持った。共産主義は労働者の独裁とあるので子供の頃スターリンは旋盤工か何か働きながら指導者をしていると思っていた。実際は自称労働者で政治家の独裁が共産主義で、さらに共産主義は計画経済となると。国民は自分の自由で移動も職業選択の自由も無い。自分の意思で何かする事も出来ない、資本主義は完全な三権分立でないにしても、一応国を訴える事も出来る。共産主義では共産主義を批判する本を、出版しようとしたら、政府が何を幾つ何時を作るか決める計画経済だからね。共産主義は結局上の指導者が征伐与奪の権力を持ち恐怖政治としかなり得ない。この映画は昔話とだけにしてはならないと思う。
1月14日にコメントした者ですが、映画男さんはこの映画を大変上手くまとめています。映画男さんの言うとうり確かに残っている飢餓の写真で大量の遺体の積み重った物があったのでそのシーンが無いと何か小規模な印象を与えてしまうと思う。予算がかかってしまうが私なりに追加をしてほしかったのは、ソ連の大規模な飢餓の様子、ヒトラーと会い、ドイツが発展しそうな様子、ソ連が作る戦車の大規模な工場等が映像であればより良かったと思う。ソ連はイギリスの設計した戦車(後のT26)アメリカの設計した戦車(クリスティー戦車を元にBT5や7 これがT34に発展した)大変良い映画だと思うが言葉でヒトラーや工場と言われるだけでは充分に伝わら無い気がする。映像で出来れは表現してほしかった。主人公が訴えても受け入れない事は今も中国の人権侵害が大して取り上げられないのと同様な気がする。今は文化大革命や大躍進で4500万人から1億人の犠牲者が出た事は常識となっているが、殆どの人は知らないだろう。将来皆の知られた話しとして中国の人権抑圧がナチスと同様とわかった時、何故当時(今の我々)の人は中国をほっといたのか?と非難されるだろう。この映画は知るべき事を知らないといけないと言う事を伝えてもいると思う。
映像的に物足りなかったですね。
スターリン、ホロモドールなどに関して無知だったのでその部分では史実を知るという意味で勉強になりました。
ただ、ほんと、歴史の教材のような印象でウクライナでの惨状をもっとインパクトがある映像にしないと、メリハリがなくメッセージ性がボヤけますよね。
ガレスは殺されるのが簡単に想像つく為、デュランティの生きる為の選択も簡単に責められないなと思いました。
インパクトに欠けましたね