頭の切れる優等生の高校生が大人たちを相手にダークな心理戦を繰り広げるサイコロジカルスリラー。それなりに面白いけど、ノンバイオレンスなうえ、恐怖度も低めです。62点
ルース・エドガーのあらすじ
黒人のルースは白人の夫婦ピーターとエイミー・エドガーに小さな頃、養子として引き取られ、アフリカのエリトリアからアメリカに移住してきた。
高校生になる頃にはルースはすっかり文武両道の優等生にまで成長していた。ルースは生徒たちはもちろん教師たちからも信頼され、彼のスピーチは多くの人々の心を鷲掴みにした。
しかしそんなルースに対して歴史の女性教師ハリエットだけは、不安を抱いていた。ルースが課題でテーマとして取り上げた歴史上の人物が過激な思想を持つ独立運動家のフランツ・ファノンだったからだ。
また、ルースのロッカーから違法で危険な爆発物が見つかったことから何か問題を起こさないかどうか心配しだしていたのだ。
ハリエットはルースの母エイミーを学校に呼び出し、状況を説明したが、エイミーは息子が悪いことを企んでいるとはとても思えなかった。
ところがルースの行動を追っていくと、ルースが何かを隠していることにエイミーは気づいていく。
ルース・エドガーのキャスト
- ケルヴィン・ハリソン・Jr
- オクタヴィア・スペンサー
- ナオミ・ワッツ
- ティム・ロス
- ブライアン・ブラッドリー
- アンドレア・バン
ルース・エドガーの感想と評価
「クローバーフィールド・パラドックス」のジュリアス・オナー監督による、人種、養子、アイデンティティなどをテーマにした難易度の高いサスペンススリラー。
一度見ただけでは消化するのが難しく、ついつい誰かに解釈と解説を聞きたくなるような抽象的な表現に溢れる物語です。
芸術ぶった撮り方や見せ方のせいで、話が分かりにくくなっている映画は多々ありますが、この作品の場合は主人公の動向を中心に出来事を時系列順に追っていくシンプルな手法を取っています。
にも関わらず、誰が嘘を付いているのか明確な答えを提示せず、またそれぞれの思惑の核心にも迫らないまま最後まで行くため、意図的に視聴者にもやもやを残す演出になっています。
これは好き嫌いが分かれそうですね。あれこそ考えるのが好きな人ははまるだろうけど、そうじゃない人にはただの曖昧な話として片づけられる微妙なラインを行っています。
僕にとってはストーリーや演出は十分に楽しめたものの、ラストはもうちょっとはっきり終わっても良かったかなぁ、という感想を抱きました。
あと冷静に見ると、サスペンススリラーとはいえ、期待させるほどの恐怖の出来事も起らないんですよね。主人公のルースをソシオパス的なキャラクターにするならもうちょっと過激な方向に行っても良かったかなぁ、という気もしました。
人種やアイデンティティの問題を養子という特殊な環境を使って浮かび上がらせているのは実に巧妙ですね。
主人公のルースが黒人で、白人の両親に引き取られたという設定は、今の時代では十分にありうる話だし、そのせいで自分のアイデンティティに悩まされる、あるいは両親や教師が彼のアイデンティティを疑ってしまう、というのも興味深かったです。
養子だと自分の本当の子供ではないため、理解し合えないとき、何か問題を起こしたときにバックグランドのせいなんじゃないかと思いがちですよね。血がつながっていないから、というせいにはしたくないけど、ついついしてしまう、というのは養子を受け入れた人にとっては現実的にあるんじゃないでしょうか。
そして、この子はアフリカの紛争地で生まれ育ったからもしかしたらトラウマのせいでものすごい凶暴性を内に秘めていてもおかしくない、といったふうに疑い出したら両親は息子のことが自分がよく知っている息子じゃないかのように感じてくるのかもしれませんね。
そういった両親と養子の息子の複雑な関係をとても上手く表現していて、頭が良く、物腰が柔らかいルースには別の顔があった、というところが見所になっています。
ルースが誰からも好かれるキャラで、人の心を掌握することに長けているのがポイントですね。
頭の回転の速いルースにとったら校長先生や生徒たちはもちろん、両親までも利用するのは朝飯前なんでしょう。
そして色んな人を自分の味方につけて手玉に取っていき、協力を仰いで目の敵である先生を失脚させるって、ものすごい策士ですね。高校生なのに政治家みたいに汚くて悪い男、それがこの映画の主人公でした。
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