エンタメとしてはいいけど、ホラーとしてはそれほど怖くない映画。透明人間がダサいのが残念でした。58点
映画透明人間のあらすじ
セシリアは、DV癖のある恋人エイドリアンの暴力から逃れるためにある日、真夜中に家から飛び出した。エイドリアンは有名な科学者で高い壁に囲まれた豪邸に住んでいた。
逃亡後、セシリアはしばらく警官の友人ジェームズのところに居候していたが、エイドリアンがどこかにいるのではないかという恐怖からろくに外出もできなかった。
ところがセシリアはまもなくしてエイドリアンが自殺したことを知らされる。セシリアはエイドリアンの弟で弁護士のトムに呼び出され、エイドリアンが多額の遺産を彼女に残したことを聞かされる。
やっとエイドリアンから自由になれたと喜んだのもつかの間、ジェームズの家で寝ているときに何者かの気配を感じた。すぐにそれがエイドリアンであることが分かった。
エイドリアンの姿は見えなかったが、突然フライパンから出火したり、ベッドの毛布を取られたり、あるはずのない薬が家にあったりとおかしなことが続いた。
エイドリアンは見えないだけで生きている。セシリアは確信したが、誰も彼女のことを信じようとはしなかった。それどころかセシリアの言動は周囲に不審に映り、彼女は次第に精神異常者のように扱われていく。
映画透明人間のキャスト
- エリザベス・モス
- オリヴァー・ジャクソン=コーエン
- オルディス・ホッジ
- ストーム・リード
- ハリエット・ダイアー
- マイケル・ドーマン
- ベネディクト・ハーディ
映画透明人間の感想と評価
「ソウ」シリーズの監督の一人として知られるリー・ワネルによる、1933年製作の同名映画のリブート作品。H・G・ウェルズの小説を原作とした映画です。
DV男から必死で逃れようとするヒロインが精神を病んでいき、やがて勇気を振り絞って男に立ち向かっていく様子を描いたSFホラーで、1933年版『透明人間』の現代版などと言われています。
しかしいざ蓋を開けてみると「プレデター」の現代版といったほうがマッチしている内容でした。
というのもこの映画のヴィランは透明になったり、ときおり姿を現したりしながらまるでモンスターのように人々を襲っていくからです。
物語は、ヒロインのセシリアが天才科学者のエイドリアンの家から脱出するところからスタートします。セシリアはエイドリアンに薬を飲ませて意識を失っているときに家から逃げしたものの、すぐに気づかれてしまいもう一歩のところで彼に捕まりそうになります。
なんとか逃げだしたセシリアはその後、エイドリアンが死んだと告げられますが、実は彼は死んでおらず、姿を消してセシリアにずっと付きまとうとする、というのがストーリーの流れです。
アメリカでは結構高い評価を受けているみたいですが、結論からいうと、見れる映画ではあるものの、それほど怖くもなく、また突っ込みどころも多い映画だなあ、というのが正直なところです。まあ、エンタメ映画としては合格点には入るんじゃないでしょうか。
恐怖の対象となる人物が見えない、という設定はなかなか面白いです。相手のことは見えないけど、確かに気配は感じる様子を上手く表現していて、白い吐息だけが見える下りなんかは冷や汗ものです。この映画の一番の見どころはまだ透明人間が出てこない前半部分ですね。
それに対し、いざ透明人間が姿を現してからは、SF世界の中における辻褄やリアリティーを失っていき、かなり滑稽になっていきます。
実はエイドリアンは透明になれるスーツを密かに開発していた、というのが事の真相なんですが、そのスーツ姿がまた全身タイツみたいで笑えるんですよね。
スーツの上からペンキをぶっかけたことで初めて姿が露わになるんだけど、ペンキのときもそうだし、出血したときも透明人間からは全然液体が滴り落ちないのが不思議ですね。床がもっとペンキや血で汚れないとおかしくないか?
また、スーツのおかげで透明人間になるまではいいとしても、戦闘能力まで上がりすぎじゃない?
警官たちと戦っているときの透明人間いくらなんでも強すぎだろ。まさにプレデターじゃん。
この映画はセシリアがレストランで妹を殺したことにされて、冤罪で逮捕されたところで終わるべきでしたね。そのほうが透明人間怖ってなってたと思います。
透明人間に、目の前で家族を殺され、さらにその罪を被せられる、というオチのほうが良かったんじゃないのかなぁ。
でもそこからまだまだ話は続いていって、透明人間の正体は実は誰々だったとかしょうもないサプライズがあったり、セシリアの復讐劇が用意されていたり、と話が大分ごちゃごちゃになっていきましたね。
DVから逃れようとする女と、肉体的、精神的暴力によって女を支配しようとする男の攻防をスリリングに描こうとしたんでしょうが、「お前セシリアに嫌がらせするためだけにあんなハイテクスーツをわざわざ開発したのかよ」って思うと、アホらしくなりますよね。
エイドリアンがセシリアにあれだけのめり込んだ理由もよく分からなかったしなぁ。若くて、イケメンで、あんなに金持ちだったら、別に一人に執着しなくてもいくらでも相手見つかるだろって。
あと、エイドリアンと友達のジェームズの関係も謎だったしね。ただの友達のためにあんなに優しくする?
ただ、最初から最後までセシリア役を演じた「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」や「アス」でお馴染みのエリザベス・モスは素晴らしいの一言でした。
終始抜群のパフォーマンスだったし、彼女の映画といっても過言ではないでしょう。まゆげを釣り上げた顔なんて「シャイニング」のジャック・ニコルソンを彷彿とさせるものがありました。
恐怖を抱いている表情、やつれていく様子、そして復讐を決めた顔など様々な顔芸を楽しませてもらいました。
コメント
「今更、透明人間(笑)」とか失笑物のC級かと思っていたら、意外に飽きさせずに見せるエンタメで感心させられた。
特に「透明人間」の存在感を心霊ホラー的な演出で表現した手法は巧いと思った。
ただ、前半から中盤までの力の入った演出に比べて、後半は何か息切れして凡庸な展開になってしまった感はある。
映画男さんの言われる通り、元カレ・ストーカーの心理描写がきちんと描かれず、単なる類型的な悪役に留まっているので、ヒロインに対する執着心が理解できないし、天才科学者らしからぬ雑魚の様なラストには盛り上がりもカタルシスも感じられなかった。
ヒロイン関係者として「妹」と友人の「黒人親子」が登場するが、どちらかの存在は削除してその空いた部分を元カレ・ストーカーの心理描写に充てた方が全体的に物語に厚みが出たのではないかと思う。
エンタメ度は高いんですけど、いまひとつのところがありましたね。友人親子まじでいらなかったです。
意外と評価高くて驚きました
透明人間が出てくるまでの前半部分が一番ハラハラしましたが、その後は退屈に感じました…
これ、結構好きです。突っ込みどころもありますけどね