話題だけ先行して、ちっとも中身が伴っていない家族ドラマ。特に話が膨らまず、結局また振り出しに戻るタイプのストーリーです。43点(100点満点)
岬の兄妹のあらすじ
とある田舎町で脚に障害のある良夫は自閉症の妹、真理子とボロボロの家で二人暮らしをしていた。
真理子は鎖でつないでおかないとすぐに家を出ていってはそのまま帰ってこなくなることがしょっちゅうだった。その度に良夫は警察に世話になり、頭を下げて回らなければならなかった。
そんな良夫は造船所で働いていたがある日リストラに遭い、電気代も払えないほど生活が苦しくなっていく。
そんな中、真理子が失踪中に見知らぬ男から体と引き換えにお金をもらっていたことを知り、彼女に売春させることを思いつくのだった。
岬の兄妹のキャスト
- 松浦祐也
- 和田光沙
- 北山雅康
- 中村祐太郎
- 岩谷健司
- 時任亜弓
岬の兄妹の感想と評価
片山慎三監督による自主製作映画。障がい者の兄弟が売春で生きていこうとする問題作です。
兄は脚の障害を抱え、脚を引きずって生きてきたのに対し、妹は自閉症で知的障害を抱えており、そんな身寄りのない二人が貧困に苦しみ、やがて社会的なモラルを捨てて生きていく様子を描いています。
いわゆるインパクトを重視した作品で、ネットでもちょっとした話題になっていましたよね。僕もツイッターでちょこちょここの作品の評価を目にして気になっていました。
しかしいざふたを開けると、兄弟がフリーで売春する、という以外にはほとんど内容がなく、あえてきついエピソードを選んで詰め込んだ感が満載でした。
自閉症の売春婦に小人症の客がついたり、中学生の客がついたりするのも監督からしたらしてやったりなんでしょうね。
どうせなら小人症の客ともっとラブストーリーが展開していけばよかったんだけどねぇ。子供一緒に育てていくっていうのでもよかったし。
いずれの客たちも知的障害者の売春婦を結局拒絶しないでやれちゃうところが嘘っぽかったですね。1時間1万円ってまた結構な値段取るよね。
トラック運転手に売春の話をもちかけたらすぐにひっかかるみたいな発想、あれなんなんでしょうね。絶対海外の映画の影響でしょ? 日本のサービスエリアにそもそも売春婦いないだろうが。そもそもトラック運転手はいつだって性欲溜まってるだろ、みたいな偏見が笑えます。
あと、兄弟そろって障害を抱えていて、職もなかったら、なにかしらの社会保障がもらえるでしょって思っちゃったなぁ。
借金があるから手当を受けても全部飛んで行っちゃうとかならまだしも、福祉的な話は一切排除してるんですよね。
それ抜きで障がい者だけど、仕方なく売春するはめになりましたっていわれても、ちょっと置いてけぼりにされます。
だから社会問題に一石投じているようで、実はあまり社会のことは描けていないんですよ。
それに対してエンタメ性があるかといったら全くないです。ベッドシーンがたくさんあるけど、色っぽい絡みではなく、なにをさせられているのか理解していない少女がいわば暴行される様子を見せられる、きついものばかりです。
もし目をそむけたくなる話を届けることが監督の一番の狙いであるならば、その目的は果たされてるといえるでしょう。
ただ、これがいい映画なのか。面白い映画なのか、といわれたら面白くないよね。だって退屈だもん。
監督はコメディー要素をたくさん入れたとインタビューで言っていましたが、ほとんど笑いにすらなってなかったけどなぁ。
状況が悲惨すぎるというのもあるし、そもそもボキャブラリーのない自閉症の女の子に言っちゃいけないことを言わせて笑わせるみたいな手法って、突拍子もない子どもの行動を見て面白がるのと似ていますよね。その点もいまいちだったなぁ。
おそらく普段お花畑で生活している視聴者の多くにとってはこういう話が衝撃的すぎて何日も忘れられないぐらいの印象を残すんでしょう。それでその衝撃を受けたノリのままツイッターに投稿しちゃうんだと思うよ。「この映画すごいよ」って。
あと、日本人ってやっぱり障がい者が物語の中に登場したらすぐバイアスがかかって、天使を見るかのような視線になってなんでもかんでも美化するよね。製作側からしたらターゲットとしてカモなんですよ。
だからこれで感情揺さぶられる人って絶対「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」とか「チョコレートドーナツ」で泣いちゃう人たちでしょ。
そんでもってそういう人たちの感想って「売春は悪いことだけど、この兄妹は一概に悪いとは言えない」とか謎の上から目線で、この世には善悪の二種類しかないような言い方で感想述べるでしょ? そういう人たちにはまあ受けるんだろうなぁっていうそんな映画でしたね。
一方で自主製作でここまで作ったのは素直にすごいと思います。俳優たちのパフォーマンスも決してうまいとはいえないけど、それなりのレベルにまで仕上げてたのは評価に値すべきでしょう。
自閉症という難しい役を演じたうえ、多くのヌードシーンに挑戦した和田光沙にとっては特にハードな撮影だったんじゃないでしょうか。
テーマにしろ、製作方法にしろ、モラルに反する際どいシーンの数々など、いろいろな面で挑戦的なことには間違いないです。その点においては最近の邦画の中では確かに珍しい作品なのかもしれませんね。片山慎三監督にの次回作に期待しましょう。
コメント
偉そうに。
だったらテメエがイチから万人ウケするくだらねえ媚びた映画でも作ってみろよ!!
何も行動に移さず、何も残さない人間モドキが何言っても説得力ないわカス
前のコメント怒ってるけど色んな感想あっていいと思うよ。主さん映画監督じゃないしね。
実際わたしも社会福祉のところに引っかかって一気に現実感吹っ飛びました。警察の友だちも居るのにそこは無視できない。でもストーリー的にはおもしろいのだと思います。