会話中心で進んでいく人間ドラマ。これを見たらローマ教皇フランシスコを好きになってしまうこと間違いなしです。68点(100点満点)
2人のローマ教皇のあらすじ
2005年ヨハネ・パウロ2世が死去したことにより、バチカンでは教皇ベネディクト16世が後継者になることに決まった。
ところが教皇ベネディクト16世の就任中、カトリック教会はスキャンダルにまみれ問題が山積みとなり、批判の矛先は教皇ベネディクト16世にも向けられた。
そんな中、ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿は、機卿の座を辞任しようとバチカンに手紙を送っていた。ところがそれに対する返事は来なかった。
まもなくしてホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿は自ら航空券を手配して、ローマに行く計画を立てた。するとちょうど同じタイミングで教皇ベネディクト16世からローマで会って話し合いという内容の手紙が届いた。
ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿がバチカンに着くと、教皇ベネディクト16世はガンドルフォ城で時間を過ごしていた。
二人は城の庭園で話始めるも、辞任したいホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿と、辞任はカトリック教会への批判だと受け止めて突っぱねる教皇ベネディクト16世とで話は平行線をたどる。
二人は口論になってほとんど話し合いにならなかったが、ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿はなんとしてでも辞任を認めてもらおうと、ガンドルフォ城に一泊することになる。
別々に夕食を取った後、ワインを飲みながら二人はカジュアルに話をした。ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿はどのようにして司祭になったかを語った。
意見こそ合わないもののそうしてホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿と教皇ベネディクト16世の間にはある種の絆が芽生えてくる。
2人のローマ教皇のキャスト
- アンソニー・ホプキンス
- ジョナサン・プライス
- フアン・ミヌヒン
- シドニー・コール
- リサンドロ・フィクス
- マリア・ウセド
2人のローマ教皇の感想と評価
「シティ・オブ・ゴッド」、「ナイロビの蜂」、「ブラインドネス」、「360」、「リオ、アイラブユー」のフェルナンド・メイレレス監督による宗教ドラマ。
ローマ教皇フランシスコことホルヘ・マリオ・ベルゴリオの人柄が分かる、ベネディクト16世とのやり取りをちょっとしたユーモアを交えながら映し出した神秘的で味わい深い大人の映画です。
前半はスローでやや退屈なのに対し、中盤から後半にかけて人間味が出てくる物語で、特にカトリック信者の多い国々の人たちには受けるでしょうね。
ローマ教皇を身近に感じるようなエピソードばかりで、ホルヘ・マリオ・ベルゴリオにとってはさらなるイメージアップでしかないでしょう。
物語は、実際の映像とフィクションをミックスした構成になっていて、一瞬ドキュメンタリーかと目を疑うような作りになっています。
バチカン宮殿にあるシスティーナ礼拝堂が度々映るんですが、まるで本当にあの場所で撮影されたのかと思うほど、セットがリアルです。
会話の内容は実際に二人がしたものと違う点も多々あるでしょう。しかしカトリック教会の内部、それもトップの人間たちの心境をこれほど分かりやすく、面白く描けるのはすごいですね。
神聖化されがちな存在である二人の教皇をあくまでも一人の人間として描いている点に好感が持てるし、ホルヘ・マリオ・ベルゴリオのバックストーリーは現代のキリストといわんばかりのリアルかつ宗教ストーリーになっていました。
というのもアルゼンチン人のホルヘ・マリオ・ベルゴリオは、軍事政権を生きた経験があり、そこで政府や軍が人々を虐殺してきたのを嫌というほど目撃してきたようです。
当時、宗教家は反体制勢力とみなされ、次々と教会の活動や宗教家たちが弾圧に遭い、口を封じられてきたようです。
そんな中、ホルヘ・マリオ・ベルゴリオは独裁政権に立ち向かったのではなく、軍の上層部と交渉し、また仲間の宗教家たちを説得し、活動を自粛させ、なんとか命を救おうとしました。
しかしそういったホルヘ・マリオ・ベルゴリオの行動は独裁政権に魂を売った裏切り行為とも解釈され、彼は長い間非難され続いてきたそうです。
そして仲間の多くは拷問を受けたり、殺されたりした中で自分のやってきたことは果たして正しかったのか、と自問自答する毎日を送ったのでした。文字通り彼は十字架を背負っていたんですね。
だから自分がローマ教皇になるなんてとんでもない、と思う彼の姿に人柄が表れているようでした。
また、ホルヘ・マリオ・ベルゴリオが司祭になったきっかけもなかなかドラマチックでしたね。
もともと結婚する予定で、恋人にプロポーズまでしていたのに、デートに行く時に通りががった教会でお告げを聞いてしまった、というのはちょっとできすぎた話のようでもあります。
そして結婚の話を蹴り、宗教の道へと進んだというのだから不思議な人生ですよね。女性からしたらたまったもんじゃないけどね。
「ごめん、俺、司祭になるから君と結婚できないわ」などと土壇場で言われるんでしょうか。
ある意味、ひとりの女性を不幸にして、司祭になったことだからモラル的にはどうなんだっていう話にもなりますよね。
でもそんな男が将来ローマ教皇にまで上り詰めて、多くの人々を幸せにすると考えたら万事OKってことなんでしょうか。
果たして振られた女性はローマ教皇がかつて自分の結婚を破棄した男だって気づいたのでしょうか。「あれ、あいつもしかして薄情のホルヘじゃない!」ってなるのかなぁ?
ホルヘ・マリオ・ベルゴリオに好感が持てるのは、そういった恋愛話などを含む普通の男として生きてきた過去があり、また独裁政権といった辛くて暗い経緯を持ち、そして高い地位についてからもずっと質素に暮らし、素顔のホルヘのままでいたことにあるんじゃないかと思います。
枢機卿にもなってまで普通にバスでバチカンまで行ってたじゃないですか。ローマ教皇に就任してから自分で航空チケットの手配をしようとしたっていうエピソードは本当なんですかね?
「ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(ローマ教皇)だけど、チケット予約できますか?」って粋なジョークみたいになってましたね。
ほかに評価されるべきポイントは、アルゼンチンのパートをスペイン語で、イタリアのパートをイタリア語で、二人の会話を英語で、またときにはラテン語で、といったようにしっかり状況に分けて言語を忠実に再現していたところです。
ネットフリックスぐらいじゃないかなぁ、ああいうところまで細かく再現しようとするのって。ほかの製作会社が作ってたら全部英語になってたでしょうね。
それにブラジル人監督フェルナンド・メイレレスを起用して復活させたのもすごいなぁと思いました。フェルナンド・メイレレスなんてブラジル国内でも名前聞かなくなってたのに、色んな人にチャンス与えるんですねぇ。
一方のキャストもアンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスが素晴らしい演技をしたと思います。アンソニー・ホプキンスも久々にまともな映画に出たんじゃないのかな。
あえて文句をつけるとしたら、スキャンダルについてあまり触れなかったことですかね。
スキャンダルをめぐって教会内部でどういった話し合いが行われたのか。またどういった対応を取ったのか、といったことまで実情が描かれていたら最高だったんですけどね。さすがに詳細をほじくるのは気を使ったのかなぁ。どうせならもっとほじくっちゃえよ。
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