数々のマフィア映画を手掛けてきたマーティン・スコセッシ監督が豪華俳優キャストを集めて作った実話ベースの伝記もの。久々に見た面白いマフィア映画です。66点(100点満点)
アイリッシュマンのあらすじ
1950年、肉を運ぶトラック運転手だったフランクはマフィアたちに商品を横流しし、お金を稼いでいた。
やがてフランクは肉を盗んだとして会社から訴えられるも商売相手の名前を吐かなかったことから有能な弁護士をつけてもらい無罪放免となる。
それをきっかけにフランクはマフィアのボス、ラッセルから気に入られ、直接仕事を回してもらうようになる。仕事の中にはもちろん殺しの仕事も含まれていた。
ボスの仕事を忠実にこなすうちにフランクはやがてマフィアの中でも一目置かれる存在になっていた。そんなある日、ラッセルからトラック運転手組合の委員長であるジミー・ホッファを紹介され、彼の右腕として働くになる。
それからもフランクはマフィアのボス、ラッセル、そして組合のボスのジミー・ホッファの裏と表の仕事を次々とこなしていく。
アイリッシュマンのキャスト
- ロバート・デ・ニーロ
- アル・パチーノ
- ジョー・ペシ
- ボビー・カナヴェイル
- レイ・ロマーノ
- ハーヴェイ・カイテル
- スティーヴン・グレアム
- ドメニク・ランバルドッツィ
- アンナ・パキン
アイリッシュマンの感想と評価
「キング・オブ・コメディ」、「タクシードライバー」、「アビエイター」、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」、「沈黙 -サイレンス-」、「カジノ」などで知られるマーティン・スコセッシ監督による、ノンフィクション本『I Heard You Paint Houses』を基にしたネットフリックス製作マフィア映画。
ロバート・デニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシら豪華キャストが共演したことでも話題になった作品で、往年の名俳優たちが久々にいい仕事をしています。
トラックの運転手だった男がマフィアと仕事をするようになってから瞬く間に出世し、マフィアのボス、そして労働組合の指導者の右腕として働くようになり、やがて二人の上司の対立に巻き込まれる様子を描いていきます。
主人公が若い頃に裏社会に足を踏み入れるところから始まり、老後になって仲間が病気や寿命で死んでいく中、落ちぶれて一人寂しくクリスマスを過ごすところまでを細かくつづっているため、約3時間30分の長尺映画になっています。
映画館で見たら半日潰れるやつで、ネットフリックスで配信されているので、まだ休憩しながら見れるけど、さすがに3時間30分は長いですね。
しかし最近の長尺映画の中では圧倒的に面白い部類に入るし、数日に分けて見る必要もなかったです。
マフィア同士の抗争をただ見せるのではなく、世界の歴史が動いた重要な出来事と絡めているのが功を奏していますね。そのおかげで話に引き込まれるのにそれほど時間はかからなかったです。
まず、JFケネディー大統領の暗殺事件の黒幕をはっきりとマフィアの仕業として描いているのが大胆でいいです。
ご存じの通り、ケネディー一家は禁酒法時代に酒の密売で財を築いた家族で、マフィアとのつながりが深かったにも関わらず、大統領になった途端マフィアを一掃するようなキャンペーンを打ち立て、反感を食らったことで知られています。
CIAがキューバのフィデル・カストロ政権を倒そうと、在米亡命キューバ人部隊を送り込んだときにはケネディー大統領がアメリカの直接の関与を隠すために軍の援護を許可せずにミッションを失敗させたこともありましたね。
あの作戦にもキューバでカジノ経営をもくろんでいたマフィアが裏で絡んでいた、という描写があり、なかなか興味深かったです。マフィアが国を跨いだ政治や軍事にまで関与してるなんてすごい話ですよね。
そんな衝撃の事実を包み隠さず描写していて、ケネディー大統領にもどれだけ敵が多かったのかがよく伝わってきました。
その一方で物語はあくまでもマフィアの活動やトラブルの数々を淡々と描くことに終始します。
派手な女性関係や金に物を言わせた豪遊生活といった華やかな部分にはほとんど触れません。
この映画に登場するのはむしろ地味で年を取った男たちばかりで、四六時中たばこを吸いまくりのマフィアの奥さんたちのほうがよっぽどセレブ人生を謳歌している感がありましたね。
その点については絵的にも話的にもアメリカンドリームを感じさせる「カジノ」のほうに軍配が上がります。
熟年マフィアたちの喧嘩模様だけではエンタメ性とビジュアル性にどうしても欠けるんですよね。わがままを言えばもっと色気が欲しかったなぁ。
いずれにしてもマフィアのボスをジョー・ペシ、彼の右腕をロバート・デニーロ、そして組合の委員長をアル・パチーノがそれぞれ好演していて、俳優たちに救われています。
ジョー・ペシは「カジノ」でもそうだったように冷酷無比な役柄がぴったりだし、迫力あっていいですねぇ。それに比べておじいちゃんになったときのジョー・ペシ扮するマフィアのボスなんて可愛いすぎでしょ。
それに対し、ロバート・デニーロがボスではなく、ボスの下っ端で働く男というキャラなのも新鮮でした。
デニーロにしろ、アル・パチーノにしろ最近ひどい作品にしか出てなかったからこれで十分名誉挽回になったんじゃないでしょうか。
コメント
日本でケネディの評価が高いのが不思議です。娘さんでしたか、政府高官として日本に来てましたね。
それはともかく、そんなに長かったんですね。
しっかり最後まで観させてくれたのはさすがと言うしかありません。
僕としては、もうちょっとハラハラドキドキしたかったですが。
ケネディの評価はテレビでクリーンなイメージを売ることに成功したんでしょうかね。あと、案外ハンサムでいい人そうだからといったしょうもない理由で評価してる人もいそうですね。
確かにこの映画はハラハラドキドキは少なかったですね。終盤アルパチーノが殺されるのかどうかというのがクライマックスだったんではないでしょうか。