連続殺人鬼の表と裏の顔を恋人目線で描いた人間ドラマ。悪い男を信じては振り回され続けた女性たちの悲劇の物語です。58点(100点満点)
テッド・バンディのあらすじ
1969年、シアトルでテッド・バンディはシングルマザーのリズとバーで運命的な出会いを果たす。二人はたちまち恋に落ち、テッドはリズの家に入り浸れるようになった。
1974年、アメリカ各地では女性が行方不明になったり、殺害される事件が多発していた。サマミッシュ湖では二人の女性が姿を消し、その際テッドに似た男がボートを車に載せるのを手伝ってくれないかと複数の女性に話しているところを目撃されている。
目撃情報や通報から作成された似顔絵はテッドにそっくりだった。まもなくテッドは誘拐の容疑で逮捕される。
警察の面通しでテッドは、被害者女性から犯人に間違いないと指摘された。テッドは面通しの前に警察が自分の写真を被害者に見せたといい、捜査や取り調べに不正があったと主張したが、有罪判決を受け、ユタ州の刑務所に収監された。その間もリズはテッドの無実を信じてやまなかった。
数年後、テッドは別の女性を殺した容疑で起訴され、コロラド州の刑務所に送られた。そこでもテッドは無実を主張した。一方でテッドは刑務所から脱獄を繰り返すなどして世間の注目を集めていた。
テッドが甘いマスクの持ち主であったことやカリスマ性があったことからやがて多くの女性たちが彼を支持した。
また、どれだけ不利な状況に立たされてもテッドは、巧みな話術で無罪を主張し、それを信じる者が後を絶たなかった。そんな中、リズは自分が愛した男の本性が分からずに苦しめられていく。
テッド・バンディのキャスト
- ザック・エフロン
- リリー・コリンズ
- カヤ・スコデラリオ
- ジョン・マルコヴィッチ
- ジェフリー・ドノヴァン
- アンジェラ・サラフィアン
- ディラン・ベイカー
- ブライアン・ジェラティ
- ジム・パーソンズ
- ハーレイ・ジョエル・オスメント
テッド・バンディの感想と評価
「ブレアウィッチ2」でお馴染みのジョー・バーリンジャー監督による、実在した連続殺人鬼の裁判ドラマ。長年一緒に連れ添ってきた男が実は女性ばかりを狙うシリアルキラーだった、というアンビリバボーな話です。
物語の主人公は、アメリカの7つの州で30人以上の女性を殺害したとされるテッド・バンディ。ハンサムでウィットに富んだ彼は、道行く女性たちが振り向くほどの魅力の持ち主で、いとも簡単に知り合った女性たちを落としていきます。
シングルマザーのリズもそんな一人で、テッドは彼女の娘モリーにとっても優しい父親のような存在になります。
ところが女性の行方不明事件が相次いで起こると、まもなくしてテッドの名前が容疑者として挙がり、逮捕されてしまいます。
そんな中でもリズは半信半疑でテッドとの関係を続けていく、というのがストーリーの流れです。
連続殺人事件の犯人の最期までをつづった物語ですが、恐ろしい犯行シーンやテッド・バンディの異常性を強調するシーンはほとんどなく、彼に振り回された女性たちの心境を伝えるシーンと裁判シーンが大部分を占めています。
最後の最後までテッドが犯人がどうか疑ってしまうような演出になっていて、彼を信じる女性目線で描かれているのが特徴です。
そのためスリラーと呼ぶには怖さがなく、ときおりコミカルにすら感じるのが不思議でした。見方によっては言葉巧みに女を騙すチャラ男の話に見えるかもしれません。
それでもテッド・バンディを知るには十分でしょう。だけど、怖さを求めて見た人には物足りなさが残りそうですね。
残虐なシーンを省いたのは、ハンサムで知的でコミュニケーション能力に長けるテッドの表の顔こそが、多くの女性が彼に持った印象そのものだからなのかもしれません。
そしてそんな男がいつ本性を現すのか、いつ自分が犯した数々の罪を白状するのか、というのが最大の見どころになっていました。
ちょっと面白かったのは「シックスセンス」の子役ハーレイ・ジョエル・オスメントが脇役で登場するところです。
てっきり子供のときに稼いで、ぱっと辞めたのかと思ったら最近ちょこちょこまた映画に出てるんですね。ブクブクに太って昔の可愛らしさの面影はほとんどありませんでしたが。
口から出まかせ男テッドは、「グレイテスト・ショーマン」にも出ていたザック・エフロンが演じています。
イケメンでチャラい感じは申し分なかったけど、いかんせんシリアルキラーの不気味さや怖さは感じられませんでしたね。
ちなみにこれがテッド・バンディことセオドア・ロバート・バンディ本人です。
連続殺人犯の中でもすんなり自白する人と、最後の最後まで罪状を否認し続ける人がいますが、実際にやっていて罪が確定したのに、それでもなお口を割らないテッドのようなタイプはタチが悪いですよね
被害者遺族はもちろん、犯人の無実を少しでも信じた家族、恋人たちからしたら、とにかく真実が知りたい。じゃないと永遠に報われない。または心の整理がつかないまま一生を過ごすことになるわけで、それがまさにヒロインのリズの心境でした。
長年共に時間を過ごしてきたリズからしたら、テッドとのいい思い出ばかりが残っているうえ、暴力的な姿を一度も見たことがないので、とても女性ばかりを狙う犯人だとは思えない。優しくてロマンチックで素敵な男のイメージがどうしても拭えない。
でももしかすると、テッドは自分や娘のことも殺すつもりだっただろうか、などと考え出すと彼女の苦しみは無限に広がっていくわけで、テッドのような男に惚れたは最後、一生男性不審に陥ったとしてもおかしくないですね。
また、テッドは自分が犯した罪が、そもそも悪いことだとは思っていないようなふしがあって、あれだけ堂々と無罪を主張できることからしても完全に頭がいかれてるんでしょう。
それも弁護士に頼らず、最後は自分で自分を弁護し、裁判をあたかも自分の舞台のように楽しんじゃってるところがふざけてますね。
本題の「Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile(極端に不道徳で、ショッキングなほど悪で卑劣)」は、裁判官が死刑判決を読み上げたときに実際にテッドに対して言ったフレーズですが、まさに凶悪すぎてもう死刑にするしかないって感じでした。あのタイプは反省なんて絶対しないでしょ。
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