優しくて、ポジティブな物語ではあるものの、ベタな演出で感動を狙ってくる、ドタバタコメディ。こんなんじゃ泣けません。33点(100満点)
だれもが愛しいチャンピオンのあらすじ
プロ・バスケットボールのコーチ、マルコは試合中にヘッドコーチと喧嘩し、クラブをクビになり、自暴自棄になって酒を飲み、パトカーを相手に交通事故を起こしてしまう。
裁判の結果、免停、社会奉仕活動を言い渡されたマルコは、知的障碍者のバスケットボールチーム、ロス・アミーゴスのコーチになることに。
最初は全くいうことを聞かない選手たちを見て、乗り気ではなかったマルコだったが、指導をしていくうちにロス・アミーゴスのメンバーたちに愛着を覚え、チームを成長させていくことに生きがいを感じていく。
そんなマルコがロス・アミーゴスを率いるようになると、チームは瞬く間に頭角を現し、全国大会で優勝を狙えるところまでたどり着く。
だれもが愛しいチャンピオンのキャスト
- ハビエル・グティエレス
- フアン・マルガージョ
- アテネア・マタ
- セルヒオ・オルモス
- フラン・フエンテス
- ロベルト・チンチージャ
だれもが愛しいチャンピオンの感想と評価
ハビエル・フェセル監督による、障害者バスケットボールチームのメンバーとコーチの交流を描いたハートウォーミングスポーツドラマ。
スペインにおいて国内映画年間興行収入1位を記録し、アカデミー賞スペイン代表作品に選ばれたわかりやすい感動ポルノです。
物語は、プロバスケットコーチがひょんなことから障害者バスケットボールチームを率いることになり、選手たちの自由さとマイペースさに手を焼きながらも信頼関係を築いていく様子をコミカルに描いていきます。
コーチからすれば最初は嫌々引き受けた奉仕活動だったものの選手たちのことを理解していくうちにやりがいを感じるようになり、やがてバスケを通じてチームのメンバーが大切な仲間になる、というのがストーリーの流れです。
要するに内容はかなりベタで、失職>障害者バスケットボールチームのコーチに就任>障害者を指導する壁にぶつかる>壁を乗り越える>全国大会にチームを導く、といった起承転結になっています。
いわゆる障害者をダシに使った障害者ビジネスなので、嫌悪感を抱く人と素直に感動できる人とどっちでもない人に意見が分かれそうですね。
僕はさすがに嫌悪感までは抱かなかったけれど、コテコテの演出や障害者のピュアさと天然ぶりを笑いにしている安易な手法に対して、とても面白いとは思えませんでした。
特にBGMの使い方が気になりましたね。いちいち音が大きいし、大して盛り上がってもいないパートで感動の音楽を流したり、大して笑いが起こる場面でもないところでも喜劇風音楽を使っているので、しつこく感じます。
また、どれだけ試合のシーンを盛り上げようとドラマチックに描いたとしても、あくまでもアマチュア地域リーグレベルのバスケなので絵にならない、という現実的な問題がありました。そもそもあんなに観客集まらないだろって。
選手たちも特別勝ち負けにこだわってるふうでもないし、全国大会で優勝するかどうかをクライマックスに持っていく意味があるのかなぁ。
それに一体、どんな練習をしたら急にチームがあんなに強くなるんだよっていうぐらいトレーニングの過程をすっ飛ばしてましたね。ほとんど突然変異だったもん。
障害者はみんな純粋で、いい人たちばかりみたいな偏見に満ちた描写は相変わらずで、基本悪い人たちが一人も出てこないファンジーな世界観もどうかと思いましたね。
バスや飛行機にあんなにうるさい連中が集団で乗ってきたら、誰かしらクレームを入れそうなもんだけど、寛容な人たちしかいないからCAさんも含めてみんなニコニコでしたね。僕の個人的な体験では、あんなに素敵な満面の笑みを浮かべるCAに実際会ったことないけど。
せめてコーチのマルコぐらい、短気で、すぐキレる性格の持ち主、という設定なんだったら、障害者に対しにもどんどんキレてもらいたかったです。警察にも逆切れするような男が、なんで急に優しくなってんだよって。それこそ差別だろ。
唯一の救いは、実際に障害を持っているキャストを選手として起用している点でしょうか。一人か二人障害者を起用する映画はあっても主要キャラクターにあれだけの人数の素人障害者俳優を使っている作品は珍しいんじゃないかな?
この手の感動ポルノは、あざといことが多いので、しばしば感動を通り越して腹が立ったりするけど、そうならなかったのは、もしかしたら障害を持つ俳優たちの演技やパフォーマンスの中になにかしら偽りのない部分があったからかもしれませんね。
まあ、かといってしょうもない映画であることには変わらないけど。
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