特に面白くないけど、伝えるべきことをアニメを通じて伝えようとしている姿勢は好きです。44点(100点満点)
ブレッドウィナー/生きのびるためにのあらすじ
アフガニスタンのカブールに住む11歳のパヴァーナが、父親と共に市場で物を売っていると、そこにタリバンの兵士がやってきて、女のくせに外でうろうろしてるんじゃない、家の中から出るな、と言われてしまう。
父親は、まだ彼女は子供だからと言って許してもらおうとするが、極端な考えに染まったタリバンの兵士には話が通じなかった。それどころではなく口答えをするなら殺すとまで脅迫されてしまう。
カブールの街には不穏な空気が流れ、タリバンの横暴な振る舞いは日に日にエスカレートしていった。
別の日、同じタリバンの兵士がパヴァーナの家にまでやってきては父親を逮捕するといって連れていってしまう。その日以来パヴァーナの父親は遠くの刑務所に収容されてしまった。
これによりパヴァーナの家には小さな男の子を除いて男がいなくなり、女だけでは外出を禁じられている今、何もできなくなってしまう。
そんな中、パヴァーナが自分の長い髪の毛を切り、少年になりすまして家族のために食糧や水を調達することに。
これが上手くいったことで、パヴァーナは父親のいる刑務所まで行き、彼を連れ戻すことを計画する。
ブレッドウィナー/生きのびるためにのキャスト
- サーラ・チャウディリー
- ソーマ・チハヤー
- ラーラ・シディー
- クシャイスタ・ラティー
- フカワ・アダアリ・ バットショー
- ヌリーン・グラムガウス
ブレッドウィナー/生きのびるためにの感想と評価
「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」で知られるノラ・トゥーミー監督による、2017年アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート作品。同名児童小説の映画化です。
アフガニスタンの悲惨なあるあるストーリーをアニメにし、世界中の子供や大人に伝えている、という意味では十分に意義のある作品です。
アニメといえど、これでもかというほど残酷なエピソードで溢れていて、見ていて楽しくなるようなタイプの話ではないです。
その点においては戦争の悲劇をつづった「火垂るの墓」などと同種類のアニメといえそうですね。
タリバンが支配するアフガニスタンはとにかく女性蔑視がひどく、女は家から一歩も出るな、というのが彼らの掟のようで逆らう者には容赦なく危害を加えます。
相手がか弱い女性だろうと、足の不自由な老人だろうとタリバンにとっては関係ありません。掟を破る者は反逆者として殺すべきだと本気で信じているようです。
そんな滅茶苦茶なルールがまかり通っているアフガニスタン社会の中でヒロイン、パヴァーナの父親は教師ということもあり、歴史や道徳を優しく一生懸命娘に伝えようとします。
彼はタリバンの兵士に対しても理路整然と人として正しい考えを主張します。家族にとってそんな父親は大黒柱であり、なにより尊敬できる存在です。
しかしそんな父親がタリバンに連行されたことで、まだ幼いパヴァーナは彼を救出しに男の子になりすます、というのが物語のあらすじです。
女性蔑視のアラブ社会を象徴するにはもってこいの設定ではあるものの、女の子が男フリをする、というプロットはディズニーの「ムーラン」をはじめ、結構使い古されていますよね。
だからある意味、そのベタなストーリーに付き合えるかどうかでこの映画の見方も変わってきそうです。
娘が父親を救う、というメインストーリー以外にあまりこれといったサイドストーリーがないのも物足りなさを感じます。
正直、あんな地獄のような状況だったら、たとえ父親を救い出したとしても決してハッピーエンドにはならないんじゃないの?という疑念も残りましたね。
なんとなく問題を解説したかのように幕を閉じるのにはちょっと抵抗を覚えました。こういう映画はむしろバッドエンドでもいいんじゃないかなぁ。
上映時間が1時間半程度と短いのはいいです。それに対し、もうちょっと盛り上がる箇所が欲しかったですね。
物語の途中途中で割り込んでくるファンタジーストーリーはばっさりカットしてもらいたかったです。リアルな話を伝えているのに、象さんとかまじでいらないから。
エンタメ度は低いし、アフガニスタン人がなぜアラブ訛りの英語喋ってるし、絵も相変わらず雑なんだけど、それでも日本の恋愛アニメなんかよりは、こっちのほうがずっと存在意義があるのは否定できないでしょう。
僕は、2017年アカデミー賞長編アニメ映画賞も本来ならこの作品が獲るべきだったと思っていました。それなのにあのときはピクサーの「リメンバー・ミー」とかいう、しょうもないのが賞を持って行きましたね。
この映画なら学校の授業で流しても全く問題ないだろうし、ある意味社会に必要な作品なのにね。そういうアニメ最近減ったよなぁ。
コメント
めったに観ないアニメを楽しませてもらいました。
なんせ、昭和オヤジの鑑賞に堪えるアニメってそうないからですね〜
それでも、ホロっとさせられましたよこれ。
大人が見れるアニメって少なくなりましたねぇ。