アクションしか見どころがないのに、アクションシーンが一つしかないフランス映画。実話の内容を変えすぎです。46点(100点満点)
15ミニッツ・ウォーのあらすじ
1976年、フランス領のジブチ共和国でテロリストグループがフランス人の子供たちを乗せたスクールバスを乗っ取り、国境まで逃亡を図る。犯人たちは政治犯の解放と、フランスからの独立を要求していた。
事件を聞きつけたフランス政府は国境を封鎖し、バスをソマリアの手前で制止することに成功する。
しかし犯人たちは武器を持ち、子供たちは捕虜になったままだ。フランス政府は現場にアンドレ・ジェルヴァル率いる特別部隊を派遣するものの、政治的な理由からなかなか突入することが許可されず、猛暑の中、子供たちはバスの中で体力を奪われていく。
そんな子供たちのことを心配して生徒たちの女性教員ジェーンが現場まで駆け付け、警察の制止をさえぎってバスの中に一人歩いていく。
政府から突入許可が下りないことに焦りを感じたアンドレ・ジェルヴァルは密かにスナイパーの隊員たちと攻撃の準備をしていた。彼らは狙い定めてテロリスト全員を同時に一撃で仕留めるつもりでいた。
15ミニッツ・ウォーのキャスト
- アルバン・ルノワール
- オルガ・キュリレンコ
- ケヴィン・レイン
- ミカエル・アビブル
- セバスティアン・ララン
- ダヴィッド・ミュルジア
15ミニッツ・ウォーの感想と評価
フレッド・グリヴォワ監督による、実際にあった事件を題材にしたテロ映画。独立を望んでバスをカージャックするテロリストグループとそれに立ち向かうフランスの国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN)の活躍を描いたアクションドラマです。
物語が始まると同時にテロリストによる、バスの襲撃事件が起こり、いきなり本題に入る点においては素晴らしいです。
それに対し、素晴らしいスタートを切ったにもかかわらず、そこからラストまでほとんどアクションがなく、長い間待機時間が続くのがダメでしたね。
実際テロ事件や誘拐事件などは、そんなに簡単に解決するものじゃないので、特殊部隊がなかなか突入できなかったり、上層部の指示を待って何時間も待機させられたり、ということはあるでしょう。
でもそれを映画でまるまる再現してしまうと、当然のごとく中盤がスカスカになりますよね。
「早く突撃しないと子供たちの命が危ない!」
「いや、ダメだ!これは上からの命令だ!」
といったやり取りを何度も繰り返して、大人の事情を画面越しに見せられてもっていう話なんですよ。
特殊部隊のくだらないジョークや不必要な会話によって途中でダレるせいで、生きるか死ぬかの状況なのに緊迫感を失っていました。BGMもあまり効果的に使えてないし、演出の問題も大きいですね。
なぜかテロリストたちが終始リラックスしていて、まるで身の危険を感じていない様子だったのも不自然です。
だから「ホテル・ムンバイ」のようなテロ映画と違ってハラハラドキドキはしないんですよ。テロ映画で、それがなかったらもうどうしようもないですよね。
この映画の見せ場はずばりラスト20分で起こるアクション劇のみです。それ以外はほぼそのためのフリだといっていいでしょう。
アクションシーンはなかなか見ごたえがあって、スナイパーたちの百発百中の射撃テクニックは格好良かったです。
でも面白いのはほんとそのシーンだけなので、そのシーンまでは寝ててもいいと思いますよ。
実際にあった事件を題材にした、といいましたが、厳密には「Inspired by true events(実際の出来事からインスパイアされた)」というセールスコピーで売っている映画で、インスパイアされた、という部分とevents(出来事)が複数形になっているのがポイントですね。
まず、インスパイアって言葉が出てきたらまあほぼほぼフィクションだと思ったほうがいいです。また、eventsのように複数形になっていたら、特定の出来事がベースではなく、複数の出来事から都合のいい部分を切り取って作ってるんですよ。実話バカたちはどうせ全部実際にあったことだと信じてしまうんだろうけど。
だから実話の中にもいかにも映画的な展開もあって、それほどリアリティーがなかったです。
特に女性教師が一人でバスに乗り込んでいく下りとかありえないですよね。素人があんな場面ででしゃばるなよって。あんなこと警察が許すわけないもん。
実際にあった事件についてはこちらの記事(英語)が詳しいです。
>>1976 Loyada Hostage Rescue Mission
実際の事件では、4人組のテロリストたちは女装してバスに乗り込んできたそうですね。なんでそんなに面白いネタを使わなかったんだろう。もったいないなぁ。
また、被害者は女の子一人だけでなく、男の子一人がソマリア側に誘拐されてしまったそうですね。それにレスキューミッションに参加したのは国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN)だけでなく、ほかにもパラシュート部隊や複数の部隊が出撃したそうです。
そりゃそうだよね。ソマリア軍も介入してる事件なのにあんな少人数の部隊だけで対応させるわけないもん。それなのにさも少数のエリートたちが大勢を相手に戦いましたみたいなストーリーにしたのはいただけませんね。
コメント
そーかなー?その大人の事情を描くってとこが映画なんじゃないの?その承と転があるからこその結じゃないの。
むしろ承転の双方の葛藤が見せ場だったような印象を受けました。
しかしながら、現在のヨーロッパの混沌は、搾取と横暴の植民地主義が招いたことの結果だと思うと、因果応報、フランス側に全面的な感情移入できないことも確かです。
このレビュー、薄っぺらすぎますね。。笑