主演二人の演技力でなんとか形にしている雰囲気スリラー。淡々としすぎていて、なんの感想も思い浮かばないタイプの映画です。46点(100点満点)
映画サラブレッドのあらすじ
幼なじみのリリーとアマンダはある日、リリーの家で久しぶりの再会を果たす。リリーは母親が金持ちの男と結婚したことで豪邸に住み、セレブな生活を送っていた。
アマンダは喜びや悲しみといった感情を感じられない精神疾患を抱えていた。彼女にとって感情の表現は他人の物真似で、涙を流すことも一種のテクニックでしかなかった。
そんなアマンダは、リリーが継父と冷え切った関係にあることを一瞬で見抜いた。そしてリリーと継父との関係をほじくることで、リリーの信頼を得ていくのだった。
やがてアマンダは、私だったら継父を殺している、とリリーに恐ろしい提案をもちかける。リリーは必死に殺意を否定したが、継父が自分を遠くの学校に転校させ、遠ざけたがっていることを知ると、アマンダに殺害の協力を仰ぐことにする。
映画サラブレッドのキャスト
- アニャ・テイラー=ジョイ
- オリヴィア・クック
- アントン・イェルチン
- ポール・スパークス
- フランシー・スウィフト
- ケイリー・ヴァーノフ
映画サラブレッドの感想と評価
コリー・フィンリー監督による、ブラックコメディーとスリラーをミックスした家族殺しドラマ。
幼馴染の女の子二人が、意地悪な継父を憎むことでお互いを信頼していき、殺人計画を共に実行していく様子をダークなユーモアを込めて描いていきます。
大部分のシーンが、感情を表に出さず、表情をほとんど変えない少女二人の会話で構成されており、退屈するかしないかのギリギリのところを行っていますね。
撮影場所も無機質な家の中がほとんどだし、あまり映像で訴えかけてくるものはありませんでした。
これで二人の演技が下手だったら見れたもんじゃないんですが、幸い少女役のアニャ・テイラー=ジョイもオリヴィア・クックも演技が上手く、感情的にならずに終始すました顔をしている中にも微妙な表情を見せるので、一応最後までは見れました。
一方でスリラーなのか、コメディーなのかがはっきりしない点は問題ですね。思い切りスリラーに振り切ったら、もっと怖い映画になっていたのに暴力シーンがほとんどないせいでインパクトに欠けます。
かといって心理スリラーと呼ぶほどの内面的な恐ろしさが描かれているわけでもないです。
どうせ継父を殺すことをテーマにしているなら、せめてそのシーンぐらいはリアルに描かないと、少女たちの残酷性が出せないですよね。
そもそもの話をしてしまうと、殺人の動機が「嫌いだから」というのも薄いなぁ。継父によっぽどの虐待を受けていたとかならわかるけど、生理的に受け付けない、態度が気に食わない、ぐらいで殺しちゃだめでしょ。
だって年頃の連れ子と継父の関係が上手くいくほうが珍しいじゃん。実の父親にだって、年頃の子供は嫌悪感を抱いたりするんだから。
会話で大部分の時間を使っているせいか、ハプニングが少なく、それほど多くの出来事は起こりません。となると少女二人がレズになる、などの色気かなんかが欲しかったけど、結局見せ場という見せ場が最後までほとんどないのが寂しかったです。
笑いにおいても、いかんせん登場人物が無表情でシチュエーションがシリアスなため、笑っていいのかどうか判断に迷うところがありました。
もしかすると字幕や吹き替えにしたらコメディーであることすら気づかれないかもしれませんよ。
ある程度スタイルが確立された監督が微妙な皮肉とブラックなユーモアを込めてもお約束事として伝わるけど、新人監督がそれをやると、意図が伝わらないことがあって、この作品も例外ではありませんでした。
ラストのオチもいまいちです。あの状況でリリーが無罪放免になるわけないよね。そもそもアマンダには殺害の動機がないんだし、ナイフに触れただけで犯人に仕立てられるほど完全犯罪なんて簡単じゃないからね。あんな低レベルのトリックでアメリカの警察騙せないから。大人を舐めたらダメだよ。
映像でインパクトを残さないんだったら、せめてもうちょっとストーリーに捻りがないとなぁ。意外性があったのはドラッグディーラーがトンズラした下りぐらいだったし。
この映画、評価はそこそこ高かったようですが、その割には赤字になったそうですね。約500万ドルで制作して、200万ドルの赤字だって。
つまるところ売れない映画なんでしょう。これよりひどい映画は世の中にたくさんあるので、それだけでは判断材料にならないだろうけど、やっぱりバイオレンスがないと売れないんじゃないかな、ハリウッドのスリラーって。
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