演技は下手だし、BGMはないし、なにかと粗削りなものの、冷静に日本を見つめている感のあるインディーズ映画。どちらかというと女性向けです。55点(100点満点)
映画「西北西」のあらすじ
イラン人留学生ナイマはビザの問題を抱えながらも日本の大学を卒業することを目標に日々の生活を送っていた。
ある日、ナイマは喫茶店でレズビアンのキャバクラ嬢ケイと出会う。ケイは恋人のアイとの関係にどこかしっくりこないものを感じていた。
そんなときに出会ったナイマは違った文化、習慣、考え方を持ち、ケイにとってはなにもかもが新鮮だった。
そのうちナイマはケイの家を頻繁に訪れるにようになり、ケイの前でも“西北西”の方角に向けて祈りを捧げるようになった。
映画「西北西」のキャスト
- 韓英恵
- サヘル・ローズ
- 山内優花
映画「西北西」の感想と評価
中村拓朗監督による、レズビアンのカップルとイラン人女子留学生の三角関係を描いた人間ドラマ。
演技は素人演技で、テンポが悪く、終始暗くて静かで退屈する時間帯も少なくないですが、題材自体は面白いです。
物語は、イラン人の女子大生が喫茶店でキャバ嬢と知り合い、意気投合したはいいもののキャバ嬢にはレズの恋人がおり、八つ当たりされるようになる、という流れになっています。
イラン人女性と日本人レズカップルによる愛と嫉妬と友情の物語という設定が新しく、ほぼほぼそれだけで成り立っている映画ともいえます。
タイトルの「西北西」は、イスラム教のお祈りを捧げる聖地メッカの方角を表しており、ヒロインのナイマがお祈りする様子をはじめ、イランの文化に軽く触れながら、窮屈な日本社会の中で奮闘する姿を描いていきます。
喫茶店で携帯で話していると、ほかの客からうるさいと怒鳴られたり、カラオケの店員がリモコンじゃないと注文を受け付けてくれなかったり、恋人が入院してても家族以外は病室に入れてもらえなかったり、など日本社会のあるあるエピソードがいくつか登場しますが、ヒロインが外国人ということもあってか、日本人の監督にも関わらず、全体的に外国人目線で日本を見つめているような印象を受けました。
厳格なイスラム教徒のナイマと、他人のことなど気にせずに自分に正直に生きるケイ。二人はまるで正反対で、だからこそお互いに惹かれていきます。
ただし、トーンがあまりにも暗く、一緒にいて二人ともあまり楽しそうにしてないので、なんであんなにべったりになるのかは分かりませんでした。
もし恋愛対象として惹かれていたのなら、やっぱり二人のレズシーンをクライマックスに持って来ないとね。
イスラム教において同性愛なんてもってのほか。それでもナイマはケイのことが好きになってしまってどうしようもなくなる、という心境を描いてもらいたかったですね。それでナイマとケイのベッドシーンがあれば、日本どころか海外でも話題になってたんじゃないでしょうか。
このテーマでやるなら、それぐらい思い切ったことに挑戦してもらいたいけど、そんなことしたらナイマ役のサヘル・ローズがイランに帰れなくなっちゃうのかな? キスシーンももしかしたらNGなのかもしれませんね。
イラン文化を描くうえで、ヨーグルトに塩をかける、というエピソードを2,3回繰り返してたけど、あれは一回にしないとインパクトが薄れますね。それ以外はほとんどイランの文化的な会話やエピソードが出てこなかったのも残念です。恋愛映画なんだし、もうちょっと恋愛観とか結婚観とか、その辺の考えも知りたかったかなぁ。
スローで暗い映画なので、せめてBGMで盛り上げたら、もっと違った印象になっていたでしょうね。劇中にかかる音楽といえばカラオケの音だけからね。ほとんど無音で話が進むのにはさすがに眠くなりました。
また、基本登場する日本人の男はみんなクズ、という描写には笑っちゃいました。確かにああいうおっさんたち日本にいそうだけど、一人ぐらいまともな男いないのかよって。監督は男性ですが、目線は完全にフェミニストだよね。
公式サイトのインタビューを読むと、中村拓朗監督はその昔男を好きになったことがあると語っているので、もしかすると女性的感性が強いのかもしれません。この映画にしても女性監督が撮ったかのようなイメージを残すし。
ただ、若くて、可愛い女性たちを登場人物にしたからまだなんとか絵になったのかなぁ、という気もします。だってこれがゲイのおっさんカップルと、髭もじゃのイラン人男性の三角関係だったら多分誰も見ないでしょ?
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