好き嫌いがはっきり分かれそうな、微妙な路線を行くゆるい人間ドラマ。興奮とか刺激とかはないもののプロットが面白かったです。53点(100点満点)
映画羊の木のあらすじ
過疎化防止のため、元受刑者を移住させる極秘プロジェクトを実施するため魚深市は6人の元犯罪者を受け入れることになった。
プロジェクトについては市民はもちろん、市役所の人間も限られた人にしか一切知らされなかった。そんな中、元受刑者の受入れを担当することになったのが月末一だった。
月末は、駅や刑務所にまで合計6人の元受刑者を迎えに行き、魚深市を案内する。それぞれが様々な事情を抱えていたが、いずれも殺人を犯し、刑務所にいた者だった。
月末は、彼らがまた何かをしでかすのではないかと不安だったが、できるだけ誠意をもって彼らと接する。
中でも宮腰一郎とは年齢も近く、彼が月末がやっていたバンドに興味を持っていたことからも自然と友情関係を築いていく。
ところが町の守り神である、のろろ様のための祭が開かれ、6人が一つの場所に集まったことをきっかけに町の平和が崩れていく。
映画羊の木のキャスト
- 錦戸亮
- 木村文乃
- 北村一輝
- 優香
- 市川実日子
- 水澤紳吾
- 田中泯
- 松田龍平
映画羊の木の感想と評価
「クヒオ大佐」、「パーマネント野ばら」、「紙の月」、「桐島、部活やめるってよ」でお馴染みの吉田大八監督による、架空の田舎町を舞台に元受刑者たちが繰り広げる、ほのぼの殺人事件。同名漫画の実写化です。
人口の少ない田舎町の市役所が元受刑者の移住者を受け入れたことがきっかけで、様々なトラブルが起こる様子をつづった、コメディータッチのサスペンス劇で、人が殺されるのに終始ほのぼのしているのが不思議でした。
舞台は、魚深市という架空の港町なのですが、その町といい、その町に伝わる守り神、のろろ様といい、まるで実在するかのような設定の数々が面白いです。のろろ祭とか本当にありそうだもん。
フィクションの中にもそういった、さもありそうなリアリティーを創り出してくれているおかげで抵抗なく話に入っていくことができたし、最後まで苦痛を感じずに見れました。
退屈で殺風景な田舎町の風景がテーマとマッチしていていいですね。町を歩く人は少なく、子どもたちはのろろ遊びをし、若者は倉庫でバンドをやり、少ない娯楽の中で生きている感じが伝わってきます。
あんな場所だったら、元受刑者でも呼ばないと、本当に誰も移住してくれないのかもと思わせます。
俳優たちは主人公の錦戸亮をはじめ、北村一輝、松田龍平、水澤紳吾など、それぞれが大げさなことはせずに自然体の演技をしていて好感が持てました。
ただ、元受刑者が6人も必要だったかどうかは疑問です。市川実日子扮する酒乱でDVの彼氏を殺してしまった過去を持つ栗本のキャラクターとか、タイトルの「羊の木」を連想させるだけの役割しかなく、あまりストーリー上意味を成していないですよね。
優香扮する介護士の女もお色気要員でしかなかったですね。キスシーンは悪くなかったけど。
出所後の6人の魚深市での生活がメインのテーマとなるのかと思いきや市役所職員の月末の視点で、6人を心配しながら見守っていく形で物語が進むため、それほど6人が交わることなく終わっていくのも残念な点です。群像劇としてはいまひとつかな。
殺人事件を絡めて終盤にはちょっとしたクライマックスがあったものの6人の中に犯人がいる、といった犯人捜しの映画ではないし、恋愛要素はあっても恋愛劇でもないし、いい意味でも悪い意味でも最後まで掴みどころのない映画ですね。
テンポが良ければ、もっと面白くなってるんですけどね。後半ダラダラするのがもったいなかったです。
だから見どころは?と言われると、難しいところです。暴力シーンにおいては車でひき殺す下りかな。のろろ祭のシーンも僕は好きです。あんな祭りあったら見に行きたいもん。のろろ様を見ちゃいけないって言い伝えがあるのに顔を上げた杉山はまんまと死んだしね。
でもなんだかんだいって、優香のキスシーンが一番印象に残ったかも。あのままお爺ちゃんとベッドインくれれば最高だったのになぁ。
ラストは、月末は恋する石田とラーメンを食べに行けたんでしょうか。それともあれはただの勘違いだったのか。石田は悪い女の雰囲気がバリバリ出てたから、思わせぶりな行動だったともいえそうですね。
なんだったらラーメン屋のシーンで終わっても良かったけど、おそらくベタなハッピーエンドにはしたくなかったんでしょう。なにかと深読みさせようといった演出も目に付くし、素直じゃないなぁ。
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