カンヌ国際映画祭で上映され、高い評価を得たカナダ映画。ただの仲良し家族ドラマに終わっていないのがいいです。55点(100点満点)
マイ・マザーのあらすじ
16歳のユベールは母親のシャンタルに対して、複雑な思いを抱えていた。母のことは愛している。しかし生理的に合わない彼女と共に暮らすことは耐えがたかった。
特に母の食べ方や喋り方が嫌いだった。二人は口を開けばすぐ喧嘩になり、どれだけ一緒に暮らすのが苦痛か、という話になった。
一緒に住むのが嫌なら18歳になったら出ていけばいい、とシャンタルは言った。また、離婚した父親と住めばいいとも話した。
子供の頃はよく話もしたし、仲が良かったのに一体なぜこうなってしまったのか。仲良くしたいけどできない。その葛藤に二人はもがき苦しんでいく。
マイ・マザーのキャスト
- グザヴィエ・ドラン
- レミング:アンヌ・ドルヴァル
- フランソワ・アルノー
- スザンヌ・クレマン
マイ・マザーの感想と評価
「Mommy/マミー」、「トム・アット・ザ・ファーム」、「胸騒ぎの恋人」、「たかが世界の終わり」、「わたしはロランス」、「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」などでお馴染みのカナダが生んだ才能溢れる監督、グザヴィエ・ドランの長編デビュー作。
仲の悪い親子の関係をつづった人間ドラマで、19歳にしてグザヴィエ・ドランが監督のみならず、脚本、主演もこなし、世界中で称賛された映画です。
話の大部分が母親と息子の親子喧嘩によって構成されていて、反抗期の高校生とヒステリックなシングルマザーのリアルな会話を見るための物語です。つまりほぼほぼ脚本と演技だけで成り立っている、といえそうですね。
自分の母親のことが苦手な人が見たら共感できるだろうし、逆に息子が反抗期のお母さんが見ても感情移入できるんじゃないでしょうか。
グザヴィエ・ドランがこの映画の脚本を書きあげたのは16歳のときだったそうです。母親と息子のやり取りが生々しいのは実体験がベースになっているからでしょう。
愛憎交じりの絶妙な親子関係を描いていることもあり、主人公の態度が反抗期だった昔の自分を見ているようで胸が痛かったです。うわあ、自分もこんな感じだったわぁ、と思い当たる人も少なくないんじゃないでしょうか。
撮り方は上手いし、なによりイケメンの自分が絵になることを理解したうえで作っている感があります。そういう意味ではかなりナルシストな作品ともいえますね。
監督本人がゲイということもあり、物語に登場する男はゲイばかりです。それもみんな若くて色気のある、ゲイにも女性にも好かれそうな男たちばかりで、あの辺のキャスティングは上手いですね。音楽の使い方にもセンスが感じるし、これがデビュー作だなんて恐ろしいな。
グザヴィエ・ドラン監督はこのときから今に至るまで一貫してホモセクシュアリティを堂々と描いてきていて、LGBTコミュニティーによる支持も高そうですね。10代のときから同性愛の絡みのシーンにも挑戦したり、とか普通に考えてもすごいよね。
母親も息子もお互いにキレるポイントが違うのが面白いですね。つまり価値観が全然合わないわけで、どうしても相容れない関係なのが分かります。
お母さんは、息子をビデオレンタルに連れて行って、車で待ってるから借りてきなよ、と息子を一人店内に行かせたくせに、なかなか戻って来ないとブチ切れ出すのが笑えました。
息子は息子でドラッグでハイになってるときにお母さんにベタベタしたり、気分がいいときだけ「愛してる」を連発したり、二人のツンデレ具合が躁鬱っぽいです。二人とも病気なのかな、とも思えるようなアップダウンの激しさでした。嫌だなあ、あんな親子。
全体的に細かい描写が光っている作品である一方で終始、仲の悪い親子が喧嘩しているだけといえば、それまでです。なので、終盤にもうちょっと劇的な展開が欲しいところですね。
原題通り、息子が母親を殺す、というストーリーでもよかったかなぁ。多くの視聴者は、そう思ってこの映画を見たんじゃないのかな。ずっと親子でドロドロの戦いを繰り広げて来たんだからハッピーエンドにしなくていいですよね。
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