口コミやネットで話題になった学園ドラマ。つまらない恋愛にフォーカスするのではなく、学生たちのLGBTに対する偏見と差別を浮かび上がらせる物語。なによりリアリティーがあるのが素晴らしいです。68点(100点満点)
カランコエの花のあらすじ
田舎町の高校である日、授業を担当する教師が休んだため代理で保険の先生が唐突にLGBTをテーマに授業を行った。
ほかのクラスでは同じ授業がなかったため、生徒たちの間でまさかこのクラスにLGBTの子がいるのではないか、といった噂が広がる。
すると、クラス内では犯人捜しが始まり、クラスメイトたちの間で次第に不信感が漂っていく。そんな中、一人の女子生徒が重い口を開いた。
カランコエの花のキャスト
- 今田美桜
- 石本径代
- 永瀬千裕
- 笠松将
- 堀春菜
- 手島実優
- イワゴウサトシ
カランコエの花の感想と評価
中川駿監督による、LGBTをテーマにしたショートムービー。ゲイやレズといった性的指向を持つ人に免疫がない、田舎の高校生のリアルな心理と反応を描いた完成度の高い映画です。
ネット界隈で密かに話題になっていたので見てみたら、生徒役を演じた俳優たちの演技は上手いし、セリフは自然だし、脚本はとてもよく書けていて、面白かったです。わずか39分の短編映画だけど、テーマもいいし、長編にもできそうですね。
生徒同士の会話のやり取りがものすごいリアルで、いかにも高校生が言いそうなことをネタにしているのがいいです。
高校生特有のバカさとか、若さとか、未熟さとか、感受性の強さとかが言動に現れていて、中川駿監督のセンスの良さを感じさせます。
この子たちは今までどこに隠れてたんだろうっていうぐらい演技も上手いです。強いていうなら保険の先生の演技だけ酷かったけど。
物語は、担任の先生が休みになった穴を埋めるため、保険の教師が代わりに授業をやりにクラスに来るところから本題に入ります。
保険の教師は、実はその前日に女子生徒のさくらから、クラスメイトの女の子が好きで悩んでいると相談を受けていました。
それがあってか授業中に先生はLGBTをテーマに講義をしますが、勘のいい生徒たちは、なんで急にこのタイミングでそんな話題が出るんだと不思議がり、それってもしかしてこのクラスにLGBTの生徒がいるってことじゃない?と騒ぎ出す、というのがストーリーの流れです。
LGBTの人と接したことのない田舎の生徒たちのことだから、噂が広がるにつれダメだと分かっていても嫌悪感や差別をむき出しにしていきます。
差別意識がない生徒たちも騒ぐ生徒たちにどのように対応するのが正解なのか分からないといった感じで、まるで同性の女子生徒を好きになったさくらが悪いことをした犯人であるかのように追い込まれていく様子が残酷であると同時に学校特有の閉鎖感をものすごく上手に描いていました。
特にさくらの友達がなにもしてやれない、何をしていいか分からないみたいな一種の冷たさを見せるところが女子高生ぽかったです。
庇うのもおかしいし、否定するのも変だし、ただ見つめるしかないってあいつら怖いなぁ。別にレズでもいいじゃん。何の問題があるの?って誰も言えないのね。
噂が広がってから女子生徒たちが服を着替えるときに体を隠す下りとかさもありそうだな話でした。
最初に茶化して騒ぎ出した男子生徒たちが悪いのはいうまでもないけど、それ以上に保険の先生がバカですね。
正直、あの授業をやるタイミングが悪すぎたし、授業中には差別はダメだとか偉そうに言っておきながら男子生徒が犯人捜しを始めているのを見ても、本気で叱らないとか無責任にもほどがあるでしょ。
生徒が引くぐらいブチ切れてどれだけシリアスな出来事なのかを体を張って分からせてやるぐらいじゃないんだったら偉そうに教壇で語るなよ、偽善者が。
高校生たちの反応は未熟さゆえの結果といった感じでまだ理解できても、問題が起こったときの大人たちの反応が一番汚いですね。
生徒たちが休み時間になると保健室に遊びに行くのってなんでなんだろうね。そういえば僕も行ってたわ。保険の先生ってなぜか美人が多いんですよね。でもたとえ美人だとしてもあんなクズ教師には絶対恋愛相談しちゃダメだね。あいつただのゴシップ好きだろ。
さて、保険の先生に対する怒りはそれぐらいにしておいて、これから学校の授業でLGBTの話をするときは、この映画を生徒たちに見せればいいかもしれませんね。
ハッピーエンドにしていないので、偽善で終わっていないし、色々と考えさせられるんじゃないでしょうか。それぐらい短い時間の中で差別と偏見を上手くまとめていました。
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