問題は多々あるけど、全体的に面白くて笑える娯楽映画。大勢のキャラクターたちがいい味だしています。67点(100点満点)
夢売るふたりのあらすじ
市澤里子と貫也の二人は夫婦で小料理屋を営んでいた。店は繁盛し、客受けは良かったものの、ある日調理場から火が出て大火事になってしまう。
それを機に里子はラーメン屋で働くことになり、貫也はプライドや口ばかりでなかなか仕事にありつけなかった。
そんなとき、貫也は小料理屋の女性客と駅のホームで鉢合わせし、ひょんなことから関係を持ってしまう。するとその女性は愛人からもらったばかりの大金を貫也に渡すのだった。
貫也は大金を持って大喜びで家に帰ったはいいが、浮気をしたことをすぐに里子に見破られてしまう。
その瞬間、逆上した里子の中で何かが変わり、それ以来お金を持っている女性に貫也を近づかせ、大金を貢がせる詐欺を夫婦で共謀して行うことに。しかしそれは二つの破滅の始まりでもあった。
夢売るふたりのキャスト
- 松たか子
- 阿部サダヲ
- 田中麗奈
- 鈴木砂羽
- 安藤玉恵
- 江原由夏
- 木村多江
- やべきょうすけ
- 大堀こういち
- 中村靖日
夢売るふたりの感想と評価
「蛇イチゴ」、「ゆれる」、「永い言い訳」、「ディア・ドクター」、「すばらしき世界」などで知られる西川美和監督による、詐欺夫婦の転落物語。
コメディーと群像劇とサスペンスドラマをミックスしたかのようなエンタメ映画で、笑えるし、楽しめます。特に前半はテンポが良く、たくさんの展開があって、目が離せないです。
一方で後半になると、回り道をしているかのような、あるいは着地点をずっと探して、戸惑っているかのような失速を見せ、長いと感じさせてしまうのが残念でした。上映時間は2時間17分もあって、もっと削れるなぁ、と思えましたね。
ストーリーは、夫婦の料理屋が火事になる>お金に困る>夫が浮気をして浮気相手からお金をもらう>貢がせることに味を占める>次々とターゲットを決めお金を巻き上げる>夜逃げする>やがて被害者に探偵を雇われて追い込まれる、という流れになっています。
プロットは素晴らしいし、演技は悪くないし、無駄を省けばもっといい映画になりえたのになぁ、という気がしますね。
ちょいちょい不必要なシーン、または理解できないシーンが混ざっていて、松たか子扮する里子が生理用ナプキンをつける下りとか、突然ズボンを下ろしてお尻を見る下りとかいるかなぁ。あれの意図するものがよく分からなかったです。
それに対し、ちょくちょくベッドシーンを挟んで色気を出しているのがいいし、ところどころで登場人物たちのキャラが際立っています。
ウェイトリフティングの女性選手や風俗嬢とか年齢をごまかしてる年増の女とか、それぞれ役柄がリアルでした。
お金を貸してって言われたら断れない地方出身の風俗嬢の感じとか、あれすごいね。お金に執着がなさすぎて借金抱えている、ああいう子いそうだもん。
プレーの最中に奥さんの名前を言わせる浮気相手も笑えます。あの年齢で30歳って年齢をごまかしてましたね。今はまっていることは星占いっていうのがバカでいいです。
一番インパクトに欠けるのはむしろ主人公の松たか子と阿部サダヲのキャラでした。阿部サダヲっていつもダメ男キャラじゃないですか。「彼女がその名を知らない鳥たち」のキャラとかなり被ってました。
あの外見とキャラでどうやって次々と愛人作れるんだよって突っ込まずにはいられなかったし、どうせならウェイトリフティングの選手とのキスシーンやベッドシーンも入れないと。それをメインにしてもいいぐらいだったのに。
松たか子は相変わらず振り切れてないのがダメですね。狂気を感じられない演技はいつ見ても同じです。
西川美和監督の作品を見る度に思うのは、オチがスパッときまらない、すっきりしないところがある点ですね。かといって余韻を残す、謎を残すというのともちょっと違うんだよなぁ。
つまり締りが悪いんですよ。すごく楽しかったのに支払いのときに揉める飲み会みたいな終わり方になりますよね。詐欺夫婦の転落と別れを描くならもっと思い切り地獄に落とせばいいのに。なんでそこをびしっと決めないのよ。
果たして二人はお互いを愛していたんでしょうか。店を出す資金を貯める目的のために手段を選ばず、せっせと詐欺を働いてきた二人でしたが、いつしかフェードアウトしていって何のために犯罪に手を染めてきたのかすら忘れてしまうような結末を迎えるのが悲しいですね。
そして最後のカモメは一体何を意味していたんでしょうね。
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