めちゃくちゃな設定の中にろくでもないオチを用意しているウンコホラー映画。怖くないし、ラストはパクリです。22点(100点満点)
マローボーン家の掟のあらすじ
1960年代末のアメリカ・メイン州。緑豊かな片田舎にひっそりとたたずむ古めかしい母がかつて住んでいた屋敷に、母の姓マローボーンと苗字を変え4人兄妹が引っ越してきた。責任感の強い長男ジャック(ジョージ・マッケイ)、家族思いの長女ジェーン(ミア・ゴス)、頭に血がのぼりやすい次男ビリー(チャーリー・ヒートン)、まだ幼くて天真爛漫な末っ子サム(マシュー・スタッグ)。祖国イギリスでの悲惨な過去を捨てて彼らは、この人里離れた屋敷で新しい人生を踏み出そうとしていた。
しかしその矢先、心優しい母親ローズ(ニコラ・ハリソン)が病に倒れ、この世を去ってしまう。「皆を守ってね。どんなときも」。ローズの遺言を胸に刻んだジャックは妹と弟たちに呼びかけ、「誰も絶対に僕たちを引き裂けない。僕らはひとつだ」と固く誓い合う。 すると間もなく、突然の銃声によって兄妹は恐怖のどん底に突き落とされる。イギリスで悪名を轟かせた凶悪殺人鬼の父親(トム・フィッシャー)が脱獄し、執念深く彼らを追ってきたのだ。ジェーンの絶叫を耳にしたジャックは、血も涙もない父親に敢然と立ち向かっていくのだった……。
6ヵ月後。ジャックが父親を殺害したことで、4兄妹は静かな日常を取り戻していた。それでもジャックの内心は穏やかでない。どこからともなく響いてくる不気味な物音、天井ににじみ出す異様な黒い染み。兄妹以外の誰かが徘徊しているような気配が漂うこの屋敷は、明らかに何かがおかしい。臆病なサムは暗がりや鏡に”オバケ”が現れるのではないかと、いつもビクビクしている。それは死んだ父親の呪いのせいなのか、それとも屋敷そのものに忌まわしい秘密が隠されているのか。
不安げな妹や弟たちを案じたジャックは、母の死後に生まれた「成人になるまでは屋敷を離れてはならない」「鏡を覗いてはならない」「屋根裏部屋に近づいてはならない」「血で汚された箱に触れてはならない」「”何か”に見つかったら砦に避難しなくてはならない」という5つの”掟”を厳守するよう言い聞かせていた。
妹弟の親代わりを務めるプレッシャーに押しつぶされそうなジャックの心のよりどころは、地元の美しく聡明な女性アリー(アニャ・テイラー=ジョイ)の存在だ。ある日、街の図書館に務めるアリーのもとを訪ねたジャックだが、そこで弁護士のポーター(カイル・ソラー)から思いがけないことを告げられる。彼らが屋敷を正式に相続するために、母親ローズの署名と手数料200ドルが必要だというのだ。
母親が死亡した事実を隠し、生活資金も残りわずかのジャックは動揺を隠せない。そして妹弟と相談した結果、ジェーンが母親の筆跡を真似て書類にサインし、父親が犯罪で稼いだ”箱”の中の大金に手をつけ、急場をしのぐことにする。しかし、それは「血で汚された箱に触れてはならない」という自分たちの掟に背く行為だった。
初めて掟を破ったその直後から、兄妹は次々と悪夢のような事態に見舞われていく。母親の部屋にこっそり入ったサムが、誤って鏡を覗いてしまい、得体の知れない影を目撃。掃除中に奇妙な音を聞いたジェーンは、天井裏に潜んでいた正体不明の何かの手に触れられ戦慄する。
さらに、煙突から屋根裏部屋に忍び込んだビリーだが、屋根裏に潜む何かに襲われて重傷を負ってしまう。 果たしてマローボーン家の屋敷に潜む”何か”とは?そしてジャックを容赦なく苛んできた本当の恐怖の正体とは……。
マローボーン家の掟のキャスト
- ジョージ・マッケイ
- アニャ・テイラー=ジョイ
- チャーリー・ヒートン
- ミア・ゴス
- マシュー・スタッグ
- カイル・ソーラー
マローボーン家の掟の感想と評価
「インポッシブル」や「永遠のこどもたち」の脚本家のセルヒオ・G・サンチェスが監督したスペインとアメリカの合作ホラー。
演出は中途半端、編集はごちゃごちゃ、ストーリーは辻褄が合わず、ラストのオチだけで丸く収めようとしている駄作です。
特に編集が下手クソすぎて、現在と過去の見せ方があまりにもいい加減なので見ていてイライラさせられますね。
時間の進み方にも一貫性がないし、話が進んだり戻ったりするせいで紛らわしいし、監督が自分の頭だけで理解しているストーリーを視聴者に伝えきれていない感が半端ないです。つまりは作り手の自己満足とエゴによって成り立っています。
だいたいなんでこんな無理な設定にするんだろう。
- シングマザーが4人の子供を連れてイギリスからアメリカに移住(でも仕事もなければお金もない)
- 家族はお母さんの故郷にある屋敷に住み始める(でも家の手続きはやってない)
- お父さんは凶悪犯罪者(でも簡単に脱獄できちゃう)
- お父さんが家族を追ってくる(逃亡の身でありながらイギリスからアメリカまでどうやって来たのかは不明)
- お母さんが突然病気で死ぬ(いつからなんの病気だったの?)
- 残された子供たちがお父さんの恐怖に怯える
この時点で辻褄もへったくれもなく、話についていけないレベルですよね。家族がイギリスからアメリカに移住してきた理由は、凶悪犯罪者の父親の呪縛から逃れるためらしいんだけど、そもそもそんな悪い男と4人も子供作ってるお母さんのほうが頭おかしいじゃん。一番下の子は結構小さいし、最近までラブラブかよ。
そんでもって財産もないし、体が弱くて病気がちなくせに体力もお金もかかる移住なんていう大変なことをして、子供たちを残して自分だけ死んでいくっていうね。どんだけ無責任なんだよ、お前は。イギリス内で引っ越せよ。
挙句の果てには、自分が死ぬ間近になったら長男に成人する21歳になるまで身を隠して生きろ、家を出るな、じゃないと家族がバラバラになるから、などと無茶苦茶なアドバイスを残していくのがバカですねぇ。
家から出るなってつまりは働くなってことだからね。それなのにみんなでいつも一緒に助け合って生きなさいだってさ。支離滅裂かよ。僕からしたらあの母親が一番のお化けでしたね。父親の悪さなんてまだ可愛いもんですよ。
対する父親の行動もまた意味不明で、自分を刑務所送りにした子供たちを追っかけてわざわざイギリスからアメリカまで復讐しに来たくせに、「お父さんが来たよー」ってことを遠目から銃で撃って知らせてしまう低能ぶりだからね。どうせならこっそり近づいて至近距離で撃てよ。
脱獄者の身でどうやって海を渡れたのか謎だし、追われ身にしては綺麗な恰好してたよね。それにあのクズ親父はなんで一言も話さないんですか? 何がしたいのかさっぱり分からないし、お化けなのか生きてるのかなんなんだよ。夫婦そろってポンコツかよ。
あと、この邦題なんなんだろうね。原題は「Marrowbone マローボーン」で、劇中でも掟がどうとか全く言ってないのに公式サイトでは「マローボーン家には5つの掟がある」とか言って勝手に拡大解釈を加えちゃってるからね。乱暴すぎるでしょ。
その掟がまた笑えます。
- 成人になるまでは屋敷を離れてはいけない
- 鏡を覗いてはいけない
- 屋根裏部屋に近づいてはいけない
- 血で汚された箱に触れてはいけない
- ”何か”に見つかったら砦に避難しなくてはいけない
掟なんていう概念がテーマになっていないので、ぶっちゃけ兄妹たちは以上の全てを破ります。
屋敷は離れ放題だし、鏡は覗きまくり、屋根裏部屋には行きまくり、箱に触りまくりで、避難はしないっていうね。ギャグかよ。
ここまでプロットが穴だらけだと、もう救いようがないです。それでもサプライズ好きの人はラストで、なんとなく騙されたーって思っては満足してしまうんでしょうか。こんなもんで騙されてちゃダメだよ、まったくもう。
マローボーン家の掟のラスト(結末)のネタバレ
父親が家の前に現れ、身の危険を感じた長男のジャックは、兄弟たちを屋根裏部屋に隠れさせ、ビーチで父親に戦いを挑みます。
しかし父親はジャックを崖に落とし、屋根裏部屋の兄弟たちを片っ端から殺していたのでした。
ジャックは事実に目をつぶるように屋根裏部屋をドアを塞ぎ、兄弟たちがまだ生きているかのように錯覚し、頭の中だけで兄弟たちの存在を作り上げます。
そしていつしか彼の中に兄弟たちの人格が芽生え、多重人格障害に陥る、というオチになっていました。
つまりジャックの兄弟たちはかなり早い段階で死んでいたことになり、鏡を見てはいけないのは一人であることを気づかないようにするためで、屋根裏部屋に近づかないのは兄弟の死体を見ないようにするためだったのです。
そもそもジャックが多重人格障害者なら、なんで恋人のアリーは気づかねえんだよっていう話だし、気づいてからも「私、彼と一緒に住みます」みたいな愛情描写いらないから。どうやって付き合うんだよ。
このラストを見たときに真っ先に思い浮かんだのが同じく多重人格をオチにした映画「アイデンティティー」ですね。「アイデンティティー」に限らず、散々ほかの作品で使われたオチを今になって持ってくる監督のセンスを疑いました。
なにより主人公を多重人格にしたらなんでも丸く収まると思ってるノリが腹立ちますね。お願いだからほかのオチちょうだい。
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