事件発生からすでに10年以上が過ぎたイギリス人少女の失踪事件を掘り越した衝撃のドキュメンタリー。サスペンスやミステリー映画見てる場合じゃないと思える不可解で不気味な話です。68点(100点満点)
マデリンちゃん失踪の真実
ポルトガルのリゾート地で休暇を楽しんでいた一家を襲った悪夢。3歳の英国人女児マデリン・マクカーンの失踪事件に光を当て、その詳細をつぶさに検証していく。
ネットフリックスより
マデリンちゃん失踪の真実の感想と評価
ネットフリックスがお届けする、マデリン・マクカーン失踪事件の裏側を詳細にわたってつづったドキュメンタリーシリーズ。
2007年、ポルトガルのリゾート地で何者かによって連れさられたイギリス人少女マデリンちゃん(当時3歳)をめぐって巻き起こったドロドロで無慈悲な悲劇のリアルストーリーで、「FYRE・夢に終わった史上最高のパーティー」のクリス・スミス監督作品です。
事件当日実際どんなことが起きたのか。家族たちはどんな状況に置かれていたのか。また、事件後警察によってどんな捜査が行われたのか、両親がどんな悲惨な目に遭ったのかなど信じられない出来事の数々を明かしていきます。
記憶が曖昧なことや断片的にしか情報を見聞きしていないため、僕自身事件についてちゃんと理解していませんでした。特に次のような背景があったことは知らなかったです。
- ケイトとジェリー・マクカーン夫妻にはマデリンちゃんのほかに双子の兄妹がいる。
- マデリンちゃんは人工授精によってケイトとジェリー・マクカーン夫妻の間に生まれた念願の最初の娘だった。
- 事件現場となったリゾート地にケイトとジェリー・マクカーン夫妻は自分たちの子供や多くの友人家族と一緒にグループで来ていた。
- 事件が起こったとき大人たちは子供たちをホテルの部屋に置いてホテルの敷地内のレストランでディナーを楽しんでいた。
- 事件が起きたアルガルヴェはポルトガルののどかで安全なリゾート地としてイギリス人に人気だった。
- ホテルの部屋には鍵がかかっておらず、セキュリティーも甘く、誰でも簡単に入れるような状態だった。
- 街には監視カメラがほとんどなく、容疑者の目撃者も少なく、証拠もほとんど残っていなかった。
- 誘拐されたのはマデリンちゃんだけで、双子は無事だった。
観光客が大勢いるリゾート地で外国人の子供を誘拐したら普通に考えたら人目に付くし、ポルトガル人には到底見えない金髪の少女を国内で何者かが連れて逃げたら目立って、すぐに目撃情報が出回りそうなものですが、この事件に関しては手がかかりとなる情報があまりにも少なすぎるのが特徴ですね。
その理由の一つとしてまず地元警察があまりにもポンコツで、現場にかけつけるまでに時間を要し、さらにただ事ではない状況を見てもなおまともな捜査をしなかったから、ということが考えられそうです。
事件が起きてから真っ先に動いたのはむしろ警察ではなく、ホテルの宿泊客や地元住民だった、というのだから驚きですね。みんなで手分けして探したんだけど何一つヒントになりそうなものすら見つからなかったんだって。
実際、捜査に関わったポルトガルの警察にもインタビューしていますが、奴らの頭の悪さ加減は尋常なレベルじゃなかったです。これは解決できる事件も未解決になるわ、と思わせられるほどでした。
ポルトガル警察の初動があまりにも遅かったため、当然ながらケイトとジェリー・マクカーン夫妻は怒りとフラストレーションを覚え、ポルトガル警察に不信を抱きます。
そもそも英語もろくに通じないし、捜査をまともにやる気のない警察を相手にするのは時間の無駄だと思ったのでしょう。それなら自分たちで探したほうがましだわと思うのも仕方がないことです。そして両者の関係性はたちまち悪くなり、その後の悪夢の始まりとなります。
なかなか捜査が進展しない中、あろうことかポルトガル警察は、ケイトとジェリー・マクカーン夫妻を事件の第一容疑者に仕立て上げたのです。
当時の捜査を仕切っていたのが司法警察チーフ捜査官のゴンサーロ・アマラウ。彼は後に本まで出して、事件についてあることないこと語っています。お前は、どの面下げてインタビューを受けてるんだって。
面子をつぶされた権力を持つ機関がやることって世界中どこでも同じなんですね。「殺人者への道」ではアメリカの警察や司法の腐敗ぶりが伝えられましたが、このシリーズではいかにして両親をはじめメディアから批判を受けたポルトガル警察が汚名返上のために被害者であるはずのケイトとジェリー・マクカーン夫妻を起訴しようとしたかを解説しています。
普通に考えても、子供を殺そうとしている両親がわざわざ大勢の友達家族を連れてポルトガルのリゾート地まで行く? マクカーン家族を含む一緒に宿泊した人たちは総勢大人9名子供8名だからね。全員が共犯者ってこと?
そんな状況も無視してまず無能ポルトガル警察がやったことは警察犬が事件現場のホテルと夫婦が借りたレンタカーで反応を示したところを映像に残し、それを証拠だとしてマデリンちゃんはホテルの部屋で殺されたと主張します。
その警察犬がまたどう見てもそこら辺にいるアホなペット犬にしか見えないから恐ろしいんですよ。
たとえ優秀な警察犬が吠えたからといってそれ自体は証拠にならないのに、あたかも証拠が見つかったとばかりにメディアを印象操作したのが許せないですね。
もう一つの”証拠”としているのがレンタカーの中で発見された”マデリンちゃん”のDNA。だいいちそのレンタカーは事件から何日も経ってたら借りられた車です。
それに血のつながっている家族のDNAがマデリンちゃんのDNAとある程度一致するのは当たり前の話なのに、あたかもレンタカーを使って遺体が運ばれたかのような筋書で、夫婦を刑務所に送ろうとしたわけです。ありねぇ。
本当にこれで有罪にできると思ったんですかね。最終的には容疑が晴れたのでケイトとジェリー・マクカーン夫妻は容疑者から外されましたが、その間にはメディアにあることないこと報じられ、二人は地獄の中をさまよったようです。
やれジェリーは本当の父親ではないだ、やれケイトは冷酷なモンスターだの、すでに大きな苦しみの中にいる二人がメディアや人々の憶測によって二重三重の苦しみを受けるはめになったことについては、ただただ気の毒で仕方なかったです。
また、無能な警察の捜査とメディアの餌食になったのは二人だけじゃありません。地元の善良な市民や外国人も証拠もないのに容疑者にでっちあげられ、幼児愛者やレイプ犯などとレッテルを貼られて人生を狂わされています。
たった一つの事件をめぐって、本当にたくさんの人々が被害にあったんですね。悲劇がまた別の悲劇を生み、連鎖していく様子が人間社会の闇を映し出しています。
一方でケイトとジェリー・マクカーン夫妻を救うために協力を名乗り出る心優しい人々もいました。起業家であり、億万長者のイギリス人ブライアン・ケネディーがその一人です。
大金持ちの彼はポケットマネーからマデリンちゃんの独自捜査にかかる費用を捻出してくれたのです。いるんだねぇ、そんなスーパーヒーローみたいな人が。
ところがスペインやアメリカの有名な私立探偵の事務所に捜査を依頼しても、マデリンちゃんの事件を売名行為に利用されたり、そもそも捜査してるフリだけして何もしていなかったという詐欺にあったり、とケイトとジェリー・マクカーン夫妻はまたまた散々な目に遭います。
もう誰を信じていいのかね。普通の精神力なら自分の娘を失って、犯人扱いされて、詐欺の被害にあってってここまで不運が続いたら立ち直れないですよね。
事件が起きてからすでに10年以上が過ぎています。いまだに娘がどこかに生きているはずだという希望となにがなんでも探し続けるという強い意志が彼らを動かしているのでしょうか。お父さんとお母さんって強いなぁ。
同シリーズは事件をとても分かりやすく再現し、当事者のインタビューを通じて、心境を伝えているので見ごたえは十分でした。人間って醜いなあ、と思わせると同時に両親のゆるぎない姿勢が同情と感動を誘います。
一つだけ気になることがあるとしたら、それはケイトとジェリー・マクカーン夫妻がインタビューに応じていない点です。あるとすればそれは過去のインタビュー映像だけです。
本人たちの口から今の気持ちを聞いてみたい気もしましたが、メディア不信に陥ったために出演することで真実を曲げられるリスクがあるために拒否したのかもしれませんね。それはそれで理解できます。
それにしても最近、子供が行方不明になると真っ先に両親が疑われることが多くなりましたよねぇ。実際、家族で犯人である場合もあるけれど、根拠も証拠もないのに容疑をふっかけるメディア、まじ死ねよ。
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