心理ホラーに見せかけた、演出ベタなサスペンス劇。古くて、退屈で、つまらないです。30点(100点満点)
ザ・バニシング-消失-のあらすじ
オランダ人のレックスとサスキアはフランスまで車で旅行に来ていた。ところが途中、サービスエリアで休憩すると、サスキアが飲み物を買いに行ったきり、車に戻って来なくなる。レックスは辺りを探し回るが、サスキアは完全に姿を消してしまった。
三年後、レックスはまだサスキアのことを探していた。その間、彼は犯人と名乗る男からポストカードを何枚も受け取っていた。
犯人はレックスにフランス南部の都市ニームのカフェで会おうと誘いだし、彼の姿を観察しては楽しんでいた。
やがてレックスはテレビに出演し、犯人に何が起こったのかを知りたいと呼びかけると、犯人はついにレックスの要求に応じることにする。
ザ・バニシング-消失-のキャスト
- ベルナール=ピエール・ドナデュー
- ジーン・ベルボーツ
- ヨハンナ・テア・ステーゲ
- グウェン・エックハウス
ザ・バニシング-消失-の感想と評価
「ダーク・ブラッド」、「失踪」などで知られるジョルジュ・シュルイツァー監督によるサイコスリラー。ティム・クラベーの小説「失踪」の実写化で、ハリウッド版にリメイクされた映画「失踪」のオリジナル版がこれです。
1988年に製作された映画ですが、2019年にもなってやっと日本で劇場公開されるって今更感が半端ないですね。
どちらかというと、「失踪」のほうがテンポが良く、分かりやすくて見やすいですね。同じ監督が撮ってもハリウッド映画になるとエンタメ度が上がってちゃんと大衆向けに仕上がるのが不思議です。
それに対してこの映画はいかにも欧州映画といった感じのスローな演出に終始して、決して核心に触れず、多くを見せずにじわじわ怖がらせようとするマニア向けの作りになっています。
誰が言ったか知らないけど、「サイコ・サスペンス映画史上ナンバー1」の傑作らしいです。公式サイトにまでそんなふうに書いてあります。
視聴者がそう言ってるならまだしも、売る側が「ナンバーワン」とかいい出して本当にそうだった試しがないからね。
笑えるのが公式サイトには「スタンリー・キューブリック監督震撼」などと書いてあるんですよ。
「ナンバーワン」とか言いながらキューブリックの名前を借りるなよ。有名監督の名前を借りないと箔がつかないと思ってるのが滑稽だし、自信があるのかないのかよく分からないキャッチコピーの数々がうざいです。
いざ、ナンバーワン映画を見て思ったのは、リアリティーはなかったし、なにより恐怖を全く感じませんでしたね。せめてもっと怖がらせてよ。
元も子もない話をすると、そもそもあんなダサいキーホルダーを知らない人からサービスエリアでわざわざ買わないから。百歩譲って買うとしてもキーホルダーのために今さっき会った男の車に乗らないじゃん。ガード甘すぎ。
サイコパスが実は家族持ちで、裕福な男だという設定はまだいいでしょう。家族から見たら優しくて正義感の強い父親。でも被害者から見たら冷酷な殺人犯という二面性のある犯人がいてもおかしくはないです。
それに対し、最大のミスはサービスエリアで失踪した女性に何があったのかをオチにしている点で、それ以前のエピソードは全てフリになっている構成ですね。
殺人のシーンもなければ、田舎町まで被害者をどうやって連れて行ったのか、その後彼女に何をしたのかという具体的なシーンが何もなく、映像的な恐怖は何一つないのです。
つまり全ては視聴者の想像に委ねる丸投げ映画になっていて、それをサイコサスペンスって呼ばれてもね。それなら映画じゃなくて小説読むよ。
それも事件直後ではなく3年も経った後の出来事を中心に描いているため、当然被害者は死んでる可能性のほうが高いから一番の見せ場であるラストの終わり方がサプライズになってないんですよ。
むしろあれならどこかに監禁されていてまだ被害者が生きているほうがゾッとするけどなぁ。「シークレット・アイズ」としてリメイクされた「瞳の奥の秘密」がそうだったけどね。
そもそもなんでレックスが犯人と直接会って、ノコノコ犯人の車に乗って仲良く遠出しちゃってんだよって思いましたね。
たとえサスキアに何があったのか知りたかったとしても知るためならなんでも犯人の言うこと聞きますってドMかよ。憎き犯人と「それで何があったの? ねえ聞かせてよ」みたいなノリで普通に会話しちゃってるからね。
本当に知りたいんだったら、もっと犯人をボコボコに殴って、パスポートを取り上げて警察に突き出して、裁判で明らかにさせれればいいじゃないですか。
証拠がないとか言ってるけど、直筆のポストカードはあるし、目撃者はいるし、目立つ場所で犯行に及んでいるし、完全犯罪とは程遠いレベルの手口だったけどなぁ。
レックスの現在の恋人が彼の昔の恋人探しに付き合うのも無理ありますね。過去の女に執着してる男とまともに恋愛できますかって話じゃないですか。
それにあの男はどういう神経で現在の彼女と、昔の恋人と一緒に行った思い出の土地を回っちゃってるわけ? 挙句の果てには現在の彼女の前で昔の女の名前を叫び出すし。「サスキアー!」とか空に向かって普通大声で言うかね。デリカシーがないですね。
コメント
自分がどう思ったか、それが全てではありますが、考えが及ばない人とか、無知な人、想像力がない人が映画の価値を決めて早々に見限ってしまう事ほど勿体無くて残念なことは無いのだなぁ、と思いました。映画は自分が思っているよりもっと豊かだし、監督やそれに関わった人たちは自分よりはるかに頭が良く色々な事を知っている人達だという事を、基本として知っておくと、もっと意味のある映画鑑賞ができると思いますよ。そうでなければせっかくの時間を無駄にしてるだけですからね!