ヒップホップに敬意を示しているのかバカにしているのかどっちとも取れそうな微妙な映画。とにかく全体のクオリティーが低すぎます。13点(100点満点)
SR サイタマノラッパーのあらすじ
イックは仕事がなく家族から邪魔者扱いされているニートラッパー。彼は親友のトム、後輩のマイティと共に、病弱なタケダ先輩らの力を借りて自分たちの曲を作ってライブをしようとしていた。そんなある日、高校の同級生・千夏が東京から帰って来て…。
U-NEXTより
SR サイタマノラッパーのキャスト
- 駒木根隆介
- みひろ
- 水澤紳吾
- 奥野瑛太
- 杉山彦々
- 益成竜也
- 上鈴木伯周
SR サイタマノラッパーの感想と評価
「22年目の告白 -私が殺人犯です-」や「ビジランテ」の入江悠監督の出世作。埼玉を拠点に活動する、さえないラッパーたちの甘くて苦い青春を描いた人間ドラマで、題材はいいのに映像や音楽や演技のレベルが低いせいで台無しになっている作品。
ワンカットワンシーンにこだわって作ったらしいけど、そもそもこだわるところそこじゃないじゃんっていう話ですよね。
ラッパーの奮闘を描いた映画なのに音にこだわりがなく、ラップはもちろん普通のセリフですら聞き取りずらいんですよ。あの音質どうにかならなかったのかなぁ。
音源だけ聞くと、まだ聞けるのに、映画の中ではひどい音にしか聞こえないんですよ。予算がなかったといえばそれまでだけど、こんなに音楽と映像がマッチしていない映画も珍しいですよ。
ジャンルもコメディーにしたいのか、青春ものにしたいのかもどっちつかずです。イケてない田舎のラッパーをネタにして笑いにすのはいいけど、普段はダサくてもマイクを握ったらせめて格好いい姿を見せてもらいたかったです。
それなのに肝心なラップのシーンまで小馬鹿にしているかのような演出だったし、緩めるところと、びしっと決めるところの強弱がなくてダメでした。ただ緩いだけの青春映画とか面白いくないからね。
フリースタイルで会話する下りなんて見れたもんじゃないです。あれ、いりますか?
せめて他の誰かがビートボックスでもしながら、フリースタイルをやるんならいいけど、普通に会話をしていてリズムもなにもないところで唐突にやりだすから、急にどうしたの?ってなるんですよ。
それもまた人に聞かせるレベルに達していないフリースタイルでしょ? ラップにしろ、フリースタイルにしろ、日本にだってうまい人がちゃんといるんだから、そういう人たちをなんで起用しないのか理解に苦しみます。俳優にラップさせて格好つくわけじゃないじゃん。
おそらく監督が一番見せたかったシーンはラストでしょう。ラッパーを諦めたトムとまだまだ夢を捨てきれないイックが定食屋で再会し、フリースタイルでお互いの気持ちを交わすシーン。
イックは店員で、トムは肉体労働者として同僚を連れて店に現れ、みんなの前でいきなりフリースタイルをやり出す、というのが不自然極まりなく、あのシーンまでコメディーになってたのが残念で仕方ありません。
なんだよ、あの棒読みラップ。せめてあのシーンぐらい格好良く決めようよ。同僚たちまであの二人のやり取りを真面目に聞いてる意味が分からないし、誰か突っ込むだろ、普通。
こういうこと言うと、あのダサさがリアルなんだとか、あえてそうしてるとか意図的な演出だとか言ってくる人が必ずいるんだけど、何度も言うけど、うまい人が下手な演技をするのと、下手な奴が下手な演技をするのでは意味が全然違うんだって。
「東京トライブ」だって「パティ・ケイク$」だってダサかったでしょ? 「8 Mile」が格好いいのはやっぱりエミネムのラップがあってこそなんですよ。それを素人にやらせてもなんとかなるでしょ的な発想が嫌ですね。
それでもこの作品が売れたのは、ラップ好きの若者や埼玉に愛着を持つ人たちが強い親近感を持ったからじゃないでしょうか。つまりニッチ戦略が当たったんだと思います。
それはそれでめでたいし、この作品から入江悠監督がメジャーにのし上がったことは素晴らしいことです。
ただ、あたかもこの映画が名作みたいな持ち上げられ方をしているのには違和感をぬぐえないですね。ただの駄作でしょ。
駄作じゃないっていうんなら埼玉や日本語ラップに対して何の知識も偏見もない外国人に見せてみたらいいんですよ。なに、これ?って絶対言うから。
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