20代の若手監督が撮ったクオリティーの高い人間ドラマ。家族ドラマや青春ドラマの要素もあり、ただのLGBT映画ではないです。68点(100点満点)
映画ガールのあらすじ
15歳のララは、プロのバレリーナを目指すトランスジェンダー。体は男の子でも心は女の子そのもので、トランスジェンダーであることを隠すこともなく、家族に支えられながら学校にも普通に女の子として通っていた。
そんなララは、シングルファザーの父親の理解を得たうえで性転換手術を受けようとしていた。医師も彼女の考えに賛成でとても協力的だった。
しかし手術前のホルモン治療を実施していく中、ララは強いストレスと体調の変化を感じていく。食事は喉を通らなくなり、バレエのレッスンに下半身が目立たないように前張りをして参加したせいで感染症にかかり、ついには手術を受けれなくなってしまう。
映画ガールのキャスト
- ヴィクトール・ポルスター
- アリエ・ワルトアルテ
- カテライネ・ダメン
- ヴァレンテイン・ダーネンス
映画ガールの感想と評価
ベルギーの大型新人ルーカス・ドン監督による長編デビュー作品にしてカンヌ映画祭で新人監督賞にあたるカメラ・ドールを獲得した良作。
2018年公開のベスト海外映画(非ハリウッド映画)の一つとも言われる作品です。残念ながらアカデミー賞にはノミネートされませんでしたが。
実在するトランスジェンダーのバレリーナ、ノラ・モンスクールの人生からインスパイアされたストーリーで、美しくも悲しいLGBT映画です。
ちなみにこちらがノラ・モンスクール本人。
ヒロインを演じた俳優ヴィクトール・ポルスターが役にはまりすぎていて、彼をキャスティングした時点で成功していますね。
ヴィクトール・ポルスターはトランスジェンダーではないにしろ、すごくフェミニンな感じがして、おそらくゲイじゃないかなぁ。ただ、このルックスと雰囲気は男女両方から好かれそうな魅力がありますね。
劇中では言われなければ普通に女の子にしか見えないし、またちゃんと踊れるダンサーの中からオーディションをしているので、「ブラック・スワン」のナタリー・ポートマンとかとはレベルが違います。
ララが普通に美人で、魅力的な女の子に描いているのもこの映画を一層面白くしていました。服を着ているときは、可愛いティーネイジャー。でも服を脱ぐと確かに骨格は男の子のそれで、そのギャップも隠さずに下半身も含めてしっかり見せていました。
ヴィクトール・ポルスターはまだ未成年のティーネイジャーだけど見せちゃってもいいのかな?児童ポルノだとかいろいろ言われそうな気もするけど、ストーリー的には絶対に必要なシーンだけに放送倫理も線引きが難しいですね。批判が殺到するリスクがある中、表現を優先して果敢に挑戦している姿勢はすごいと思います。
ララに対して家族や親族がとても自然体で接していて、ポジティブなエピソードが大半を占めているのがこの映画がほかのトランスジェンダー映画とは一番違う点じゃないでしょうか。
いくつかいじめのような、嫌がらせシーンもあったけど、基本的には社会がララを受け入れている、あるいはその過程にあるような印象を受けました。実際、ベルギーにおけるトランスジェンダーの人たちに対する扱いはどうなんでしょうかね。
物語は主人公の目線で進んでいくものの、年頃の子供を持つ父親目線でも見れる映画です。シングルファザーのお父さんにしては年頃の子供がトランスジェンダーで、性転換手術を間近に控えているとなれば気が気じゃないだろうし、なかなか本心を打ち明けてくれないララに手を焼く姿もリアルです。
ラストを除いては大きな展開はなく、特別アップダウンの激しいエピソードがあるわけではないんですが、最後まで難なく見れちゃいますね。デビュー作品でこの完成度は末恐ろしいですね。まだ20代と若いし、どこかグザヴィエ・ドラン監督が出てきたような衝撃を受けました。
一方で色々と批判もあったそうですね。そもそもトランスジェンダーではない監督や俳優がシスジェンダー(非トランスジェンダー)目線でトランジェンダーのことを分かったように描くことに抵抗を覚える人もいるようです。
非トランスジェンダーのことをシスジェンダーっていうの知ってました? 僕は知りませんでした。やはりトランスジェンダーの人からすると、ふざけんなという描写があるんですかね。僕は特に思わなかったけど。
まあ確かに白人監督が黒人映画を撮ったり、ストレートの人が同性愛を描いたりしたらフェイクっぽく映るからね。
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