古き良き時代を描こうとして、ものの見事に失敗した、泣けない映画。キャストに適当な関西弁と韓国語を喋らせてギャーギャー言わせただけの安っぽい物語です。15点(100点満点)
焼肉ドラゴンのあらすじ
万国博覧会が催された1970(昭和45)年。高度経済成長に浮かれる時代の片隅。
関西の地方都市の一角で、ちいさな焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む亭主・龍吉と妻・英順は、静花、梨花、美花の三姉妹と一人息子・時生の6人暮らし。
失くした故郷、戦争で奪われた左腕。つらい過去は決して消えないけれど、“たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる”それが龍吉のいつもの口癖だった。
そして店の中は、静花の幼馴染・哲男など騒がしい常連客たちでいつも賑わい、ささいなことで、泣いたり笑ったり―。
そんな何が起きても強い絆で結ばれた「焼肉ドラゴン」にも、次第に時代の波が押し寄せてくるのだった―。
焼肉ドラゴンの主なキャスト
- 大泉洋
- キム・サンホ
- イ・ジョンウン
- 真木よう子
- 井上真央
- 桜庭ななみ
焼肉ドラゴンの感想と評価
鄭義信監督による自身の同名演劇の映画化。関西で焼肉屋を営む韓国系一家による家族ドラマで、ストーリーや演出が雑すぎてとても見ていられない話です。
セット丸出しの家を舞台に、6人の親戚家族が繰り広げる人情もので、なんとなく暖かい昭和の雰囲気を売りに感動させようとしている、あざとい映画です。
そもそも関西の地方都市の一角ってどこだよっていうところから疑問点はスタートし、片腕のない父親、失語症の息子、脚の不自由な姉など、いちいち登場人物の背景に必然性がなく、とりあえずひたむきに生きる姿を描くためにハンディキャップを背押せてみました感が強いです。
一事が万事具体性がなく、ファンタジーですね。関西の韓国人=焼く肉屋経営みたいな設定もベタだし、ほかの在日韓国系映画と似て特に新しいエピソードがなかったです。「これはパッチギ3です」って言われたら、へえそうなんだって思っちゃうもん。
演技、演出、美術の力不足なのか、日本映画って圧倒的に再現力に欠けますよね。昭和を再現しました、戦争時代を再現しましたとかいうけど、その時代を生きていない人が見ても、再現できていないことが分かるほど、完成度が低いのが残念です。無理なんだったら現代を描けよって。
それになんだよあのあか抜けた女性キャストたち。どう見ても貧乏家族の娘たちじゃないもん。あんなボロ屋敷に住んでる姉妹がみんな美人なわけねえだろ。パンチパーマのおっさんみたいな顔したお母さんの実娘がなんで桜庭ななみなんだよ。
真木よう子の脚の引きずり方の下手さにはびっくりしますよ。ちゃんと「ユージュアル・サスペクツ」のケビン・スペイシーの脚の引きずり方を勉強しないと。
一方でお父さんお母さんはここぞというときにいつも滑舌が悪くて惜しかったです。あれならいっそのこと名言を吐くときは韓国語で言わせたほうがよかったんじゃないのかなぁ。二人は可愛くてなかなかいいキャラしてたけどね。
唯一、まともに演じてたのは井上真央のキスシーンぐらいじゃないですか。韓国人の青年と舌を絡めながら熱々のキスをしてましたね。まあ、あのシーンにしても必然性は全くないけど。
全体的にちゃんと描けよっていう雑なシーンが多かったです。そのせいでストーリーがとにかく伝わりにくい。
役所の窓口で担当者と哲男がケンカして婚姻届を破いた、というシーンがあるのにその後婚姻届けについては全く触れず、いつの間にか二人は結婚している前提で話が進んだりするんですよ。そうかと思ったら次の瞬間にはもう別れ話が出たりするし、どっちだよ!の連続でした。
自分から話題に出しておいて、エピソードの顛末は想像すれば分かるでしょ的な演出ばかりで、あの話は結局どうなったの?とひっかかる箇所が少なくなかったですね。時生が自殺した後の家族のあっさりした感じとかやばくないですか?
セリフにいちいち無責任だからやれ北朝鮮に行くだ、やれ韓国に行くだ、やれ引っ越すだっていうけど、はっきりとどこで何をするつもりなのかは誰も言わないし、誰も聞かないっていうね。
最後、お父さんお母さんはどこ行ったんだよって疑問に思わないんですか? リヤカー引いて私たちはたくましく生きていきますみたいな終わり方してたけど、あんな状態で両親を日本に置いて行っちゃう息子たちって普通に冷たいだろ。なにをハートフルに描いちゃってんだよ。
コメント
よかった!始めてほとんどの不満が合った!ただ、北朝鮮にいくだ。韓国に行くだ。の下りはリアルだと思いましたけど、それ以外の不満はほとんど一緒です。
最近の日本映画の再現は甘いですからね。
映画男さんには今村昌平の映画をおすすめします。あの人の時代の再現力は桁違いですので、納得するかと思います。
不満の一致おめでとうございます。別に一致してなくてもいいんですけどね。
こんな映画があったんですね。
正直まだ観てません、といいますか観る気もないのですが、おっしゃるように“あざとい”映画ですね。予告編だけで十分わかりました。
これ、伊丹空港(大阪空港)に隣接する中村地区という実際にあった在日朝鮮人部落が舞台ですね。実は僕はすぐ近くの校区で生まれ育ちましたのですぐにわかりました。親に「あそこは行ったらあかんで」と言われて育ちました。でも、中学生ともなればそんな言いつけなど聞きません。部落の悪ガキらともよくつるんでいました。久しぶりに奴らの顔を想い出しました、今はどうしているのかな・・。
そこは平成に入ってもしばらく残っていましたよ。今現在は完全に撤去されて面影すらありません。個人的にはちょっと寂しい気もします。
で、映画で描かれている世界ですが、100%違うとまでは言いませんがじぇんじぇん違います。この手の映画が堂々と映画館で公開されるようになったことは喜ばしいのですが、本当のことちゃんと描いて欲しいですね。
ま、言いたいことはたくさんあるのですが当ブログの趣旨から外れるので言いませんが、あえて一言でいえば、この映画で描かれていることは彼らの「願望」でしょうか。せめて、こうあってこれくらいの感じであって欲しかったという願望ですね。
はっきりいってこの程度のドラマなら、別に在日を設定しなくても普通の日本でもあの時代はみんなこんな感じでした。そこへ、わざわざ在日を置くことで何か狙いがあるのでしょうが、それがまさに“あざとい”と思います。
そんな地区が存在したんですね。子供に時に実際にそこで遊んでたなんて貴重な体験ですね。いずれにしてもこの映画に限らず、特定の人々を美化したり、ハートフルに描くっていうのはよくある手法ですよね。
観て損をしたような気持ちになりました。私も不満一致でした。